254話 生産鳥
「報告はこれくらいでおじゃるな?」
そうだな。
流石にこれ以上の情報は持ち帰ることが出来なかった。
そもそも、一回しか行ってないし、調査時間のほとんどが脱け殻集めで消え去ったから調べるってこと自体はほとんどやってないんだよなぁ。
「まあ、谷底に大ムカデがいるとわかっただけでも充分収穫があったでおじゃる。
ギリギリ及第点で、調査依頼は成功にするでおじゃる!」
助かるなぁ。
流石深淵種族に傾倒しつつある聖獣だ。
話がわかるようでなによりだな。
【ワールドアナウンス】
【【ユニーククエスト 瘴気の谷の調査】clear!】
【【堅牢山の炎帝鳥】の役職が明かされました】
「【クシーリア=ドーヂィ】の役職は【クラフトマイスター】でおじゃる」
クラフトマイスター?
ウプシロンがクランリーダーだったり、竜人ロリがギルドマスターだったりするあれか。
クランメンバーを呼び出したり、ギルドシステムを構築したりとそれぞれやりたい放題していたが、この役職がシステムに介入できるものなんだろうか。
「とりあえずその認識でいいでおじゃるよ。
じゃが、そう好き勝手できるわけではないでおじゃる。
あくまでも規定の枠内での自由しかないでおじゃるよ」
流石に無制限はないと思ってた。
だって、役職の名前がそれぞれ違う時点で出来ることが限定されているってことだからな。
【クラフトマイスター】って役職はクラフトって言ってるくらいだから生産関係のやつかな?
「生産……生産……?
あれを生産活動と言っていいのか妾としては非常に悩むでおじゃるが、的外れでもないでおじゃるな……」
ん?
なんだか気になる言い方だが、合ってはいたようだな。
あの鳥の姿で生産活動をするのは想像もつかないが……
それで、クラフトマイスターのクランリーダーやギルドマスターみたいな特殊な権限ってどんなやつなんだ?
「それは……うぬぅ……
明言するのは控えるが、底辺種族からすればインチキのように見えるかもしれないものでおじゃる」
ちっ、流石に教えてくれなかったか。
そのヒントだけじゃ何が起こるのかは事前に対策できないぞ……
「全て事前に知っていたら楽しみが無くなるでおじゃるよ!
……実際は、妾にそれを話すことができる権限がないだけでおじゃるが……
妾から出せる【クシーリア=ドーヂィ】関係のユニーククエストはとりあえずこれで打ち止めと思って欲しいでおじゃる」
まあ、少しでもステータス情報を開示できたし助かったぞ。
ついでにデカブツムカデを見つけたり、八卦深淵板みたいな盾も見つけたし。
「!?
ちょっと待つでおじゃる!?
八卦深淵板のような盾じゃと!?」
いや、驚きすぎだろ。
というか話してなかったか?
「大ムカデについてしか聞いてなかったでおじゃるよ!?」
あっ、完全に話した気になってたわ。
どうもあのデカブツムカデのインパクトが強すぎて忘れちゃうんだよな……
「まさか【失伝秘具】がしれっと見つかっておるとは思わなかったでおじゃる……」
あれも【失伝秘具】なのか。
「いや、直接見たわけじゃないから憶測でおじゃるが……
そもそも八卦深淵板が盾ということ自体聞いたことがないでおじゃるから、別物の可能性もあるでおじゃる」
似て非なるものってやつね。
偽物か、別物かすら分からないが深淵に関する能力を持ってそうな感じだったしただの飾りではないと思うな。
「その可能性は高いでおじゃる」
……待てよ、八卦深淵板と似た性能だったらボマードちゃんはあれが出来るんじゃないか!
今までどうしようもなくて断念していたが、あれが出来るようになるなら面白いことになるかもしれない。
一種の寂しさのようなものを感じなくもないが、ボマードちゃんパワーアップの可能性をみすみす見逃すのは勿体無さすぎる。
クラン対抗のイベントも近づいているようだし、戦闘要員を増やせるようになるかもしれない。
ただ、どっちにするかだよな。
両方って選択肢もなきにしもあらずだが、あの頭お花畑に両方こなせる器量があるとは思えないしどっちがいいか聞くだけ聞いてやるか。
「何やら良からぬことを考えているでおじゃるな?
顔に不気味な笑みが貼り付いているでおじゃるよ……」
天使のような慈悲に溢れた笑顔って言え!
思いやりの精神満載だぞ!
実際、他人の戦力アップについて考えていたわけだし。
なお、どう誘導しようかって根回しはしようとしていたが……
俺としてはあっちの方がいいと思うし、あっちにするように言葉巧みに意思をねじ曲げてやるつもりだ。
「うわっ、それはどう考えても慈悲に溢れていないでおじゃるよ……
やはり悪どいことを考えていたでおじゃるな!」
だから、人聞きの悪いことを言うなって……
それは事実ですから……
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