273話 考察会議は踊る!~【阻鴉邪眼】編~
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日はレイドバトルの結果で手に入れたスキルとかについて話し合うために【検証班長】に会いに行くぞ!
というわけでやって来ました新緑都市アネイブルにある樹木の建物を間借りした検証班のたまり場【メッテルニヒ】。
「来ましたね。
さあさあ、上がって来てください!」
俺を出迎えたのは白衣にメガネの痩せ型の男、【検証班長】だ。
こう見えて包丁次元のブレインと呼ばれるほどの切れ者だ。
「【包丁戦士】さんはやけにボクを持ち上げるね?
誉められて悪い気はしないけど……」
事実、お前は優秀だからな。
戦闘技術のトップが【釣竿剣士】だとすると、頭脳労働のトップは【検証班長】だ。
この二人を次の次元戦争に連れていけないのはやっぱり辛い。
「それで今回のメインの話題は【渦炎炭鳥】【阻鴉邪眼】についてですね。
スキルの獲得はプレイヤーの活動を大きく変えますから、初動で情報を確認しておいて損はないと思うよ」
それは身に染みて分かってる。
差はあるにしても、全プレイヤー何かしらの恩恵を受けているからな。
「というわけで、諜報活動をしてきた【ペグ忍者】を呼んであります。
さあ、報告をお願いします」
「了解なのら~!」
天井から降ってくるように現れたのは、淫乱ピンク髪猫耳頭巾の幼女アバターの使い手【ペグ忍者】だ。
「まずは【阻鴉邪眼】についてなのら!
このスキルは発動すると目に黒いもやがかかるのら!
実践してみるのらね?
スキル発動!【阻鴉邪眼】なのら~」
【ペグ忍者】がスキルを発動させると右目の前に黒い霧のようなものが発生した。
それで、ここからどうなるんだ?
【ペグ忍者】を見守っていると黒い霧が目に吸収されていき、青かった瞳が黒く染まっていく。
そして、黒い光を帯び始めた。
邪気眼かな?
「くっ、††サタン††の力が溢れ出てくるのらっ!?
……みたいなことをやりたくなるエフェクトなのらね」
【ペグ忍者】は黒い光が出ている目を片手で抑えて、指の間からこちらを見つめるポーズを取りながらそう言った。
やっぱりこの【ペグ忍者】、アバターと中身の年齢が一致してないな。
そんな若いときにやりがちな患者みたいなやつをネタにできるってことは、それを患う年齢を越えたやつだけだからな。
「それはいいですが、【ペグ忍者】は効果の報告もきちんとしてくださいね?」
ポーズをキメていた【ペグ忍者】を【検証班長】がたしなめてきた。
おふざけが過ぎるってことだ。
まあ、ゲームだからこういうときにふざけるのは問題ないといえば問題ないが、【検証班長】は検証に関係ないことにはあんまり興味が無いから早く話を進めたいんだろうな……
遊びが少ない。
「【検証班長】しゃん、ごめんなさいなのら……
効果はデバフ空間の設置なのら!
あそこを見てみるのら、黒いサークルができてるのら!
あそこに入っている間はデバフがかかるみたいなのらね~
罠みたいな使い方ができると思うのら」
えっ、そんな効果だったのか。
っていうことは、あのレイドバトル中に俺たちがかかっていたデバフは、俺が認識していた以上に何重にも増えていたかもしれないのか。
だが、あのときはこんなサークルなんて発生してなかったぞ。
「多分、エリア全体に広がってたから見えなかったのでしょう。
レイドボスが使うとエリアの外からでないと認識できないくらい広範囲だったという話ですね」
うへぇ……【ペグ忍者】が出したサークルは半径二メートルくらいだったから、その規模の違いであのレイドボスのスペックがどれだけ高かったのかわかる。
俺のバフデバフ反転称号が無かったら真面目に負けてたな……
「これだけ聞くとかなり使えそうなスキルですね。
……それで、デメリットは?」
デバフの倍率にもよるがそこそこ使えそうなスキルだからな、気になるのはデメリットだろう。
【魚尾砲撃】は高威力だったが、死亡前提で使う感じだったからな。
さて、この【阻鴉邪眼】は……?
「右腕と右目が呪われるのら……
動かなくなるのと、その部位が残っていると継続ダメージを受けるみたいなのら……」
つまり、大人数の利き腕と思われる右腕と右目の視覚が使えなくってわけか。
しかも、腕を切り捨てて、目を自ら抉ることをしないとスリップダメージで自滅する。
「う、うーん……
これはまた癖がありますね……」
【検証班長】も困惑しているようだ。
ボマードちゃん以外にもデバフが使えるようになったのは嬉しいが、足手まといが戦場に増えるのかよ。
「しかも、発動したプレイヤーが死に戻りすると効果が消えるみたいなのらよ」
うわっ、このプレイヤーに人権がないゲームでその条件は厳しすぎる……
ボマードちゃんの【名称公開】はあいつが死んでも効果が継続するから使いやすかったが、この【阻鴉邪眼】は足手まといになったプレイヤーを介護しないといけないってわけだろ?
使い勝手が怪しくなってきたぞ……
「頭が痛いですね……
どう戦術に組み込みましょうか……」
「【ペグ忍者】もあまり使いたくないのらね……」
どうしてこうなった【阻鴉邪眼】!?
やっばりあれか、【魚尾砲撃】同様に対応する深淵細胞を持ってないと不完全にしか発動できないのか……
深淵種族のスキルはしょせんそんなものですよ。
やはり、真に頼れるのは聖獣スキルです!
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