259話 銀盃羽化の抜きどころ
風船で浮かび上がっていく【バットシーフ】後輩と、ルル様の細胞を励起して出した骨の羽で飛ぶ俺たちは【風船飛行士】に追いついた。
「ちょっwww
本当に風船で飛べてるじゃんwww
クソワロタwww
本当に見本を見せただけだぞwww」
「それがオレっちのabilityッスからね!」
「あと、その風船はなんか見覚えがあるんだが?www」
「つい手癖で盗んじゃったやつッスね!」
おい、正直に伝えるやつがあるか!
そういうのはお茶を濁して伝えろよな?
「先輩が先輩なら、後輩も後輩ってわけかwww
プレイヤーキラーと盗人、お似合いじゃんwww
流石は悪名高い【コラテラルダメージ】のメンバーだなwww」
まあ、それが分かっててクランに勧誘したから別に間違ってはいないが、言い方が気になるな……
こっちから盗んでいるから言い返しはしなかったがな。
だってこいつ、つつけばつつくほど言い返してきやがるし……
「まあ飛べるならいいか(小並感)
オレの技術を使ってるんだから、精々役に立てよなwww」
「当然ッス!
活躍するッスよ!」
なんか、この二人の会話はそれなりに平穏だな。
俺が混ざるからいけないんだろうか。
そう思っていると、俺たちは【クシーリア=ドーヂィ】の目の前に到達した。
この朱雀レイドボスを前に、【風船飛行士】は感慨深そうな表情で思い詰めた後、口を開き開戦を告げた。
「さて、今日こそ年貢の納め時だwww
ability【銀盃羽化】発動www
さらに……スキル【竜鱗図冊】っ!」
そう叫ぶと、腕に巻いていたシルバーを外し、口に運んだかと思うと、それをごくりと飲み込んだ。
そして、肩から提げていたポシェットの中から巻物のようなものを取り出すと、それを勢いよく広げた。
その巻物が鱗のように分解されたかと思うと、次の瞬間には【風船飛行士】の手元には銀色の杯が握られていた。
それを見た【クシーリア=ドーヂィ】は【風船飛行士】の行動を妨害しようと弾幕のように火の玉を飛ばしてきた。
この様子見で放たれる火の玉の軌道は読みやすいので、俺たちや他の【冒険者の宴】のメンバーは回避することができた。
だが、【風船飛行士】はそれに動じず、不動を貫いている。
おいっ、危ないぞ!
俺がそう思わず声をかけてしまうくらい見事に動いていなかった。
もうすぐで【風船飛行士】に火の玉が当たると思われたその時、【風船飛行士】は俺に向かって口を開いた。
「ちょっwww
オレのability【銀盃羽化】の効果ワカラズ?
闘技場イベントでも使ったのに忘れられてるとは悲しいンゴねぇwww」
そんな陽気な調子で俺に向かって返答をしてきた。
あれ?
無傷じゃん!
火の玉が当たったはずでは?
火の玉が直撃したと思われた【風船飛行士】はピンピンしていた。
それどころか、あいつの周りには【クシーリア=ドーヂィ】が放ったと思われる火の玉が静止していた。
そして、その火の玉には銀色の羽がエフェクトのようについていた。
あー、そういえばなんか見覚えがある気がするぞ。
たしか、俺がペグを投げた時もあんな感じで乗っ取られたんだった。
っていうことは、もしかしてその火の玉も……?
「そwうwいwうwこwとwだw
レイドボスの攻撃だろうが、オレのability【銀盃羽化】の前ではこの通りwww
おらっ!自分の攻撃を喰らいやがれwww」
【風船飛行士】は手に現れた銀色の杯をコントローラーのように傾けて、銀色の翼のエフェクトがついた火の玉【クシーリア=ドーヂィ】にぶつけるべく軌道を操作した。
火の玉は産みの親である【クシーリア=ドーヂィ】に向かっていったが、自分の攻撃をそう易々と受けてくれるというのは、このプレイヤーに人権のないどん底ゲームでは考えられない。
そして、案の定といったところか、【クシーリア=ドーヂィ】はさらに追加で火の玉を生み出し相殺した。
というか、あの追加で生み出した火の玉のコントロールって奪えないのか?
それができるなら、攻撃を当てることはできそうだが。
「おまっwww
abilityがそんな便利なものじゃないって知ってるだろ?www
オレのabilityはオレに来たやつしか奪えないぞwww」
まあ、abilityが万能じゃないっていうのはよくわかる。
というか、俺のabilityの【会者定離】はデメリットくらいしか明確な効果が判明してないから、ほぼ使えてないんだがな……
「ンンッッwwwability縛りはアリエナイwww
それはナメプが過ぎるだろwww
本当にトッププレイヤーか?www」
と、トッププレイヤーはレイドボスに対しての熱意の強さが基準だから……
という苦しい言い訳しか出来なかった。
ぐうの音も出ないほど正論過ぎて、ちょっと情けなくなったのは秘密だ!
これがマジレスというものですか……
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