266話 クラフトマイスター権限、発動
とりあえず、現状を確認する。
俺は今天子の羽とルル様の羽を同時に顕現させている。
ちなみに、ジェーの尻尾は時間切れで消えた。
そして、メンバーだが、めぼしいやつらは【風船飛行士】、【トランポリン守兵】、【ペグ忍者】、【検証班長】、【短剣探険者】、【バットシーフ】、ボマードだ。
2つ名持ちもぼちぼちやられてたりするし、他のやつらもめちゃくちゃやられてたりする。
何せ100人を超えていたはずのレイドチームがもう15人しかいない。
俺が思っていた以上に地上の戦いも限界に近かったようだ。
上空にいたメンバーは四人しか生き残れなかったので、それと比べたらましなんだろうが……
それでも、地上でそれだけの人数が残れたのはあのカラス、【鳴動する阻鴉眼】が遊んでくれていたからだろう。
じゃなかったらボマードちゃんがここまで生き残っているのはおかしい。
「それってどうなんですか!?
いや~、私も戦えるようになったんですよ!!」
タンクトップロリのボマードちゃんがくちごたえしてきた。
なんだ?
文句あるのか?
「うぐぐ……」
「ぼ、ボマード様は爆弾と不気味な尻尾で充分に活躍してくれていましたわ!」
俺とボマードちゃんに割って入るように現れたのは【トランポリン守兵】お嬢様だ。
このお嬢様のことだ、一緒に戦って仲間意識の芽生えたやつを貶されるのがたまらなかったのだろう。
まあ、一緒に戦っていたお嬢様がそう言うのならそう言うことにしておこう。
さて、ここまで減少した人数で挑む相手は朱雀レイドボスとカラスレイドボスが合体したニワトリカラスだ、通称だけど。
ウプシロンを倒す前まで【堅牢剣山ソイングレスト】に現れていたニワトリカラスと見た目は同じだが、感じられる力が違う。
おそらくだが、あのカラスが朱雀の力を完全に取り込むことに成功したからだろう。
事実、漆黒の翼には炎の渦が巻いている。
そして、高速で駆け回っており、捕らえるのも困難だ。
ここまでは、朱雀レイドボスの【クシーリア=ドーヂィ】の力を取り込んだ影響だが、カラスレイドボスの【鳴動する阻鴉眼】の固有の能力をまだ見ていない。
それだけが気がかりだが、何にしてもこいつを倒すしか無いのには変わらない。
「そういうことなのら~!」
【Warning!】
【創り上げるのは完璧な姿】
【美しきもののみ存在を許可する】
【【クラフトマイスター】権限により魔方陣の連続錬成!】
【【クシーリア=ドーヂィ】から一定距離離れた存在に対して無差別で魔方陣が連続錬成されます】
「ってああああああああああなのらっ!?」
俺が包丁を振り回しながら【鳴動する阻鴉眼】の攻撃をさばいていると、【ペグ忍者】の悲鳴が響いた。
なんだなんだとそっちを見てみると、離れていたはずの狐耳レイドボス【タウラノ】の式神と上空戦闘で力を使い果たした【風船飛行士】が消し炭にされていた。
こっちに【鳴動する阻鴉眼】がいるのにどうしてあっちに攻撃が行ったんだ……?
「急に火柱が地面から出てきたのら~
赤色の魔方陣みたいな模様が浮かび上がって、そこからぶわっとなのら!」
なんか抽象的な表現だが、なんとなく伝わった。
それにしても、魔方陣から火柱か……
「もちろん、【包丁戦士】さんも気づいてますよね?
この攻撃方法、次元戦争の時に【ケイトリー=ホウセ】が使ってきた攻撃だろうね。
あの時は、【蛇腹剣次元】のインフォさんのabilityで事前回避できてましたが、それがないと厄介ですよ……」
ちっ、まさかの攻撃方法が来たな。
役職のクラフトマイスターってこの魔方陣とか、火柱の作成とかが絡んでるのか?
「ですが、あの時と違うのは一定距離離れた相手に自動発動するという点です。
要するに、接近戦を強要されているというわけだね」
【検証班長】の考察が皆に伝わり、生き残っているプレイヤーたちは高速で移動する【鳴動する阻鴉眼】に猛攻をしかけている。
攻撃を当てることで動きを止めようという魂胆だ。
俺は袈裟斬りで【鳴動する阻鴉眼】へと切りかかり、カウンターいわんとばかりに放たれた三本足の足払い攻撃を包丁の腹で受け流していく。
そして、俺が攻撃を受け流している間に【短剣探険者】と【ペグ忍者】がそれぞれのチュートリアル武器で攻め立てる。
「スキル発動!【暴虎馮河】なのら!」
【ペグ忍者】は鉤爪のようにしたペグから黄色いオーラが溢れ始めた。
そして、そのオーラは伸びるようにして鉤爪ペグを補強していく。
その後、そのままペグで漆黒の羽へと斬撃を繰り出した。
「私の短剣の切れ味を味わってネ!」
【短剣探険者】はあらかじめ発動しているスキルの効果によって、竜鱗の生えた短剣を振るい死角から襲いかかる。
「私の爆撃も役立ちますよ!
いや~、爆弾魔って感じですね!」
「俺っちが盗んでおいた爆弾もついでに投げるッス!」
ボマードちゃんと【バットシーフ】後輩が近距離武器の使い手たちの攻撃の合間を縫って爆弾を投げてくる。
着弾した爆弾は確実にダメージを与えているようだ。
「えっ、いつの間に!?
いや~、相変わらずの窃盗癖ですね……」
「つい手癖で盗んじゃったッス!」
見境無しに盗むのは流石といったところだな。
その二人による爆撃によって怒りの感情をあらわにした【鳴動する阻鴉眼】は羽を大きく振りかぶっている。
この行動は俺でもよく見たことがあるやつだ。
っていうことは……
「その衝撃、全て受け止めますわ!
スキル発動!【近所合壁】でしてよ!」
【鳴動する阻鴉眼】が羽を振り下ろした瞬間にスキルを発動した【トランポリン守兵】お嬢様は、羽の落下地点にスキルでトランポリンを出現させてスタンプ攻撃による衝撃波の発生を食い止めた。
そして、食い止め終わった後チュートリアル武器のトランポリンは砕け散った。
だが、砕け散ったのには目もくれずポリンお嬢様は再度手元にトランポリンを形成した。
これがタンク系チュートリアル武器を手にいれたプレイヤーへの特権スキルの効果だ。
砕け散る代わりに、何度でもチュートリアル武器を形成しなおせる面白いスキルだ。
この連携は、即興のものだが皆いい感じに動けている気がする……
このままいけば倒せるかもしれないぞ!?
このままいけばですけどね……
【Bottom Down-Online Now loading……】




