277話 Б細胞と【阻鴉邪眼】
「最後に、ここで【Б細胞】の励起を試していくがよい。
【深淵顕現権限Б(ベー)】を使うのだ」
ルル様にそんな提案をされた俺。
「ここで【深淵細胞】を励起させる分には生け贄は要らぬし、我が直に力の流れを見てやれる故に都合はいいであろう?」
そうだな。
ルル様に解説やアドバイスをもらえるならこの上なくありがたい。
深淵種族の第一人者みたいなものだし、【検証班長】に頼るよりも確実で早い。
というわけでさっそくいかせてもらうか!
スキル発動!【深淵顕現権限Б(ベー)】!
俺がスキルを発動すると、身体が黒い霧に覆われて【Б細胞】に適合するよう身体が最適化されていく感じがした。
そして、黒い霧が俺の両目に取り込まれていき目がすげ替えられていく。
青い瞳が黒く染まっていき、闇を見据えるような、深淵を覗き込むような漆黒の色を兼ね揃えるようになった。
ただ黒いだけでなく、磨きあげられたような黒さで鏡のようですらある。
ただ、瞳孔が翼のような形に変貌しているのが気になる。
これが俺の新たなる力ってわけだな。
今までの翼、尻尾のような派手さは無いが、それよりも使い勝手が気になる。
「無事にスキルを起動できたようだな。
まず、深淵細胞に馴染むように調整をしてやろう」
そうして、ルル様の触手が身体を這いずり回り始めた。
んんっ!?
あっ!?
ちょっ!?
ああああああ!!!!
……酷い目にあったぞ……
「さっそくアルベーの眼で視てみよ」
俺が呆けているのを気にすることすらないルル様に促されるまま視てみると、ルル様の横に見慣れないシステム表示が現れていた。
これはいったい……?
「アルベーの眼は阻害の力を持っておる。
故に、その眼で見られたものは生命エネルギーの循環を感知して阻害の進行を確認されてしまうのだ」
スタック値の確認ができるのか。
直接戦闘力には関係ないが、かなり便利だな。
他の2つの細胞と違って対人戦で使うほどではないが、長期戦前提のレイドバトルでは重宝するだろう。
「もちろんこれだけではないぞ?
アルベーの常套手段であった阻害の共有化も、【Б細胞】を励起している間は自動的に発動するはずである。
お前が阻害の対象になることはあまり無いと思うが、意図的に使う機会があるかもしれぬから覚えておくのだな」
ボマードちゃんの【名称公開】デバフを重ねがけするときとか、【阻鴉邪眼】を使われたときの対処方法として使うのは良さそうだな。
「それに、阻害の力を持っている影響で、阻害そのものに対する耐性も強化されると思うぞ」
あのレイドバトル中に俺が確認しているだけでもアルベーは数多くのデバフ食らっていたが、それでも動けていたし戦えていたのはそれが理由だったのか。
やけに最後粘ってくるなとは思っていたが、カラクリがあったんだな。
「そういうことだな。
アルベーの力は特殊な環境で役立つであろうから、使いどころを見誤らぬようにしておくのだぞ」
わ、忘れそう……
普段使いをするには今のところ汎用性が低いからな……
あと、試してないのはスキル【阻鴉邪眼】か。
アルベーを倒して手に入れたスキルだから、【魚尾砲撃】のように深淵細胞を励起しているときに【阻鴉邪眼】を使えば性能が上がる可能性は高いな。
というわけで!
スキル発動!【阻鴉邪眼】!
俺がスキルを発動させると、先程と同じように黒い霧が舞い上がってきて俺の眼に吸収されていく。
そして、俺の眼に宿る翼のような形へと変貌した瞳孔が2つに増えた。
また、スキル発動中ということを示すかのように黒い光が溢れ出してきた。
「それで、阻害空間の形成は……
小さいのお……」
俺が作り出せたデバフサークルは【ペグ忍者】の倍くらいの規模のものだった。
しかし、【ペグ忍者】が作り出せたデバフサークルは1つだったのに対して、俺は2つ。
増えた翼のような瞳孔の数が影響しているのだろうか?
まあ、諸々倍になってもルル様からすると規模が小さいように見えているらしい。
エリア全体をデバフサークルで囲えるアルベーと比べられても困るが……
「あやつの阻害空間は20個同時作成可能性かつ、エリア全体を囲えるからのお。
お前の規模では比べ物にならぬな……」
えっ、あれ20個作れるやつだったのか!?
たしかに身体が全く動かなかったし、納得できるが……
そして、そのデバフをバフに上書きできるくらいのバフ付与を俺たちにしていた【タウラノ】も相対的に凄いってことにことになる。
「いや、我の配下であるアルベーのデバフと小者狐のスキルの効果範囲が違うから単純に比較は出来ぬぞ?
それに、お前も2つの阻害空間を重ねれば効果量は増えるので使い方を考えるのだな」
俺は自分達が倒したり協力したりしたレイドボスのスペックに戦きながらログアウトすることとなった。
敬ったり、恐れたりする……
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