249話 壁画爆破!
さて、無事(?)に谷底まで降りてこれたが、これはまた異様なところだな……
谷の上の方で立ち込めていた黒い霧がさらに濃度が濃くなっている。
つまりあれの発生源がこの辺りにあるってことだな。
てっきり上の方から降りてきているのかと思っていたが、あてが外れてしまったようだ。
この状況を見れば、ここから上に上がっていっているのがよくわかるからな。
「ううっ、霧が濃くて苦しいですね……
いや~、ガスか何かですか!?」
苦しい……?
そんなことないと思うが……
現に俺は普段通りに行動できてるし、呼吸も出来てる。
「ええっ……なんでですか!?
いや~、もしかして【包丁戦士】さんって実は人間じゃないってことないですか?」
は?
何を疑ってるんだ。
俺はれっきとしたにんげ……ん?
いや、待てよ。
リアルだとたしかに俺は人間だが、このプレイヤーに人権のないゲームではどうだろうか。
……俺は人間じゃないな。
そう、深淵天子に種族転生している。
もしや、深淵種族の性質を取り入れた種族だから黒い霧の影響がないのかもしれない。
「やっぱりそうなんじゃないですか!?
いや~、私も種族転生したいですね……」
まあ、そうと決まったわけじゃない。
俺とお前だと深度も違うからな。
一定の深度に達成してないと来れない、苦しくなるみたいな制限があるのかもしれないぞ。
多分だが、【トランポリン守兵】お嬢様がここに降りてこようとしたら、深淵奈落に落ちるときみたいに弾かれてたかもしれない。
その点、このボマードちゃんは苦しいだけで済んでいるからギリギリ合格点みたいな感じなのかな。
……あくまでも推測だが。
「【検証班長】さんと検証しているからなんですかね?
いや~、【包丁戦士】さんも検証班みたいになってきてますよ!」
いや、お前も密かに色々と手伝ってもらったりしてるの知ってるからな?
俺とお前でほぼ同じような環境にいたはずだが、お前はあんまり変わってないぞ……
「いや~、つまり素の私がベストってことですよね!」
そんなこと言ってないんだが……
本当に頭お花畑だな……
……と、無駄口はこれくらいにして先に進むか。
この谷底もそれなりに広さはあるっぽいから、歩き回らないと全容は見えなさそうだ。
「その前に試したいことがあるんですよ!
いや~、さっき砂に埋もれたときに更に底の方で何か見えたんですよ!
というわけで、爆弾ばらまきますよ!
はい!はい!はい!はい!」
おいおいおい、急におっぱじめるな!
ボマードちゃんは、【槌鍛治士】が作ったと思われるリュックからドングリ型の爆弾を次々に取り出して地面に投げ始めた。
爆弾が1つ弾けるごとに砂が周囲に拡散していき、爆弾が落ちたところだけ砂が減っていっている。
だが、自動で修復する機能があるのか、砂が少しずつ元の場所に戻ろうと蠢いている。
爆発と修復、少しずつであるが爆発の方に分があるらしく底へと近づいていっている。
そして、底には見覚えのある装飾の壁が広がっていた。
荘厳な雰囲気と豊かな彩飾が見るものを惹き付ける中毒性のある様式で、メキシコにあるカカシュトラ遺跡の壁画を思い出させる感じに変わっている。
これは、もしや……
【失伝秘具】八卦深淵板か!
俺が【誓言の歪曲迷宮】の10階層で手に入れたやつにそっくりだ。
「これは面白い模様の盾ですね!
いや~、RPGでありがちな隠しアイテムみたいなものっぽいですね!」
えっ、盾?
よく見てみると、模様は八卦深淵板と同じだが大きさはマンホールくらいの大きさで収まっていた。
「うわわっ、砂が戻ってきてますよ!?
いや~、自力で戻れそうにないので助けてくださ~い!」
とりあえず、盾を手に取ったボマードちゃんを自動修復する砂山から再度引きずり出した。
そして、まじまじと盾を観察するがやはり模様がそっくりだ。
だが、盾の形状をしているから八卦深淵板とは別物なんだろう。
あっ、そういえばよくもまあその盾持てたな?
デバフボディーで持てるとは思えなかったが……
「これ実は凄く軽いんですよ!
いや~、驚きましたね~!
見てください、こんなに振り回せますよ!」
ボマードちゃんがお気楽そうにマンホールと同じくらいの大きさの盾を振り回している。
楽しそうで何よりだが、不思議なこともあるもんだな。
ファンタジー特有の特殊素材で出来た盾なんだろうか。
気になるところだが、俺が調べても分からないのは確定しているから一旦置いておくとしてさっさと先に進むぞ。
その盾はお前にやるから、きびきび歩け!
「いや~、やっぱり【包丁戦士】さんって私に厳しくないですか!?」
そんなことないぞ!
お前が走ると目に入る、揺れる2つのそれが羨ましいとかそういうのではない。
羨ましかったり、羨ましくなかったりする……
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