274話 考察会議は踊る!~【渦炎炭鳥】編~
「次は【渦炎炭鳥】についての報告をお願いします」
【渦炎炭鳥】は聖獣【クシーリア=ドーヂィ】を討伐して手に入れたスキルだな。
レイドバトル中のアナウンスからすると、あの旋回攻撃のことなんだろうが……
「【渦炎炭鳥】はここで実践するには難しいスキルなのらね。
発動すると、足に炎の渦が巻かれていくエフェクトが出てくるのら~」
確かに【クシーリア=ドーヂィ】も旋回攻撃の前に翼へ炎の渦を出現させていたな。
スキル発動前の予備動作といったところか。
「それで、効果はどんなものなのですか?
聖獣スキルはシステム補助系統の効果だと予測しているのだけれど」
今まではメッセージ送信、リスポーン位置の作成だからな。
他のゲームだと標準でついているような機能を後付けしていくのが今までの傾向だ。
「【渦炎炭鳥】は簡単に言うと、緊急回避機能なのら~!
使ってから4秒間無敵状態になるのと、4メートル先に移動できるのら」
対戦ゲームや狩猟ゲームなどで実装されていることの多い機能、それが緊急回避だ。
進行方向的にどう見ても当たっているはずだが、システム補助が入って当たっていないことになるやつだ。
「つまり、それを再現したスキルということですか」
「そうなのら!
モーションが終わったときに炎の渦が消えるから、スキルの開始と終了が分かりやすいスキルなのらよ」
無敵状態の時間を偽装するのは難しいってわけだな。
その辺りの調整はされているってことか。
「緊急回避ができるのならばレイドバトルでも対人戦でも重宝しそうなスキルになりますよ。
……例のごとくデメリット次第ですが」
だよな……
メリットだけなら今までのスキルも強いからな。
肝心なのは使いやすさ、デメリットの内容だろう。
良くも悪くもピーキー過ぎるスキルが多すぎるから、気になるところだ。
「【渦炎炭鳥】のデメリットは移動不可になることなのら。
【渡月伝心】のデメリットのスタン状態と違うのは、【渡月伝心】が1分間の全行動の制限なのに対して、【渦炎炭鳥】は一時間の足を使った移動の制限なのら」
スタミナの前借りみたいなものか。
一時間分のスタミナを一瞬で燃やし尽くすことで、緊急回避と瞬間移動と可能にするってことだな。
でも、制限は足を使った移動だけなんだな?
ってことは、俺が羽を出して浮いたらそれは制限がかからないってわけか。
「そういうことなのら~
【ペグ忍者】も手を使ってワイヤー移動すれば制限を無視できるのら!」
ガバガバ制限じゃん!
これは人権スキルか?
「君たち二人とも足以外で移動する手段があるからいいけど、他のプレイヤーは普通そんなこと無いからね?
そういう意味ではある意味人権スキルと言えなくもないけど」
ここからプレイヤー格差が生まれていくってことだろう。
どちらにしても、このスキルを使いこなせるプレイヤーがこの次元では一歩先を行く可能性は高いな。
タイミングさえ分かれば即死級の攻撃を最低限のデメリットでスカせるようになるし。
「その後の継続戦闘力が落ちるから劇的に強化されたというわけではないけどね。
ジェーの極太レーザーみたいな十秒以上攻撃が続く場合には無力なわけですし」
何でもかんでもスキルを使って回避すればいいってわけじゃないってことだ。
広範囲+継続攻撃に対しては変わらない。
あっ、そういえばクールタイムは?
一時間の移動制限ってことは一時間か?
「……このプレイヤーに人権がないゲームでその考えは甘いのら!
クールタイムは丸1日みたいなのら。
1日1回だけのかくし球なのらね~」
ちっ、【花上楼閣】と同じか……
レイドボスの攻撃を一時間に一回システム補助でかわせるならとんでもなく戦闘が楽になったはずなのに……
「【包丁戦士】しゃんは強欲なのらねー」
いや、それくらいねだってもバチは当たらないだろう。
他のゲームだと標準装備されてる機能だし。
「あと、【聖獣結界ξ(クシー)】についてなのらけど、やっぱり【堅牢剣山ソイングレスト】で【クシーリア=ドーヂィ】と【アルベー=クシーリア】が移動した場所に出来ていたのらよ~」
【クシーリア=ドーヂィ】が移動してた場所にできるのは分かるが、【アルベー=クシーリア】が移動した場所に聖獣結界が出来ているのは意外だな。
【クシーリア=ドーヂィ】が聖獣結界を発動したあとにその力を全て吸収したから、聖獣結界の効果も継続されたわけだ。
「ということは、もしや【渦炎炭鳥】は聖獣結界の中で使いたい放題というわけですか?
無限湖沼ルルラシアで起動した聖獣結界の中では【花上楼閣】のクールタイムが完全に撤廃されていましたから。
こちらでも同様の効果があると睨んだのだけれど」
【検証班長】の推測は会っているのか……?
「流石【検証班長】しゃん!
限定された場所でしゅが、緊急回避と高速移動を使いたい放題なのら!
さっそく超高速バトルを楽しむプレイヤーたちが少し集まっていたりするのらよ~!」
えっ、それ面白いそうだな。
別ゲーのスピード感覚でバトルできるわけだろ。
しかも、スキルの感覚を掴む練習にもなるわけだ。
特に今回のスキルは汎用性が高いスキルだから、デメリットが撤廃された空間で何度も使って実践して実戦に備えることができるのはデカイ。
暇なときに行って練習してみるか……
ふん、やはり聖獣スキルは確実に底辺種族の役に立ちますね。
深淵種族とは違うのですよ!
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