260話 竜飛行士
【Warning!】
【聖獣【クシーリア=ドーヂィ】が深淵種族の気配を察知しました】
【聖獣であるが故に】
【深淵と敵対する】
【【包丁戦士】にヘイトが極大集中します】
上空で興味本位で近づいてみたら聖獣の宿業を起動させてしまったようだ。
ルル様の細胞を使って飛んでいることを失念してたぞ……
ってことは、俺が空中で回避タンクするしかないってことじゃないか!
「ざまぁwww
精々オレのために囮になってクレメンスwww」
くそっ、覚えてろよ!
俺は連続で放たれる火の玉を翼による立体的な動きで回避していく。
だが、今までのかわしやすかったものと違い、ほとんどの火の玉が俺に向かってきているから、かわすだけで精一杯だ。
「私が援護してあげるよっ!
ブーメランの餌食になってねっ!」
「前の戦いでは世話になったからネ。
今回は私たちがもっと力になるヨ!
この短剣に誓ってネ!」
逃げ惑う俺を救うべく現れたのは 俺の前に現れたのは高校生くらいの活発そうな見た目で、スレンダーな体型の双子だ。
短剣の使い手は【短剣探険者】。
戦闘スタイルが俺に似ていて、料理下手な女子だ。
ブーメランの使い手は【ブーメラン冒険者】
女子力があり、愛嬌もあるように見えるがれっきとした男の娘だ。
双子の姉である【短剣探険者】にもっと女子力を分けてやれ……
それはともかく、お前ら助かる!
俺は逃げるのすらギリギリだから、お前らのサポート頼りだ。
よろしく!
「火の玉の軌道をズラすだけなら、私のブーメランが大活躍だねっ!
それっ!」
【ブーメラン冒険者】は手に持ったブーメランを火の玉に向けて投擲した。
投げられたブーメランが火の玉に当たると、火の玉は僅かに飛んでいく方向を変えていく。
【ブーメラン冒険者】は【クシーリア=ドーヂィ】に近い位置でそれをやってくれているから、俺に近づくはずだったものは最終的に大幅に逸れていっている。
さらに、ブーメランの手元に戻る性質を活かして、火の玉へのアタックを往復で行っているので、より多くの火の玉が軌道を変えることとなった。
普通の武器なら火の玉に投げ入れただけで炎上して、燃焼する結果で終わってしまう。
だが、何故この【ブーメラン冒険者】のブーメランは何度もアタックを繰り返すことができるのか。
「もちろん、チュートリアル武器だからだよっ!
私のチュートリアル武器がブーメランだからこそ、【風船飛行士】さんが【包丁戦士】さんの護衛に選んだよっ!」
あいつ、俺を囮にするとかいいつつきちんと護衛としてクランメンバーを送り込んでくる辺り場面をわきまえているな。
「口調とか言い方とかあれだけど、【風船飛行士】さんって結構優しいんだよねっ!」
「伊達に大規模クランを率いてないよネ~」
ま、そういうことだろうな。
俺にはやけに突っかかってくるが、他のやつら全員にそんなことをしていたらクランなんて一瞬で崩壊するだろう。
それを纏め続けているってことは何かしらの人望はあるってことだ。
「それに報いる活躍をしないとネ!
私も露払いだヨ!」
【短剣探険者】はスキルの効果で赤い色の竜鱗に覆われたチュートリアル武器の短剣で火の玉の一部を削ぎ落とした。
あの赤い鱗は武器そのものの性能も上げているようだ。
この双子が結構火の玉を落としてくれているが、それでも俺の方まで飛んでくるやつはまだまだいっぱいある。
俺は回転を加えながら飛び回り、【クシーリア=ドーヂィ】に狙いをつけさせないようにしていく。
だが、俺がこの状況で出来るのは回避までだ。
本体の攻撃は任せたぞ……
「言われなくても分かってるわwww
お前に言われなくとも、ここで大盤振る舞いしてやるぞwww
もう一回行くぞ、スキル【竜鱗図冊】っ!」
【風船飛行士】は少し前にabilityと同時に発動したはずのスキル【竜鱗図冊】を再度発動した。
先程は銀色の杯が現れたが、今回は……
【ブーメラン冒険者】や【短剣探険者】のようにチュートリアル武器に鱗が貼り付きはじめた。
白銀の竜鱗が生えはじめた風船に【風船飛行士】は手を加えていく。
「オレがやってる店知ってるだろ?
なら、オレが今やってることもわかるはずだろwww
バルーンアートだwww」
そういえば、こいつは新緑都市アネイブルでそんな店を出してたな。
【風船飛行士】が手を加えた風船は形を変えて、ある一体の生き物の形を形成していった。
そう、貼り付いた竜鱗に違わず竜の姿になっていたのだ。
そして、その上に乗る【風船飛行士】。
風船で出来た竜に乗り飛ぶ姿はまるで竜騎士のようだった。
「さてwww
オレの力見せてやんよwww」
面白いことしてますね。
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