268話 邪眼開眼
「ってあわわわわ!?
いや~、私の方へ向かって来ないでくださいよ!?」
慟哭した【鳴動する阻鴉眼】が真っ先に狙い始めたのはボマードちゃんだ。
余裕が無くなったからか、こっちの頭数を露骨に減らし来ているっぽい。
なにせ、ここに残っているメンバーで明らかに一番弱いボマードちゃんを狙っているからな。
もしかしたら他の理由があったりするのかもしれないが、それはなんとも言えない。
「ふわはわわわっ!?
いや~、【包丁戦士】さん見てないで助けてくださいよ!?」
自分でなんとか出来ないのか?
かくし球の【深淵顕現権限】と爆弾残ってるだろ?
それに、生け贄の代用品も今は亡き【槌鍛治士】からもらっていたな?
「そんなのとっくに使っちゃってますよ!?
いや~、爆弾もさっきので打ち止めです……
【槌鍛治士】さんが生き残っていれば作ってもらえたんですけど……」
なるほど、よーくわかった。
今のお前はもう戦闘能力0ってことだな。
「言い方はあれですけど、事実ですね……
いや~、そうなると……あれですか?」
そう、あれだ。
お前の代名詞とも言えるあれをかまして、散ってくれ。
「ううっ、仕方ないですね……
いや~、アイドルを畜生のように扱う【包丁戦士】さんのために人肌脱ぎますよ!」
そういって【鳴動する阻鴉眼】の三本足による攻撃を避けることなく受け入れるボマードちゃん。
「最後に見せてあげますよ!
いや~、やっぱり私という生命の最後を飾るのはこのスキルです。
スキル発動!【名称公開】!」
ボマードちゃんはそのまま足に潰され、光の粒子となり消え去った。
死に戻りしたってことだ。
そして、スキルを発動したボマードちゃんが散ったということは。
【レイドボスの能力に一部制限がかかりました】
【制限時間00:10:00】
うっし!
これでさらにあのカラスのステータスをダウンさせることができた!
……と、喜んでいたが嫌な予感がする。
カラスが再び慟哭しながら漆黒の光を眼に集めている。
その集まった漆黒の光が凝縮され、黒くものを写し出す鏡のようになった。
【鳴動する阻鴉眼】……眼?
あっ!?
これは必殺スキルか!?
【ξБ>/≠БББξξБББ††#」」БББББББББ!!!!】
【阻害【名称公開】の共有化によりレイドバトル中のプレイヤーの能力に一部制限がかかりました】
【制限時間00:10:00】
俺が気づいた頃には、ニワトリカラスの顔のカットインが流れ、俺たちの身体に負荷がのし掛かってきた。
さらにニワトリカラスは慟哭を続け、俺たちの脳内には無機質なアナウンスがなり続ける。
【異次元の風が吹き荒れている】
【レイドボスの【真名開放】】
【レイドボスは自らの真名を開放した】
【レイドボスのステータスが割合に応じて伸長した】
【レイドボスの【名称公開】】
【レイドボスは自らの名称を公開した】
【レイドボスに知名度に応じたステータス低下効果付与】
【我が名は【吸聖獣 アルベー=クシーリア】】
【阻害【名称公開】の共有化によりレイドバトル中のプレイヤーの能力に一部制限がかかりました】
【制限時間00:10:00】
黒い鏡のようになった【アルベー=クシーリア】の眼に映っている俺たちは、地面に這いつくばっている。
ただでさえボマードちゃんの【名称公開】デバフを共有化させられたせいで身体が重かったのに、このニワトリカラス【アルベー=クシーリア】自身の【名称公開】のデバフも共有化されてしまった。
今までこのカラス側のスキルを一切使ってこなかったが、こっちからのデバフを待っていたからだったのか。
そういえば、ルル様はこいつの名前を暴かずに戦った方がいいって言っていた気がする。
おそらくこうなることを予見してそう助言してくれたんだろう。
終盤だからまだ希望が見えているが、あらかじめ【名称公開】の共有化をされていたら序盤からプレイヤーは総崩れになっていたことだろう。
やっぱりルル様って優しいじゃん!
なお、このニワトリカラスはルル様の配下の模様。
マッチポンプかな?
「カラス……鏡……やはり、あの伝承というか道具というか……
ああ、なるほど、そういうことですね!」
何か閃いたように見えた【検証班長】だったが、それを俺たちに伝える前に【アルベー=クシーリア】の足に踏み潰され光の粒子となってしまった。
全員地面に這いつくばっていたから、【アルベー=クシーリア】に攻撃されたら一瞬で消し飛んだんだろうが、あえてここにいる中でも一番戦闘力のない【検証班長】を消してきた。
やはり、このカラス……チキンハートなのか確実に倒せる相手にヘイトが自然と集まるようだ。
それなら、積極的に俺が狙われることはない。
この隻腕の状態でも他の連中に比べればマシだからな。
俺の十八番の【フィレオ】を使った後のことを考えて、これまで四肢のどれかが欠けた状態でも戦えるように訓練してきたからな。
「そんなことやってたノ!?
ストイックだネ~!」
……その辺の野良モブ連中のプレイヤーキルをするついでだけどな。
「やはり【包丁戦士】様は変わっていますわね……」
いや、そんなことないだろ!?
誰が見ても変わり者です。
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