2361話 無言連携の裏技
俺とボマードちゃん、【ロイス=キャメル】と【シャルル=ホルムズ】というペア同士の戦いが繰り広げられてはじめたわけだが……
「ヒットアンドアウェイの状況が続いてしまっていますね……
お互いに決定的なダメージも入らなくなったのは、【包丁戦士】さんが【ペグ忍者】さんよりも回避や防御が上手いということでしょうか?」
【シャルル=ホルムズ】は現状把握のためか【ロイス=キャメル】へそう質問していた。
こういう状況でも……いや、こういう状況だからこそ勉強のために質問を欠かさないんだろうな。
機会を逃さず自分の判断の糧にしたいのだろうよ。
「確かに【包丁戦士】お嬢さんの回避や防御が上手いというのは間違いあるまい。
だが、そのような簡単な表現だけでは状況を見誤る可能性がある。
詳細を言語化する癖をつけておくべきと以前も教えたはずだ、それを実践してみたまえ」
「先生、失礼しました!
素早さでは【ペグ忍者】さんの方が数段上でしたが、これ以上に【包丁戦士】さんに攻撃を対応されてしまっています。
身体スペックで劣るのにこの結果が起きているのは……【包丁戦士】さんの気配察知による危機管理能力の高さが要因だとぼくは考えています。
先生はどうお考えですか?」
おいおい、わざわざ俺たちの目の前で分析をはじめようというのか!
俺は一向に構わないが、それで戦闘が疎かになっていつの間にか負けていても知らないぞ?
「お嬢さんに心配されるとは私の株も落ちたものだ。
あいにく、私もシャルルもこのような形での戦闘には慣れているのだよ。
分析しながら戦うことで致命的な隙を晒すことはあるまい。
……それはさておき、シャルルよ。
その推測は要素の一部分を切り取った正解でしかない。
私から見るに、口から発する言葉とは別の意志疎通が為されていてボマードお嬢さんと【包丁戦士】お嬢さんの連携に隙が生まれず、こちら側からの攻撃を事前に牽制していると見た。
仕草でも感じないが……あながち間違ってはいないはずさ」
【ロイス=キャメル】が持論を述べながら俺へとステッキを突き出してきた。
棒術のようなテクニカルな攻めが時折混ぜられてくるのでリーチの短い俺では攻め込みにくいぞ!?
…そして、確信は持たれていないが俺とボマードちゃん(【ジェーライト】)との連携のカラクリを見破られているな!?
そう、俺とボマードちゃん(【ジェーライト】)はスキル【渡月伝心】による思念メッセージを送り合うことで相手に分からないようにして攻撃タイミングや防御タイミングを合わせているのだ!
本来ならスキル発動後のデメリットがあるはずだが、【天元顕現権限】による補助もありメッセージ送付だけなら特に支障は無くなっているわけだ。
そして、俺はabilityのデメリットによりフレンドが解除され、新たにフレンドを増やせないのだが……
……例外がある!
俺には一心同体リストというものがあるのだ!
そこに名前を連ねていればメッセージを送ることが出来るのだが、【ジェーライト】はそのうちの一体となっている。
俺のことを「俺様の半身」と呼ぶのはそういう理由もあるってわけだ。
もちろん【ロイス=キャメル】にそんなことをこれまで一度も説明したことはないのでタネはバレていないみたいだが、理屈自体は想像されてしまっている。
対策を打たれないうちに俺たちからなにか仕掛けていきたいところだが……
(俺様の半身ヨォ……
イャ~、さっきよりも安定して戦えてるから負ける気はしないが、勝てる気もしないゾォ!
時間切れ狙っていいかヨォ?)
ボマードちゃん(【ジェーライト】)はこのまま無理に相手を倒しにいかずに勝てないかを模索しはじめたようだ。
まぁ、深淵種族ならそういう思考になるよな。
他の種族たちから陰湿と呼ばれ続けているだけあるなぁ!
とはいえ、このまま続けていて勝ち判定に出来るのかは微妙なところだ。
この場だけで見たら勝ち目もあるが、【ロイス=キャメル】の場合時間切れ対策に戦闘に参戦させないプレイヤーたちを何処かに潜ませていてもおかしくないからな。
だからこそ、こいつらをさっさと倒して掃討戦に持ち込みたいわけだ。
(めんどうだナァ!
イャ~、俺様がレイドボスとしての格で万全な状態ならこいつらなんかイチコロなんだがヨォ!)
それは言わないお約束だ。
俺たちに一度敗北したお前が悪いとしか言いようがないからな!
カッカッカッ、ジェーライトよ!
言われたい放題だのぅ……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




