2379話 最最前線
「【包丁戦士】様、さっそくポイント1に触手が到達します!
打ち合わせの通り対応をお願いしますね!」
【エラ=サンドレラ】からさっそく指示が飛んできた。
まだ【カニタマ】の触手の動きは視認できていないのだが、【エラ=サンドレラ】には超能力や異能力にも匹敵するほどの敏感な、臭いに関するVR感覚を保有している。
それで臭いの揺れを察知して動きを予測しているんだ。
相手が悪臭じゃないとここまでは出来ないみたいだが、ことこの場においては半分未来予知のようなことをやってのけていると認識しておくくらいでいいだろう。
というわけで俺は包丁を構えて迎撃体制を取っておく。
さっきまでと違い俺自身が触手を撃破しようとする必要もないから、幾分か気持ちが楽だな!
……そうして俺に迫ってきた触手を包丁の腹を使って受け流していく。
攻撃を意識せず、あくまでも目の前に迫ってきた触手だけを往なす……それに集中力の全てを注いでいくわけだ。
本来なら広範囲に広げている俺の気配察知だが、今この時ばかりは範囲を俺の周辺だけに凝縮している。
何せ広範囲の警戒は俺と同格レベルの探知を【エラ=サンドレラ】がしてくれているわけだからな!
俺もその範囲に被せて探る必要もない。
なら、俺の役割である触手を受け流すことに専念するために周囲だけの感覚をさらに敏感にしておくのが賢明だ!
今の俺の感覚は3000倍だな!(根拠不明)
「新しく人員が入れ替わったので私が再度通達します。
【カニタマ】の触手でダメージを受けると、その部分は回復不可能な欠損をさせられてしまいます。
避けること自体は難しくありませんが、攻撃している最中にやられてしまう例が後をたちません!
欲をかかずに確実に、堅実に攻めていきましょう!
そう、おじ様……【ロイス=キャメル】様のように!」
人員が入れ替わったタイミングで再度アナウンスを出し直したか。
これも十中八九【ロイス=キャメル】による指導の賜物だろうな。
後から来て重要な情報を知らないまま死んでいった連中がいるんだろう。
それを活かした教訓……に違いない!
そして、ことあるごとに【ロイス=キャメル】の名前を宣伝していくな!?
ここにいる連中は嫌でも知ってるからわざわざ今の指示で名前を出す必要は無かっただろ……
この部分は絶対【エラ=サンドレラ】の私欲だな!
欲をかかないようにという指示なのに本人が欲を丸出しにしてどうするんだよ……
そんな【エラ=サンドレラ】の指示もあってか、少しだけ緩みはじめていた戦線の雰囲気が再度引き締められたのを感じた。
【カニタマ】による攻撃への回避反応が緩慢になりかけていたのが、シャープなものになっていったからな!
同じ回避行動をし続ければ当たらないはずの攻撃も何故か時間が経つにつれて当たるやつが増えていくのは、悪い意味での慣れが発生してしまうからだ。
「これくらいなら当たらないだろう」、「なんとなくこれくらいかな」と言った認識の甘えが生まれてくるからな。
そういう感覚は当然俺にも生まれてくるわけだが、命のやり取りの最中で最低限のラインは知っているからその下限を切ることはしない。
トレジャーハンターとしての直感とも言えるな!
……だが、その辺にいるモブプレイヤーたちはそうもいかない。
他からの刺激が無ければ勝手に死に行くだけだ。
「というか【包丁戦士】のパリィやばくね?」
「俺たちは避けるしかないのに、なんであいつだけ最前線で防御し続けられるんだよ……」
「しかも無傷だぞ!?」
「やべぇな……」
「お陰でさっきよりも避けないといけない頻度が減ってる!」
「だな、攻撃に時間を使えるのはありがてぇ……!」
流石に俺がずっと一番前にいるからか、回避と攻撃をしているモブプレイヤーたちの目にも俺の姿が嫌でも映るらしい。
こりゃ、俺の華麗なる受け流しを見て惚れるやつが出てきてもおかしくないな笑
いや~、困るな~(棒読み)
……それはさておき、モブプレイヤーたちが言っているように俺が触手を引き受けていることでさっきまでよりも負担が減ったのもあって攻撃にリソースを回せるようになったようだ。
指示者からの視点ではなく、現場視点で分かりやすくそう見えるのなら影響力はそこそこあったと自負してもいいな!
お前ら、俺にもっと感謝しろよな!
いいところを見せたかと思えばすぐにこれとは……
全く、これだから劣化天子は……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




