240話 猟奇的熱量
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は【クシーリア=ドーヂィ】にこっぴどくやられてしまったな……
あの炭化状態攻撃が思ったよりも強すぎるな……
攻撃を喰らってから死に至るまで時間に猶予があるのがまだ良心的だが……
ジェーの極太レーザーは瞬殺だったから、そうなんだが、でもあの瞬間移動紛いのスピードは反則だろ!
……【風船飛行士】の対応を見ると、行動パターンが事前の予備動作で判断できるっぽいから何度か挑戦して慣れていくしかないな。
だが、そんな【風船飛行士】ですら炭化状態にはなっていた。
あの不思議アイテムのファンタジーガスで凌いでいたってことは、パターンが読めても程度を下げることしか出来ないっぽい?
俺の手持ちスキルとかアイテムとかうまく使って対応できたらいいんだがな……状態異常回復アイテムって持ってた記憶がないけど。
そもそもの話、前提としてちょっと炎耐性が無さすぎるのが問題な気がするな?
【風船飛行士】と比較しても明らかに身体が炭になるスピードが違ったから、貧弱さが露呈してしまった形だ。
逆に言ってしまうのなら、炎での攻撃の影響でああなるってことは耐性を上げまくれば状態異常だけなら防げるかもしれないよな。
そうなれば、あれとあれとあれを集めて出掛けるか!
というわけでやって来ました草原エリア……にある鍛治場だ。
ここに俺の目当ての人物がいるから、会いに来たって訳だな。
熱気溢れる鍛治場を進んでいくと、俺の前に巨大なやつが現れた。
筋肉隆々でむさ苦しい見た目をしているこいつは、もはや見慣れたものだ。
「おっ!!!
【包丁戦士】か、こんな時間に来るとは珍しいな!!!」
俺の前にいるガチムチおっさんは【槌鍛治士】、俺の一心同体とも言える相棒だ。
この時間に来たのは、どうしても早めに作って欲しい装備があるからだ。
装備周りのことで俺が一番信頼しているのはお前だからな、お前が確実にログインしている時間帯を狙ってきたってわけだ。
俺と【槌鍛治士】はこのゲームのサービス開始直後からの仲だから、お互いのメインログイン時間帯は把握しあっている。
相棒っていっても、活動時間が丸かぶりしていたわけじゃないが俺が戦闘に行ってこいつが装備を作る関係上、極論を言ってしまうと活動時間が少しでも被れば協力しあえていたのだ。
そういう意味でもお互いに都合が良かったのかもしれない。
何せ、俺がログインしていない時間に装備を作っていてくれているのだから。
【槌鍛治士】としても、ジェーを討伐する前だった当時の新緑都市アネイブルで素材を集めてこれるプレイヤーは限られていたからWin-Winだったと思う。
「確かにそうだったな!!!
あの頃は素材不足が深刻で、最低限設備を作るだけでも1ヶ月かかったからな!!!
新緑都市アネイブルで鉄材を集めてきてもらわなかったら、ワシは何も出来てなかったぞ!!!!」
そこまで卑下することはないだろ?
無いなら無いなりにはじめは頑張ってたじゃないか。
……でも、設備ができてからのほうが活躍してたのもまだ事実だがな。
あれから俺以外からの受注もかなり入るようになったらしいし、頑張って集めていた甲斐があったってもんだ。
「昔の話に花を咲かせるのも悪くないが、お前はそのためだけに来たわけじゃないだろう!!!
それでどんな装備を作って欲しいのだ!?!?!?」
あー、今度岩山エリアのレイドボスに挑むじゃん?
あそこの朱雀レイドボス【クシーリア=ドーヂィ】の炎攻撃が悪質過ぎるから、炎耐性つくものを作って欲しくてな。
炎耐性がつくなら最低限どんな装備でも、どんな見た目でも気にしないことにしている。
お前の都合のいいように作ってくれたらいいぞ、その辺りは信頼してるから任せるわ。
「それは任せられたが……お前のことだ、ある程度素材の目処はついているのだろう!?!?!?」
愚問だな。
ほれ、この辺りなら使えるんじゃないか?
俺は次元戦争中に【釣竿剣士】に釣ってもらった溶岩魚、見知らぬ誰かが宝物庫に入れていた大暑サボテン、次元戦争で蛇腹剣次元の生産プレイヤーであるマックスに作ってもらった炎耐性のあるアクセサリー、その他諸々を渡した。
「このアクセサリーは前も見せてもらったが???」
ああ、最悪分解とかしてもらっていいぞ!
他の次元の素材とかも組み込まれてそうだし、使えそうならその辺を活用してやってくれ。
お前のことだから、何だかんだ有効活用してくれるだろうからな。
これが使えなくなっても気にしないぞ。
「そう言ってもらえると仕事がやり易くなって助かるぞ!!!
やはりお前はワシのことをよくわかっておるな!!!」
伊達に付き合いが長くないからな。
俺は包丁を【槌鍛治士】の首に突き刺しながらそう言った。
【槌鍛治士】の首もとからたれるように流れていく光の粒子は、やはり見ていて綺麗だ。
近くにいると心が洗われるような気がしてくるし、定期的にキルしたくなるってわけだ……
俺は死に戻りしていく【槌鍛治士】を横目に、頬に両手を当て、顔に残った熱を感じながら惚けていた。
猟奇的というか、芸術的というか……
どっちとも言う……
【Bottom Down-Online Now loading……】




