296話 眠りの
ポリンお嬢様による巧妙な……いや、姑息なスキルな使い方でデバフサークルに閉じ込められてしまった俺。
デバフサークルも2つ発生しており範囲が広く、そこから出ようとすればトランポリンを創造してきて戻されるという状況だ。
だが、攻撃手段はあるのか?
シールドバッシュならデバフくらっててもギリギリなんとかできるぞ?
「その程度のこと、ワタクシが考えていないとでも思いまして?
称号【大量生産職人】をセット!クラフトマイスター権限起動しますわよ!」
【Warning!】
【創り上げるのは多くのもの】
【均一物こそ美しい】
【【クラフトマイスター】権限により【近所合壁】の連続錬成!】
【【トランポリン守兵】のチュートリアル武器が連続錬成されます】
おおっ!?
ポリンお嬢様はこの局面で称号をセットしてきた。
しかも、アルベーが使ってきたクラフトマイスター権限を使えるようにする称号だ。
なんて厄介なものを手にいれてくれたんだ……
「トランポリンに埋もれて死に戻るといいですわ!
おっほほほほ!」
クラフトマイスター権限により大量生産されたトランポリンが俺の頭上から落ちてきている。
このままだと物量に押し潰されて死に戻りは確実だが……
まずは無敵時間を作ることからだ!
スキル発動!【渦炎炭鳥】!
もはや何度目になるのかわからないクシーリアの回避スキルを使ってかわしていく。
使用後少しだけ無敵時間が発生するのがポイントだ!
ここまでこけにされたんだ、俺もフルスロットルでいかせてもらうぞ!
スキル発動!【深淵顕現権限Б】さらに、【深淵顕現権限P】
俺はポリンお嬢様同様にギャラリーのモブプレイヤーたちを一気に俺のスキルの生け贄として光の粒子へと変換していく。
【スキルチェイン【深淵顕現権限Б】【深淵顕現権限P】】
【デメリットは支払い済みです】
俺の眼は黒く変色し、羽の形が浮かび上がる。
そして、背中から溢れ出た黒い靄が隆起していき右片の骨翼を形成していった。
深淵細胞の同時励起、これこそがability【会者定離】が定着してしまった俺の武器だ!
俺はそのままルル様の羽でポリンお嬢様へと接近していく。
そうすると、近くに対象が現れたからか俺の眼が黒く輝き出した。
顕現して早々に俺の眼は俺を蝕むデバフを写しとり、ポリンお嬢様へと共有化されていっているのだ。
そう、デバフサークルは上空にも伸びているからこそ飛んでいても俺にデバフがかかったままなのだ。
「くっ、貴様!?
ワタクシの力で姑息な真似をしてくださいましたわね?」
その発言を聞いて、俺は可能性から確信へと疑問を氷解させていった。
そして、その確信をポリンお嬢様へと叩きつける。
やっぱりな。
お前、アルベーだろ?
「き、貴様……ワタクシのこと気づいておりましたのでして?
低能な割には勘が働きますのね?」
口調とか一人称がそのままだったから確信出来なかったが、いくらなんでも考え方や倫理観が百八十度変わってるのはおかしすぎるからな!
俺のこと貴様とか低能とか言ってなかったし、他のプレイヤーをいたずらに死に戻りさせるっていうのも納得いかなかった。
ポリンお嬢様の皮を被った別人としか思えなかったくらいだ。
それに、【深淵顕現権限Б】を自分の力って言った時点で、お前がアルベーだって自白したようなものだからな。
「そう、ワタクシはアルベーですわ!
この底辺種族の意識を阻害吸収して意識を浮上させているのでしてよ!」
それなら、一回意識を失わせれば元に戻せるな!
高水準の倫理観を持ったポリンお嬢様を取り戻してやる!
「やれるものならやってみせてくださいまし?」
言われなくてもやってやるさ!
スキル発動!【堕枝深淵】!
【我が領域を侵すものよ】
【流転する境界の狭間にて、我が深き業を刻み込め】
【汝、我の配下なれば我が深淵に染まるがよい】
【これは我が存在の証明】
【【堕枝深淵】】!
俺の【堕枝深淵】は翼が生えている側である右手から伸びた。
鞭のようにしなりながら自由に軌道を変えて【トランポリン守兵】お嬢様の皮を被ったアルベーへと黒い枝が伸びていき、その身体を縛り上げた。
「くっ、これはボスの力ですわね……
まさか低能な貴様が使えるとは思っていなかったですわ!?
身の程を弁えなさってくださいまして?」
縛り上げられているのに達者な口だな?
だが、お前は薄々気づいているだろう。
この状況がどれくらいやばいのか。
「ボスの多種同時デバフっ!?」
そう、ルル様の黒枝は縛り上げたものに即死または麻痺状態または睡眠状態を付与するという鬼畜スキルだ。
RPGなら裏ボスに相当する強敵が使ってくる壊れスキルだが、これはアルベーの眼と非常に相性がいい。
「ワタクシの眼はデバフの力の動き、スタック値を可視できるようになりますわ。
それに、その力の動きを操ることができますわね……」
そういうことだ。
というわけで俺の黒枝で眠りに誘ってやる。
俺はアルベーの眼による深淵の力を宿していると思われる黒い粒子の流れを塞き止めたり、開通させたりするなどしてポリンお嬢様に与える状態異常の操作を行っていく。
そして、俺がポリンお嬢様に捧げるものはこれだ!
即死。
「ワタクシ、気を失ってしまいましたわ……
あら、あなた様どうしてここにいらっしゃいますの?」
死に戻りしたポリンお嬢様の側で待機していた俺に気づいたポリンお嬢様は、俺に問いかけてきた。
様子を見るに、どうやらいつものポリンお嬢様に戻っているようだ。
……正直ホッとした。
嫌な予感は的中していましたね。
というよりこの次元のトッププレイヤーの汚染が止まりませんね……
【Bottom Down-Online Now loading……】




