3話 モフモフではない
【Raid Battle!】
【兎月舞う新緑の主】
【荒れ狂う魚尾砲】
【レイドバトル同時発生につき難易度が上昇します】
「おっは~!
今日も来たぞ~」
ログイン即気さくな挨拶をレイドボスへとしかける様はまさにベテランプレイヤーっぽい(?)
どうせこの後、死に戻りさせられるから今くらいは気さくな挨拶をさせてくれてもバチはあたらないだろう。
それに、今日からは抜け毛集めだからな!
「悪いが今日からしばらくは鬼ごっこに付き合ってもらうからよろしく頼むぞ。」
俺の言葉が意味不明だったのか、レイドボスのジェーがわざわざ頭を傾げながら不思議そうな目で俺を見ている。
ちょっと罪悪感があるからその目で見るの止めてくれ……
「//≠Ж#/^ЖЖ?」
そう言うなり、新緑都市アネイブルを駆け巡りはじめる。
さて、お目当てのものは……
「おっ、あるじゃんあるじゃん!
ジェーさんの 抜 け 毛!」
見つけるなりとりあえずズボンのポケットに入れておく。
この抜け毛、色が紫色でいかにも毒々しい感じもするが、気にしてもしょうがないし装備のためには背に腹は代えられぬ。
逃げながらポケットの中の抜け毛を触ってみる、中々さわり心地がいいな。
遠目から見るとさらっさらに見えるЖの毛だが、こうしてじっくり触っていると実はゴムのように弾力がある一風変わった性質の毛だったとわかる。
「どーりで包丁の通りが悪いと思ったわ!
瞬間的な力だけじゃなくて継続して刃をめり込ませないと肉まで届かないぞこれ……」
ゴムのような性質……何に使えるだろうか……
レイドボスの素材を最大限に使おうと思うなら、全身タイツみたいな装備が一番防御力アップしそうなものだが、せっかくのゲームで全身タイツのようなネタ装備は避けたいよな……
包丁の持ち手を覆うように使うと【槌鍛治士】の言ったことそのまま滑り止めにになりそうなもんだけど、それだけだと勿体ない……
それに弾力があるなら、伸縮性もあるはず!
その性質を上手く活用できる使い方……
「よしっ、これでポケットいっぱいになったか。
さて、最後に一矢報いて【槌鍛治士】のところでも行くか」
そして、地面を蹴りЖに接近しようとする、が
【#ЖЖ####【Ж】!!!】
あっ、このカットインは極太レーザーさんね。
これじゃ近づく前に灰になるしかない!
「また明日くr」
「というわけで【槌鍛治士】これを進呈しよう」
「何がというわけなのだか、相変わらず訳のわからんことを言うな!
おっ、これはまさかЖの抜け毛ではないか!
トッププレイヤーでも何一つ持ち帰れなかったのによく拾えたな!
流石ワシが見込んだだけのことはある!」
勝手に見込まれても困るが、そんな難易度高い素材を俺みたいなのに頼むなよな……
いや、普通に手に入ったけど……
「というかトッププレイヤー様はなんでЖ素材手に入れられてないわけ?
抜け毛なら死に戻り前提で回収いけるだろうに」
「抜け毛を持ち帰るという発想自体今のところお前以外に思いついてないからだな!
ゲームだとモンスター素材は剥ぎ取るのが主流だ!
わざわざ無様に抜け毛を集めるという考えすら思いつかんわ!
しかも、抜け毛が落ちていることに気づいているやつも今のところ聞いたことないしな!」
俺も【槌鍛治士】からの依頼が無かったらそもそも素材すら集めていなかったので、ちょっとだけなるほどと思った。
「あっ、この抜け毛使って遠距離武器とかできない?
ジェーさんの極太レーザー近くにいると間違いなく直撃るから、せめて遠くから攻撃したいんだよなぁ。
俺、武器これしかないし」
2つ名の由来にもなっている包丁を構えながら【槌鍛治士】を脅してみる。
「はっはっはっ、それもそうだな!
それなら1つ考えがある!
そんなに時間はかからないと思うが、ちょっと外でもブラついてきたらどうだ!
レイドボスに1人で勝つのは流石に無理だ、コネクションをそろそろ広げた方がいいだろう!
あと、その包丁を下ろしてほしい!」
それもそうだな、久々に【草原(仮)】巡り行ってみるか!
草原の一角に切り裂かれたおっさんが居たとか居なかったとか……
【Bottom Down-Online Now loading……】