246話 狐耳のお願い
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は山間部エリアにいる狐耳ロリ陰陽師のレイドボス【タウラノ】にちょっかい出しにいくか。
ちょっと前に式神を使っちゃったから、その補充も兼ねてだな。
「お主、ここに再び戻ってくるの早すぎるでおじゃる!」
断崖絶壁と黒い霧を乗り越えてやってくると、黒い衣の【タウラノ】にお出迎えされた。
今回は準備がいいな?
「エリアの外枠を一周するように張ってある結界が、侵入者を察知してくれるからでおじゃる。
妾の戦闘力は他のレイドボスと比べると低いから、こうやって警戒しているのでおじゃるよ」
下克上とか狙ってる割には小心者だよな?
無警戒よりはいいんだろうが、そんなに気を張っていても疲れるだけじゃないのか?
ずっとスキルを行使しているようなものだろ?
俺は素直に心配だったのでその辺について聞いてみることにした。
俺の言葉に対して、意外そうな表情を浮かべたあと、【タウラノ】は無邪気な笑顔を浮かべながら口を開いた。
「お主が心配してくれるとは驚きでおじゃるな!
じゃが、安心するでおじゃる。
妾の陰陽師としての力で、同系統のスキルなら無意識に発動し続けることが可能なのでおじゃる。
普段弱いと自虐しておる妾じゃが、補助スキルの扱いには自信があるでおじゃるからな!」
直接的な戦闘力が低い分、その辺りは優遇されているってわけか。
でも、あのレイドバトルのときは1つずつしか使ってなかったよな。
「それは前に説明したでおじゃろう!
式神では妾の格に耐えきれず、力を出しすぎると自壊するのでおじゃる」
……ああ、そんなこと言ってたような気がする。
すっかり忘れてたが。
あっ、それで思い出したけど式神使っちゃったからまたくれよな。
「駄賃代わりに式神を貰いにくるとは、呆れたでおじゃる……
ほい、持っていくがよいでおじゃる」
サンキュー!
これがあると無いとではレイドバトルでの立ち回りが変わってくるからな……
いやー、本当に補充できるもので良かった……
バフ、デバフ、回復をやってくれるサポートプレイヤーなんてこの次元には存在しないから、レイドボスに頼らざるを得ないのだ。
流石プレイヤーに人権のないゲーム……どこまで他力本願という情けなさだ。
「そうじゃ、【クシーリア】のことでまだ分かってないことは何かあるでおじゃるか?」
……種族とかはもう判明してたな。
あと、名前は俺が明かしたし。
ということは、役職、ジョブ的なあれだな。
ウプシロンはクランリーダーだったし、同じ聖獣なら何かしらそれに準ずるものを持っているだろう。
「なるほど、そこが分かれば決戦に挑めそうでおじゃるな。
それなら、こういうのはどうでおじゃるか?」
【個人アナウンス】
【【ユニーククエスト 瘴気の谷の調査】を受注しました】
【運営からの忠告】
【このクエストは失敗しても失うものはありませんが、成功することによって特別な報酬が与えられることがあります。】
【ユニーククエストは達成する前に状況の変化によって、クエストそのものが消失している場合もあります。
他の次元では発生しないことも考えられますので、この機会に世界を変えていきましょう!】
ん?
「お主が入ってきた境界には何故か黒い瘴気が立ち込めているのでおじゃる。
どうやら、あの谷底から出ているようでおじゃるが、聖獣である妾では深淵種族を察知する結界の起動に役立てるくらいしか利用方法がないでおじゃる。
変に近づくと汚染されそう……というわけで、お主に調査を依頼したいでおじゃる。
報酬は【クシーリア】のジョブについての情報、というのはどうでおじゃる?
破格の報酬じゃろう?」
くっ、自分の利益のために同僚を売ったなこいつ……
そもそも同僚を倒そうとしている時点で狂ってるんだろうが……
ともかく、あの断崖絶壁を下って谷底を調査しないといけないらしい。
まあ、でもせっかくのユニーククエストだ。
精々利用されてやるとしようじゃないか、このゲームはプレイヤーがレイドボスにコキを使われてようやく攻略が進むんだ……妥協くらいしてやるさ。
これはプレイヤーに人権のないゲーム……
【Bottom Down-Online Now loading……】




