299話 【竜鱗図冊】カスタム
「じゃーん!
【包丁戦士】さんに案内したかったのはここだよっ!」
元気な声で教えてくれたのは【ブーメラン冒険者】だ。
さて、案内された場所を見ていくとしよう。
辺りを見渡すと、カウンターテーブルのようなものが置いてあったり、洗い場やかまどのようなものまである。
そして、皿やスプーン、フォークなど様々な食器も置いてある。
それらから推測するに……
……ここは食堂か?
「合っているような、合ってないような微妙な感じダネ!
食事をするところではアルヨ~」
食事をするところなら食堂でよくないか?
「普通の食事ならそうなんだけどねっ!
ここはスキル【竜鱗図冊】のカスタムができる特別な場所でもあるんだよっ!」
あー、あの冒険者ギルドのクエストを進めていくと手に入れられるって噂のスキルね。
位置ゲームみたいな要素が絡んでくるスキルで、エリアの踏破率とかで効果量が変わるみたいなことを聞いたことがある気がする。
発動すると、巻物から竜の鱗のようなものが飛び出てきて、発動したプレイヤーやそのプレイヤーが持つチュートリアル武器を竜属性(?)にして強化するスキルだな。
このゲームに竜属性なんてあるか知らないが、羽が生えてきたり鱗がついたりしているのを見たからそう思っただけだ。
それで、そんなスキル【竜鱗図冊】をカスタムできるのがこの食堂ってどういうことなんだ?
俺は施設とスキルの関係性が全く読めないので、素直に疑問をぶつけていく。
「スキル【竜鱗図冊】が位置ゲームみたいなのは前に聞いていると思うけど、この食堂で指定された各地の名産品を持ってくると料理として出してくれるヨ!
その料理を食べると鱗の色とか、パワー、スピードその他色々変えたりできるんダヨネ~」
「料理の違いで性能が上がるものが違ったりするよっ!
私たちは珍しい名産品を手に入れたから他の冒険者ギルドのプレイヤーと鱗の色が違ったりするんだよっ!」
だから、レイドバトルにいたクラン【冒険者の宴】にいたプレイヤーたちが使ったスキル【竜鱗図冊】の鱗は白色だったんだな。
色つきのプレイヤーはこの食堂でのカスタムをやりこんでいるって証拠なんだろう。
【短剣探険者】は青色、【ブーメラン冒険者】の鱗は赤色だったから、こいつらはやりこみ勢ってことで間違いないな。
でも、鱗の色って変えても意味があるのか?
「アルヨ!
ステータスに属性が追加されるみたいダネ!
青色の鱗だと水属性、赤色の鱗だと火属性みたいな感じダヨ!」
それは見た目でなんとなく分かるからいいけど、それなら【風船飛行士】の白銀の鱗はなんなんだ?
「……それは秘密っていわれてるよっ!
ごめんねっ!」
「あの人【包丁戦士】さんに情報が流れないようにしているみたいだからネ。
私たちが漏らすわけにはいかないんダヨネ~」
うわっ、そんなことしてたのかあの野郎!
通りであいつに関する情報が全く入ってこないと思ったぞ……
まあ、あいつに関することを聞いてもこの二人は教えてくれなさそうだから他のことについても聞くか。
スキル【竜鱗図冊】っていつもabilityと同時に発動してるじゃん。
あれってなんでなのか気になってたんだけど。
「あれはabilityを発動しているっていうより、abilityを暴走させてるって言う方が正しいヨ」
暴走……?
それはいったいどういうことだ。
「プレイヤーの素のスペックだけだと、スキル【竜鱗図冊】のデメリットが大きすぎるみたいだからねっ!
abilityを持っていると、abilityの暴走……強制発動が代わりにデメリットになってくれるよっ!」
あれ、発動したくてしているわけじゃなかったのか……
「でも、abilityとスキル【竜鱗図冊】を同時に発動すると性能が変わったりするからメリットの方が大きいヨ!
abilityの重ねがけもできるようになるカラネ」
へー、面白いことを聞いたな。
ずっとスキルの詳細を知らなかったが、思っていたよりも複雑なスキルだったようだ。
ちなみにだけど、abilityを持ってない場合のデメリットが大きいって言っていたが、どんなデメリットなんだ?
もはやプレイヤーの命ですら軽いはずの、このプレイヤーに人権のないゲームでそれほど大きなデメリットが存在するのだろうか。
「エリア踏破率の減少ダネ~
つまり、スキルを発動する度に性能が恒常的に下がってイクヨ!
一回行ったはずの場所にもう一回行き直さないといけなくなるのは大変みたいダヨ~
空白になる踏破場所とか範囲はランダムみたいだから、秘境みたいなところが空白になったら可哀想カナ?」
こいつ、自分がabilityを持っているからって完全に他人事みたいな言い方だな。
まあ、気持ちはよくわかるが。
俺も【深淵顕現権限】【深淵細胞】で意識を乗っ取られる連中を高みの見物って感じで楽しませてもらっているからな。
他人の不幸がウマイウマイ!
やはり【短剣探険者】とは色々と気が合いそうだな。
流石に同類ではないと思いますが……
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