270話 渇望の加算
あんなにいたはずのプレイヤーはもう五人まで減ってしまった。
今残っているのは【ペグ忍者】【トランポリン守兵】、俺、片手剣使いの【検証班】モブ、釘使いの【冒険者の宴】モブだ。
チュートリアル武器のラインナップが貧弱過ぎる……
何故かいつもレイドバトルの最後まで生き残っている片手剣使いの【検証班】モブは目立ったことは全くしていないが、実は実力者なのかもしれない。
チュートリアル武器も普通に武器だし(?)、戦闘系プレイヤーで間違いないだろう。
釘使いは、知らん。
ここまで追い込まれてしまったが、何か打開策はないのか……
「一か八かで【名称公開】を使えるようにして【アルベー=クシーリア】にデバフを重ねるということも策としてはありましてよ?」
まあ、あるけどさ。
ここまで誰もやってないってことはお察しだろう。
今後のプレイスタイルが縛られるのを皆嫌っているのだ。
ちなみに、俺も嫌だ。
「それに、またデバフが共有化されるのがオチなのら~!
結局不利になるだけなのらよ!」
【ペグ忍者】が、ペグを周囲に投げてワイヤーを張り直しながらそう答える。
流石【検証班】のメンバーなだけある。
変態だが、分析の結果は信頼できるっていうのがこのペド忍者だ。
ちゃっかり戦いやすいフィールド、通称ワイヤー猫ハウスの構築も行っているのが抜け目がないな……
「それではどうしまして?
このままではじり貧ですわよ!」
こっちのリソースが枯渇寸前なのは【トランポリン守兵】お嬢様の言う通りだ。
ポリンお嬢様のトランポリンの盾による守りのおかげで、ダメージこそ最小限に抑えられているが、守れる人数には限界がある。
だからこそ、ここまで追い詰められてるしな。
せめてバフがもう何段階かついてくれたらレイドボスに食いつけるんだが……
「この何重にもかかったデバフが厄介ですわね……
しかも、あの眼に見られているとどんどん重なってきている気がしますわ!」
「このデバフがバフに変わってくれたら楽になるのらのに……」
そんな都合のいい話があるわけないだろ。
……ん?
あああいあああああああああ!?
そんな都合のいい話があったわ!
おい、【タウラノ】!
俺のバフをデバフに変えてくれ!
あと、【アルベー=クシーリア】にもだ!
「そんな変な懇願をされたのは初めてでおじゃるな……
じゃが、何か考えがあってのことでおじゃる?
それなら、協力するでおじゃるよ!
スキル発動!【丑刻参釘】」
【タウラノ】は手に藁人形と釘を出現させた。
そして、藁人形に釘を突き刺している。
すると、俺と【アルベー=クシーリア】に強烈な負荷がかかり、動きが目に見えて鈍くなっていった。
カラスが再び慟哭しながら漆黒の光を眼に集めている。
その集まった漆黒の光が凝縮され、黒くものを写し出す鏡のようになった。
【ξБ>/≠БББξξБББ††#」」БББББББББ!!!!】
【阻害【丑刻参釘】の共有化によりレイドバトル中のプレイヤーの能力に一部制限がかかりました】
【制限時間00:10:00】
そして、俺たち全員にそのデバフが過重されていく。
俺は【タウラノ】のデバフを直接受けているので、なおのこと身体が重い。
俺は辛うじて動く指を駆使して、すぐさまウインドウ画面を開き、再度称号を変更する。
【【アリーナチャンピオン】権限が解除されました】
【【天の邪鬼】のセットスキルを起動しました】
【ステータス変化が逆転します】
俺は称号を【天の邪鬼】に変えてその効力を発揮させた。
効果は単純、バフとデバフを入れ換えるものだ。
称号を切り替えたからか、役職【アリーナチャンピオン】の効果が強制中断されてしまったようだがここまでこれば誤差のようなものだ。
デバフを何度もかけられたあの【アルベー=クシーリア】の範囲から出ないようにするのはそこまで難しく無くなっているからな。
スピード自慢のレイドボスの力を取り込んでいても、さすがにデバフによるスペックの低下には敵わないようだな!
そして、俺にかかっているデバフはボマードちゃんのやつを共有化した【名称公開】、あのカラスが起動した【名称公開】を共有化したもの、【タウラノ】の【丑刻参釘】、【丑刻参釘】を共有化したもの。
これだけのデバフが全て逆転し、俺に戦う力を漲らせていく。
ふはははははは!!!!
滾る!滾るぞ!!
散々俺たちを足蹴りにしてきたお前をこれから、調理してやれると考えると笑いが止まらないぞぉぉぉあ!!!!!
俺の包丁の飢えをその血で満たさせてくれよおおおおお!!!!!
【個人アナウンス】
【【包丁戦士】に称号【『sin』暴食の渇望】を付与しました】
【称号の効果で【Bottom Down】!】
【【包丁戦士】の深度が29になりました】
また、すぐこういうことをしますね……
【Bottom Down-Online Now loading……】




