258話 出撃!コラテラルダメージ!
さて、他のクランの動向を見守ったわけだが、俺たちはどう行動するか……
お前たちはどう動きたいとかあるか?
俺がそう問いかけると、【槌鍛治士】が口を開いた。
「ワシは【検証班長】から頼まれていることがあるから、後衛へ下がらせてもらうぞ!!
だが、必ず【包丁戦士】の力になってやることは保証してやろう!!!」
お前がやることに口を出すつもりは元々ないぞ。
基本的に何をやっても俺のメリットに繋がることしかやってないからな。
信頼して背中を任せるから頼んだぞ!
「了解だ!!!
ではお前たち、健闘を祈るぞ!!!」
そう言い残して、【槌鍛治士】は何を守っているのかよくわからなかった【検証班】のメンバーたちの集団のところへと駆け出していった。
で、残りのお前たちは?
「オレっちは先輩についていくッスよ!
ストックに飛べるスキルを入れてきたッスからね」
【バットシーフ】後輩は手でバットを握り、素振りをしながらそう答えた。
ヤル気満々だな。
「当然ッスよ!
だって本当の意味での初レイドバトル総力戦ッスからね!
初心者イベントは参加メンバーに縛りがあったり、レイドボスの仕様が違ったりしてたッスからこれが初めての本番ッス」
まあ、初心者イベントはレイドボスがバトルの切れ目で回復したりしなかったから物量でなんとか出来たが、このレイドバトルは全滅すれば回復を許してしまう。
その辺りの緊張感は違ってくるな。
大変だろうが、遅れずついてこいよ!
「了解ッス!」
最後はボマードちゃん。
俺はタンクトップから激しく主張してくる二房を揉みしだきながら、ボマードちゃんにもどうするのか問いかけた。
「あっ、ちょっ!
【包丁戦士】さんこんな大勢の前でっ!?
いや~、恥ずかしいですけどそういうとこも好きですよ!」
そんなことは聞いてないから早く言えっ!
俺は自らの断崖絶壁と比較して憤怒の気持ちに芽生えながら、返答を促した。
なんだこのけしからん巨乳は!
「あっ、そうですね……
私は【包丁戦士】さんみたいに羽を出せる【深淵細胞P】を持っていないのであのカラスと戦ってきます!
いや~、私の実力を他のプレイヤーたちに見せつけるいい機会ですから【包丁戦士】さんの分まで頑張ってきますよ~!」
そうして駆け出していったボマードちゃんは【トランポリン守兵】お嬢様と合流したようだ。
あそこでカラスを食い止めるつもりらしい。
さて、【バットシーフ】後輩!
俺たちは空へと行こうか!
「了解ッス!
ストックスロット3【風船飛行士】さんの風船飛行技術!」」
【バットシーフ】後輩は何処から取り出したのかわからない風船を手に持って、空へと浮かび上がり始めた。
……聞きたいことはあるが、俺もとりあえず飛ぶか。
スキル発動!【深淵顕現権限P】!
今回は予め生け贄になることを前提についてきてもらったモブプレイヤーたち10人が粒子に変わり俺の身体に取り込まれると、背中の骨が隆起し始め皮膚を突き破って外気に触れることとなった。
突き出た骨は翼の形になり勢いよく広がっている。
……まあ、右翼しかないし、骨ドラゴンみたいな、もろアンデッド系の翼なんだけどな。
生け贄になることを前提についてきてもらったモブプレイヤーたちは一時的に【コラテラルダメージ】のクランメンバーになってもらったので、本当はクランメンバー14人なんだが、すぐ消えることが決まっていたので一切触れてこなかった。
だって、さっきからこいつらだけで固まってお喋りしてたし……
前に見た侍の見た目をした初心者プレイヤーもいたりするけど。
こいつらは討伐時にもらえる称号を目的に俺に近づいてきた打算的なクラン【ハリネズミ】のメンバーたちだが、そのクランを解散させてきたようだ。
俺としても元々道中でモブプレイヤーたちを捕獲するつもりだったから、ちょうどいいと思ってその申し出を受け入れた。
あいつらは苦労せず称号を手に入れられるし、俺は【深淵顕現権限】を長時間維持できるというWin-Winの関係だから今回は外道とは言われないだろう。
「いや、それでも他のプレイヤーを生け贄に捧げるって行為が既に外道なんッスよね……」
それは穿った見方だろ?
今回は契約してたんだから、マシじゃないか?
「マシといえばマシッスけど、端から見たらどっちも同じッスよ!」
そういうものなのか……
まあ、俺は狂人と呼ばれようが、外道と呼ばれようがなんでも良くなってきているのでどうでもいいが……
それより、お前その浮遊技術と風船いつストックしたんだ?
「技術は昨日【風船飛行士】さんに会いに行ってストックさせてもらったッスよ!
あの人中々面倒見がいいッスね!」
そうなのか?
俺に対してはやけに突っかかってくるから全くそうは思えないが、掲示板で気さくにレスをし合っているから実はあっちが本当の【風船飛行士】の態度なのかもしれないな。
……で、その風船はその時にもらったのか?
「あっ、これッスか?
その時に手癖でついこっそり盗んじゃったッス!」
お前、そんなことをしていて俺に外道ってよく言えたよな……
まさか恩を即仇で返すとは……
こいつ、やっぱり悪質プレイヤーの才能があるな。
しかも天然物だ!
俺の見込んだ通りだな。
いや、劣化天子もかなり恩を仇で返してますよね……
後輩は先輩に似るとはこういうことですか……
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