261話 飽きそう
風船で出来た白銀の竜に騎乗する【風船飛行士】。
そこまで大型ではないが、人一人乗るくらいなら充分な大きさになった風船竜の口の中に【風船飛行士】は仕上げと言わんばかりに手に持っていた銀色の杯を投げ入れた。
すると、口の中から銀色のブレスのようなものを噴き出しはじめた。
【風船飛行士】がまさかこんな芸当をしてくるとは思ってなかった。
闘技場イベントの時は使ってこなかったのに……
「この竜、攻撃力は高いが紙耐久ンゴねぇ……
【包丁戦士】がヘイトを集めてなかったら絶対やらなかったんだよなぁwww
流石はヘイトを集めるのがお上手なプレイヤーだなwww
プレイヤーからもレイドボスからもヘイトを集めるのが得意とは恐れ入ったぞwww」
それは誉め言葉としてもらっていいのか?
半分以上嘲笑と皮肉が混ざってそうないいぐさだが、まあ、俺はプレイヤーキラーだからな。
実際、プレイヤーからのヘイトはかなり集めてると思う。
何度も逆襲しに来た輩もわかんさかいるし。
それはいいとして、その竜のバルーンアート凄いな。
素直に称賛するぞ。
「これぞ風船竜だwww
本当は渓谷エリアのギルドマスター対策に練り上げたスキルの使い方なんだがwww
せっかくの機会だから使ったったwww」
【風船飛行士】は風船竜に銀色のブレスは吐かせながら、【クシーリア=ドーヂィ】に魔法攻撃を仕掛けている。
さっそく俺が事前に伝えた【クシーリア=ドーヂィ】の物理耐性を無視できる魔法系統の攻撃をしているようだ。
いや、実際ブレスが魔法攻撃かどうかは分からないがなんとなく魔法っぽいし……
ブレスが直撃した【クシーリア=ドーヂィ】は僅かにだがダメージを受けているような仕草をしている。
だが、それでも宿業の影響下にあるからか俺へのヘイトを抑えきれず、防御よりも攻撃を優先している。
ウプシロンの時も思ったが、何がそこまで聖獣たちを突き動かすのだろうか……
宿業に縛られているっていうのもあるんだろうが、それ以上に深淵種族への敵対心が強すぎる気がするぞ。
いったいルル様たちは何をしたらそこまで敵対されるようになったんだ……
俺もヘイトを集めるのは得意みたいだが、ルル様はそれ以上なんじゃないか。
俺は後方から迫ってくる火の玉の弾幕を回避しながら、ルル様に思いを馳せている。
【短剣探険者】と【ブーメラン冒険者】が火の玉が俺に向かってくるまでにある程度露払いしてくれているので、考え事をするくらいには余裕が出てきたからつい考えてしまった。
「もー!
私たちが手助けしているからってサボらないでネ!」
「いや、【包丁戦士】さんはさぼってないよっ!
元々限界に近かったのが、少しまともになっただけだよっ!」
「そう言われてみるとそうかもネ……
たしかに、今も逃げることしか出来てないヨ」
くそー、双子は助けてくれているから言い返せないが、俺だけ貧乏くじを引いてる感が半端ない……
攻撃を受けてるのがほぼ俺だけだからな。
その隙に、【風船飛行士】を筆頭に【冒険者の宴】のメンバーがチクチクと攻撃を加えているから俺の頑張りが無駄じゃないっていうのは分かるんだが、俺も攻撃したいよな……
逃げるだけっていうのも味気がない。
だが、反撃の糸口が掴めていない今はただ耐えるのみだ。
俺の代わりに頑張ってくれよ風船竜。
風船竜が出しているブレスだが、【風船飛行士】が元々持っていた銀色の杯が出していたオート照準、オート発射の射撃を拡散させて発射しているようだ。
なので、一発の威力がデカイ攻撃っていうよりは多段式の攻撃っていう感じか。
そして、攻撃が拡散しているので何処かに集中的にダメージが集まっている訳ではなく、身体全体にダメージを与えているようだ。
一点集中で攻撃した方が部位破壊とか、弱点とか作り出せそうな気がするがまあ、そこまで贅沢は言えないか。
でも、本当にかわし続けるのは大変だが、それよりも飽きそうだから早くしてくれよ~!
いや、レイドバトル中に飽きないで下さいよ……
真面目に戦ってください……
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