2365話 狼少年の優しい嘘
ボマードちゃんによって超絶強化された俺が放った茨が、【ロイス=キャメル】と【シャルル=ホルムズ】を縛り続けている。
脱出しようともがいているようだが、強度を増した俺の茨はそう簡単に破れるものじゃないぞ!
「このままキャメルちゃんたちが茨に縛られたままなのはまずいね♪
大罪スキル発動♪【色欲月斬】♪」
【ロイス=キャメル】がまず試したのは大罪の力を使った斬撃だな。
【ロイス=キャメル】の大罪スキルはたまーにトリッキーなものもあるが、基本的にはシンプルな攻撃や自己強化に関するものが多い。
本人が特別な能力を特段欲していないからこそ、スキルとして身についたのも戦闘補助になるシンプルなものになったのだろう。
今回のような斬撃もその一例だな!
普通にくらったら大ダメージを受けてしまうような攻撃だが、それをモロに受けた俺の茨は……
「先生!
茨が切れてません!
見た目以上にこの茨は頑丈みたいです……
これだけ頑丈ならぼくの身体でいくらもがいたところで脱出は出来ないですから、別の手段を試さないとですね。
……スキル発動!【狼藉風圧】!」
【シャルル=ホルムズ】は多少動いたところでどうにもならないということを悟ったのか、【ロイス=キャメル】同様にスキルという手段で脱出を試みはじめたようだ。
パイプを振り回し、そこから風圧の衝撃波を発生させることで攻撃しているようだ。
【ロイス=キャメル】が試した斬撃がダメだったから別のアプローチをして突破を試みたのだろう。
攻撃の種類を散らして試すのは基本だが、それをちゃんとやっている辺りゲームにきっちり適応している証拠だ。
【ロイス=キャメル】の現実に基づいた戦闘理論を自分なりに解釈して、それをゲーム内で最適化しているのが素質を表している。
……まぁ、それでも破られないけどな!
「私と【包丁戦士】さんの愛の結晶の力思い知りましたか!
いや~、自分で言っておいてあれですけど他の次元のMVPプレイヤーと上位のプレイヤー相手に一方的に通用する力って凄くないですか!?
私って実は最強なのでは!?」
……頭お花畑、と言ってやりたいが今回に関してはボマードちゃんの自認はそれほど間違っていない。
実際、【修練防具上位解放】と【修練武器上位解放】を両立させられていることは全プレイヤーと比較しても上位に位置するくらいのギミック持ちプレイヤーと断定できるくらいだ。
俺だって【修練武器上位解放】も【修練防具上位解放】どちらも出来ていないし、他のMVPプレイヤーすらもほとんど習得できていない。
【マキ】はその中でも異端児だから気にしないようにしておこう……
というわけで相手が縛られているうちに一人だけでも仕留めておくか!
スキル発動!【深淵煉獄】!
俺はこの絶好の機会を逃さないために攻撃力に定評のある深淵スキル【深淵煉獄】を発動させた。
黒炎を放ち二人を燃やし尽くそうとしていった!
【深淵煉獄】は深淵の竜帝王【エルラシア=ガルザヴォーク】が愛用している深淵スキルだ。
竜系レイドボスの使うスキルはだいたい燃費が悪い代わりに威力が高い!
ボマードちゃんというバックアップがある今だからこそ必殺の一撃として使うにふさわしいスキルだろうよ!
「うっ、避けられないよ♪
このまま負けちゃうのは嫌なのに、対策がないかな♪」
【ロイス=キャメル】の手札では避けられないようだ。
このまま大人しく倒させてもらうぞっ!
俺がそう意気込んでいた中……
「先生はこんなところで負けさせません!
ぼくが、この身を使って状況を打破します!
……先生、あとは頼みました!」
「シャルル……まさかあれをっ!?
やめなさい!」
【ロイス=キャメル】は【シャルル=ホルムズ】がやろうとしていることを察したのか、ロールプレイを止めてまでも制止しようとしていた。
そこまで危険そうな手札を残していたのか!?
「これが、ぼくの最後の手札です!
【失伝秘具(童話礼装)】ー【嘘の罪ー牧狼】!」
【シャルル=ホルムズ】はそう宣言して【失伝秘具】を起動させたようだ。
このタイミング、【失伝秘具】でどうにか出来るものなのか……?
そう思っていたが、次の瞬間……
「馬鹿な弟子だよ。
だが、それが愛らしい。
そんな愛らしい弟子の作ったチャンスはみすみす逃さないさ」
ロールプレイをしていない口調のまま、【ロイス=キャメル】が俺の後方……いや、ボマードちゃんの方へと現れてそのままボマードちゃんの頭をステッキで殴り潰していってしまった。
当然ボマードちゃんは死に戻りしたが……
なぜいきなり後ろに!?
トリックですね。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




