283話 同種激突(挿し絵あり)
「それで、このままだとコッチは倒せないと思うよ。
これからどうするのかな?」
騎士姿のヘルメットデカ女……石動故智が俺を試すかのような口調で問いかけてきた。
たしかに、このままだと倒せないだろう。
だが、それは俺と相対する石動故智も同じ条件のはずだ。
「果たして、本当に同じ条件と言っていいのかな。
コッチのピッケル次元はフルメンバーで戦っているけど、君の次元は半分の人数しか居ないよね。
このまま長期戦をしてもいいけど、不安もあるよね。
拠点にいるのか、別の方向に攻めているのか分からないけど、残りの2人が望遠鏡次元のプレイヤーたちにやられているかもしれないよ」
ここはピッケル次元の拠点周辺だからあいつは防衛と攻撃を同時に出来ているが、俺らは最低限しか防衛戦力を置いてきていない。
その辺に望遠鏡次元の敵が現れたらすぐに対処できるピッケル次元と、拠点に望遠鏡次元のプレイヤーが現れたらピンチな俺とは心の持ちようが違うのは当然なのかもしれない。
陣営旗を自分から取りに行かないっていうのは消極的ではあるが、リスクをおかさずにもうひとつの勝利条件である対戦相手次元の全滅を狙いにいきやすい。
俺たちが死を恐れずに特攻を仕掛けるのは包丁次元全体の戦い方を代表するものだが、もしかするとピッケル次元の戦い方は守りに重きを置いた堅実な戦い方っていうことなのかもしれない。
「そうだよ、よくわかったね。
コッチの次元でのレイドボス戦は一回の戦いを延長させて、戦い方を分析した上で守り勝つのが定石だよ。
でも、君の死に急ぐような戦い方を見ていると包丁次元では全く違うレイドバトルになっているようだね。
興味深いよ」
こうやって次元戦争をしていると、俺たちの次元の特徴を再認識させられるな。
良くも悪くも己を省みる機会があるのは、他のゲームでは無い特徴だ。
「そうだよね。
コッチは基本的に鉱石採掘にしか興味がない生産プレイヤーだけど、別に戦闘も嫌いじゃないからね。
戦闘を介して異文化体験をできるのは好きだよ」
奇遇だな、俺も好きだぞ。
告白の返答みたいな雑な返し方をしたが、事実、次元戦争自体は面倒臭くはあるが催し物としては好きな部類だ。
意図的にサーバー分けしてある意味を実感できるのは面白い。
「なんで分けたのか気になるけど、プレイヤーには教えてくれないだろうから楽しむしかないよね
スキル発動、【スマッシュ】」
そういうわけだ。
俺たちも楽しもうじゃないか。
そろそろ次の手に進めさせてもらうからな!
石動故智は土色の光を宿らせたピッケルを振り回し、俺にぶつけてきた。
俺の回避が遅れてしまい、そのまま岩肌にぶつけられて砂煙が立ち上る。
ここまで何度か【スマッシュ】を食らっているから、正直俺の身体はボロボロ寸前だが天子の羽が生き続けている限りは動きを続けられる!
スキル発動!【渦炎炭鳥】!
【スキルチェイン【天元顕現権限】【渦炎炭鳥】】
【追加効果が付与されました】
【スキルクールタイムが増加しました】
俺がスキルを発動させると天子の翼の周囲を渦巻く炎が発生し始めた。
渦潮のような軌道を描きながら羽の周りを動く炎の様子は、もはや芸術的な美しさを体現しているようだ。
そして、炎の渦が脈動するように翼に貼り付いた。
その姿は旋回攻撃を繰り出すクシーリアの姿を思わせるようだ。
いくぜ、これが新技だ!
俺は翼をはためかせ、石動故智に向かっていく。
「今まで違うスキルばかりだったのに、ここで同じスキルだね。
スキル発動、【渦炎炭鳥】」
俺のスキルを回避すべく石動故智もスキルを起動した。
ここまで色々なスキルの応酬があったが、被らずに来た。
だが、ここでようやく被ってきた!
この好機を逃すわけにはいかない!
俺は天子の羽に宿る残りのエネルギーを糧として、炎の渦をさらに激しく流動させながら石動故智に肉薄した。
その瞬間、石動故智の足に宿っていた炎の渦が光出し左方向へ瞬間移動して俺の突撃を回避していた。
……そういえば、そのスキルはプレイヤーが天子の羽を介さず使うと緊急回避だったな。
無敵時間の発生と瞬間移動が効果だったはずだ。
だが、同じスキルなら天子の力とスキルチェインさせた俺の方が上をいくぞ!
石動故智が移動した場所に炎渦を纏った翼をつかい追撃をしかけていく。
俺が移動した経路には炎の柱が立ち上っており、石動故智と俺には退路がない。
「これがお互いに最後の一撃だね。
ドワーフの特性を見せてあげるよ。
スキル発動、【紅石鉱山】」
スキルのデメリットにより移動できなくなった石動故智は、迫りくる俺を迎撃するしかないので秘策と思われるスキルを起動してきた。
口ぶりからするとドワーフのスキルのようだがっ!?
「ふふん、やっぱり同じスキルならあんたに負ける筋合いはないじゃない!
腕を磨いてから出直して来なさいよ!
上から目線の慢心も止めることね!」
「……」
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