255話 逆張りの達人
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
俺がログインした途端、脳内に無機質なアナウンスが流れ始めた。
【ワールドアナウンス】
【【トランポリン守兵】がエリア名称を確認しました】
【【堅牢剣山ソイングレスト】】
【【クシーリア=ドーヂィ】の特殊防御権限が1部解除されました】
おっ、とうとう岩山エリアの名前が判明したのか!
【堅牢剣山ソイングレスト】ね、なんだか物々しい名前だがカッコいい名前じゃないか。
特殊防御権限もあらかた解除できたし、これでようやく本格的にレイドボス攻略に挑めるってわけだ。
というわけで、【検証班長】のところに行くか。
攻略の手筈がどうなるのかはこの次元のブレインであるあいつに聞きに行くのか手っ取り早いからな。
というわけでやって来ました検証班のたまり場である【メッテルニヒ】!
新緑都市アネイブルにある樹木の建物を間借りしたこの場所は、アクセスが良く集まりやすい。
「とうとう朱雀レイドボス【クシーリア=ドーヂィ】の情報が全て開示されましたね。
もう一体のカラスレイドボスの情報はほぼ未開時ですから、今回は【クシーリア=ドーヂィ】の討伐をメインで行おうと思っています。
異論のある人はいるかな?」
【検証班長】が初っぱなから攻略の方針を皆に提案してきた。
まず一体先に討伐するっていうのは理にかなっているし、俺としては問題ないと思う。
こっちの戦力も分散させないといけなくなるから、どっちかを最低限抑えておけばいいっていうのは考え方によっては楽だ。
それに、RPGとかでも後衛にいる支援タイプや遠距離攻撃タイプの敵っていうのは優先的に倒さないと厄介になるから、最優先で撃破するっていうのがセオリーだ。
今回がそれに当てはまるかは不明だが、それはやってみるまで分からないから深く考えないでおこう。
「【ペグ忍者】もそれでいいと思うのら~!」
「ほう各個撃破ですか、大したものですね……」
検証班のメンバーは【検証班長】を盲信しているから、よっぽどのことがない限りはその方針に従うのは想定済みだ。
あと、他のトッププレイヤーたちだが……
「ワタクシは初めから【クシーリア=ドーヂィ】の討伐が目的でしたので問題ありませんわ!」
【トランポリン守兵】お嬢様はこう言ってくれると信じていた。
場の空気を読んで乱さない性格だからな。
さらに、元々南の岩山エリア……【堅牢剣山ソイングレスト】のトッププレイヤーで、どちらも攻略するつもりだろうから正直どっちから先でもいいと思っているんだろう。
だから今回は【検証班長】の意見に合わせた気がする。
たぶん、カラスの方を先に討伐しようって【検証班長】が言ったらそっちを優先していただろう。
このお嬢様はそんなことをやりそうな気がするぞ。
さて、ここまでは予定調和だが、最後に残った厄介なやつは……
「オレは全く情報がないカラスの方をヤるのがいいと思うんだがwww
上空の鳥に対応できるやつなんて少ないし、地上にいるカラスを全員で袋叩きにした方が効率がいいンゴwww
んんっwwwカラス討伐以外アリエナイwww」
やっぱりこうなったか。
他者に迎合する気質の【トランポリン守兵】お嬢様とは真逆の性格で、とにかく逆張りしてくるのがこの【風船飛行士】だ。
間違いなく一人だけ別の意見を出してくると思ったぞ……
だが、意外に効率厨なこいつがわざわざ逆張りしてくるだけあって、その意見自体には一理ある。
上空にいるあいつに攻撃を当てることができるやつって、この同盟の中でも数はそこまでいないからな。
いくら情報を開示していても手数が少ないと効率が悪いっていうのは分からなくもない。
「ふふふ、もちろんそれをボクが考慮していないとでも?
それを踏まえた上で【クシーリア=ドーヂィ】を優先したほうがいいって言っているんだよ?」
いつにもなく【検証班長】は強気だな。
このゲームでここまでおおっぴらに反対意見を出されることって無かっただろから、その反動かもしれない。
「なんでそっちを優先したほうがいいんだよwww
お前ら攻撃できないじゃんwww」
「裏で準備していた秘策が完成しました。
この秘策を持って上空で移動砲台になっている【クシーリア=ドーヂィ】を打倒するのさ!」
「……嘘は言ってないようだな。
それならその祭に乗ってやろうじゃんwww
スレ民が一番好きなのは勝ち目のある祭だからなwww」
【検証班長】の明らかに自信のある口調と、真面目な表情に何かを感じたのか【風船飛行士】は乗り気になってくれたようだ。
こいつがまたいつ気まぐれを起こすかわからないから、早く作戦を実行したいが……
「そうですね。
というわけで、方針も決まったようだから次は作戦開始日だけど……
明日の早朝7時から実行しようと思う。
全クラン、総員結集して挑んでくださいね?」
それからも作戦会議が続いていき、しばらくした後俺たちはログアウトして決戦に備えて睡眠をとることにした……
いよいよですね!
さて、秘策とやらが通用するのか見物ですね……
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