279話 防衛準備
【ディメンションバトル】
【【6位 望遠鏡次元】VS【7位 ピッケル次元】VS【8位 包丁次元】】
【勝利条件 陣営旗の奪取または敵対次元勢力の殲滅】
【異次元の風が吹き荒れている】
【望遠鏡が根源を見破る】
【ピッケルが硬き意思を打ち砕く】
【包丁が血を求める】
【Duel Start!】
次元戦争の開始がアナウンスされると緑色マフィアボスとボマードちゃんの身体を使っているジェーライトは北方へと移動を開始したようだ。
その一方で、無口を貫くミューンと次元天子である【菜刀天子】は南下を始めた。
おいおい!?
作戦会議すら無しでそれぞれ独断行動を始めたぞ!?
開始早々にチームワークというものを崩壊させていくスタイルなのは、ある意味俺の次元っぽいといえばぽいが、本気で勝つつもりなのか不安になってくる。
「あの陰湿な集団のことは放置して劣化天子はこちらについてきなさい。
戦術タイプ的にもそれがいいとでしょう」
戦術タイプ?
なんのことだ?
「単純に戦いかたのことですよ。
こちらの集団の方が短期決戦に向いているので、こちらが1つの次元を打倒した後に防衛なり、加勢などすれば良いでしょう。
……できれば共闘はしたくないですが」
露骨に嫌がるなよ……
そんなにあの集団が苦手なのか……
「……我打心底里讨厌那家伙」
ミューンもなんかめっちゃ嫌がってる……
こんなんチームワークとか期待するだけ無駄だな……
でも、全員拠点から出て大丈夫なのか?
陣営旗があるのに拠点を守るやつがいないって不味いと思うんだが……
「それなら最低限の守りは置いておくとしますか。
【火出惹没】!」
【菜刀天子】がスキルを発動させると、俺から少し離れたところに火でできた人形のようなものが現れた。
【菜刀天子】のような見た目の人形だが、炎が揺らめいて時々形が崩れている。
この炎の人形は、適度に移動しながら自動でヘイトを集めてくれる便利なデコイだ。
ダンジョン攻略でお世話になった記憶がある。
最低限の壁にはなってくれるか。
「それだけではないですよ。
あちらも生意気に置き土産をしたようです」
【菜刀天子】が指差した方を見ると、そこにはバサバサと羽ばたく物体があった。
あれは……ダチョウ?
「どんな目をしているんですかこの劣化天子は……
どう見てもカラスでしょう」
冗談言っただけだって……
真に受けられても困るぞ。
で、あのカラスは何者?
「私も詳細は分かりませんが、先程使った【火出惹没】に近いスキルの効果かもしれませんね。
既に出ていった陰湿な集団についていく気配が無いので、拠点防衛用のユニットか何かでしょう」
なんかズルいなそのスキル。
俺もデコイとか身代わりになってくれるスキルとか自律行動をしてくれるユニットを出すスキルとか欲しくなってくるぞ。
頭数が増やせるのはそれだけで戦術が大きく増やせるからな。
……基本的に少数人数で動くことが多くなってしまっている俺からすると、緊急時に数だけでも増やせるならありがたいことだと思ってる。
何はともあれ、初回の次元戦争はノーガードだったが今回は最低限守ってくれるやつがいるだけマシだな。
「準備が整ったのでさっさと行きますよ。
劣化天子はスペックが低いのですからもっとキビキビ動くように!」
へいへい……
俺は【菜刀天子】に急かされながら赤褐色の岩山を南下していく。
俺たちが南下したり北上したりしているのは、なにもむやみやたらに移動しているわけではない。
【菜刀天子】は他の次元天子の居場所がある程度気配で読めるそうだ。
【渡月伝心】の伝播力を利用した手法とか言っていたが、詳しいことを聞いてもよく理解できなかったので途中で聞くのを止めてしまった。
さて、俺が向かっている方にはピッケル次元か望遠鏡次元どちらのプレイヤーがいるんだろうか。
望遠鏡次元は聞くからに武器じゃないチュートリアル武器(?)がMVPプレイヤーっていう強さに疑問を持ってしまいそうな次元だが、序列は6位で俺たちよりも上だし、【風船飛行士】みたいなチュートリアル武器をゲーム独自の使い方で活用するパターンも考えられる。
情報をまだ一切出てきてないし、気をつけたい。
「望遠鏡でどのように戦うのか興味はありますね。
似たようなチュートリアル武器のプレイヤーは包丁次元にも居ますが、次元ごとの戦闘傾向が違うようなので、包丁次元と同じとは限りませんからね……
それに、MVPプレイヤーとして力を奮えるレベルとなると明らかに通常の使い方をしていないのは間違いないです」
【菜刀天子】も同じ見立てのようだ。
あと、見えてる強敵と言えばピッケル次元の石動故智とかいう、本名を自ら晒しながらプレイしているネットリテラシーの欠片もない女騎士だな。
そして、前回の次元戦争で圧倒的ポイント量を獲得した凄腕プレイヤーだ。
俺は最後の方にちょっと遭遇しただけだったが、あれだけでも凄みを感じた。
それに、俺が苦戦していたパイルバンカー次元のMVPプレイヤーであるギアフリィを毎回撃破していたっぽいから、出来れば遭遇せずに陣営旗だけ奪いたいところだが。
「あっ、コッチのこと話してたのかな。
コッチは誉められると嬉しいからね、張り切っちゃうよ」
うわっ……
うわっ……
【Bottom Down-Online Now loading……】
昨日は色々な人から感想をいただけたので嬉しかったです。
ありがとうございました!
これからもよろしくお願いします。




