2377話 ゲリラー
【カニタマ】の黒い触手に追いかけられ続けている俺だったが、横目に魔海城船アンサンセ内の戦況を見てみるとそこまで悪くない感じだった。
やはり俺が多めに触手引き受けているのが功を奏しているのか、聞こえてくる【エラ=サンドレラ】の回避指示の頻度や量もこれまでより少なめに思えるな。
まぁ、俺も飛び回りながらだから全部聞こえているわけじゃないし、ただの気のせいと言われたらそれまでなんだが……
周辺の戦況はそんな感じとして、俺だけアクロバットな横スクロールアクションを繰り返していく。
飛行することに慣れている俺じゃなかったら酔うこと間違いなしの挙動で動かないと回避できないし、俺も耐性があるとはいえそろそら楽になりたいぞ!
……だが、待てども待てども助けが来る様子もないし、そもそも期待しても無駄とは分かっているのでガッカリはしていない。
……していないんだが、助けて欲しい気持ちはあるんだぞ!?
仕方ない、そろそろ何かスキルを切るか!
スキル発動!【波状風流】!
俺は風のスプリンクラーを背後に設置し、そこから見えざる風の刃を発生させていった!
今の俺は竜人にかなり寄った状態だからな、【天元顕現権限】を使っていなくても【波状風流】だけは本家本元仕様に近い性能で使えるわけだ!
この風の刃で俺を追ってくる【カニタマ】の黒い触手を直接狙ってみるが……
【そのような力の籠っておらぬ攻撃など効かぬわ】
【当方との力の差を理解しておらぬのか?】
【それであれば哀れという他あるまい】
【冒険者とはそのような在り方であったと当方のメモリに刻み込むのみよ】
【カニタマ】には全く効かず、刃は弾かれてしまった。
あれは疑似パリィのようなものだな!?
レイドボス側がパリィしてくるのはえぐいって!
攻撃が全く通らなくなるだろ!?
多分だが、これらの触手は俺だけを標的にしているから他のところにいる触手と違って対応力が異様に高いんだろうな。
それに、【カニタマ】に一番近いところにいた俺相手のものだから、操作しやすい触手……というか利き手ならぬ利き触手なのかもしれない。
この辺は俺の推測だから合ってる確証はないが、これまでの演習にて甲板上で戦っていた触手たちよりも明らかに動きが精細だからな!
特別な状態なのは間違いない!
……だったら、触手じゃなくて別のところを狙っていくか!
そうして、俺は【カニタマ】本体へと急接近していき、風の刃をぶつけていく。
この行動は【上位権限】AIでも予測できなかったのか反応が遅れてしまっていて俺の急襲を許してしまっていた。
ざまーみろ!
【急接近には驚いたが、対応できないほどではない】
【当方のことを甘く見ておるな?】
【それは笑止千万!】
【この行動が命取りになると知れ!】
【カニタマ】は触手を急速に身体付近まで戻していき、再びパリィで風の刃を防いでいった。
……ちっ、大人しく食らってくれていたら俺の気分が晴れたものを!
姑息なパリィだ……(自分のことを棚に上げながら)
だが、これで目的達成だ!
撤収!
俺はそこから急旋回していき、再度一気にバックしていく。
【なっ、そのようなことを考えておったのか……!?】
【当方が出し抜かれるなどあってはならぬ!】
【待つのだ……!】
【カニタマ】は再度不意を突かれてしまったこともあり、さっきよりもさらに反応が遅れてしまったようだ。
その影響もあってか俺を追ってくるはずの触手が全く追いつけていない。
へっ、どんなもんだ!
曲芸をやらせたらMVPプレイヤー随一と呼ばれた俺の戦術は味わい深かっただろ?
【姑息な真似を……】
【カニタマ】の怨嗟とも思える声を聞きながら俺は【エラ=サンドレラ】たちのいる方へと向かっていく。
ここまで来ると追いつかないとを悟ったのか、俺を追いかけてくる黒い触手たちは撤退して【カニタマ】本体の守りを固める本来の場所へと戻り始めていった。
……よしよし、うまく撒いたな!
これで俺一人だけで戦力の抱え落ちする危険を脱したわけだ。
いや、本当に肝を冷やしたぞ……
あそこまで過剰反応してくるなんて思わなかったからなぁ……
誰であれ、世界剣種を刺されるのは嫌ですからね。
当然の反応でしょう。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




