236話 2体いるということ
ふはは!身体が軽いぞ!
喰らえ俺の十八番、袈裟斬りだ!
三本足カラスの左羽の付け根を狙って斬撃を放つ。
振り抜けこそしなかったが、ようやく肉を断つことが出来たぞ!
これはこのまま行けるんじゃないか!
狐耳ロリ陰陽師のスキルの援助を受けた俺は調子に乗っていた。
レイドボスになったときとか、深淵パーツをつけている時の方がもちろんスペックは高いが、素の身体でこれだけ動けるのは感激だ!
陰陽師ロリやるじゃないか!
「ふふん!
もっと妾を誉めても良いでおじゃるよ?」
狐耳ロリ陰陽師……【タウラノ】は無い胸を張りながら自信満々という様子だ。
そんな中でもスキルを操るのは止めていないのは流石レイドボスというところか。
さっきこいつが発動した【六根清浄急急如律令】というスキルだが、発動したやつはスキル効果維持のために力を送り続ける必要があるみたいだ。
これ、プレイヤーVS【タウラノ】戦で【タウラノ】が使って来ても全く脅威にならないスキルだよな。
だって、本人動けてないし……
流石は補助に特化したレイドボスということか。
「それは誉めてないでおじゃる!?」
「おそらくですが、【包丁戦士】様なりに誉めてますわよ……
不器用な方ですので」
「そうでおじゃるか……
釈然としないでおじゃる……」
おいお前たち、聞こえてるんだからな?
俺は三本足カラスの胸元を切りつけながら叫んだ。
包丁で切りつけて体勢が崩れたところを三本足カラスが見逃さずに、翼による振るい払いで俺を叩きつけようとしてきた。
だが、【六根清浄急急如律令】による五感の強化の影響下にあるからかその動きが目視できた。
これならかわせるっ!?
……わけでもなく、致命傷を避ける程度で身体を反らすことが精一杯だった。
うぐっ……岩肌に叩きつけられてしまったぞ……
やっぱり、こいつの動きは多少の身体バフでは対応しきれないな。
自分本位で動くときは攻撃を当てられるが、回避と攻撃を同時にやろうとすると無茶が出てくる。
「申し訳ございません、ワタクシがカバーに入れませんでしたわ……
あなた様の動きについていくのが精一杯で……」
まあ、ポリンお嬢様を責めても仕方ない。
気にしなくてもいいぞ!
……めっちゃ痛いけど。
「安心するでおじゃる!
ゆくのじゃ、【休息万命急急如律令】!」
狐耳ロリ陰陽師が新たな呪符を取り出し俺に向かって投げつけてきた。
必死になって投げてきたからか、体勢がブレブレだ。
もうちょっと優雅な感じで飛ばしてくれると絵的には映えるんだが……
飛んできた呪符が俺に貼り付くと、最初についていた【六根清浄急急如律令】の札が剥がれていき、代わりに身体が回復していくのを感じる。
これは癒されるぅ~、回復スキルっていいな!
今気づいたが、これはウプシロン攻略戦で男の娘プレイヤーの【ブーメラン冒険者】が使ってたスキルだ。
あの時はひたすら双子の姉の回復に使っていたが、元々はこの【タウラノ】のものだったな。
この回復力があれば確かにこれだけでも補助役としても充分に行ける気がする。
だが、【六根清浄急急如律令】の呪符が外れたのが気になるな……
「妾の今の状態だと1枚付与するのが限界でおじゃる!
本拠地なら何枚でも重ねていけるでおじゃるが……」
ってことは……回復かバフか選べってことだな。
俺は今回復中だから、バフを受けられないので癒えるまで後方待機……というより叩きつけられた岩肌に背を預けた状態のまま静観している。
「その間ワタクシが【タウラノ】様を守りますわ!」
ポリンお嬢様が上空から飛んできた火の玉をトランポリンで往なしながら、狐耳ロリ陰陽師の前に立ち塞がる。
気分は武蔵坊弁慶ってところか?
だが、前方からの火の玉に気をとられ過ぎたのか、いつの間にか後方に回り込んでいた三本足カラスが狐耳ロリ陰陽師を狙って足に助走をつけている。
「不味いですわ!?」
「あわわわわわわでおじゃる~!」
火の玉を防ぐので手一杯になっているポリンお嬢様は、その場で釘付けにされてしまっているので動くことができず、狐耳ロリ陰陽師は三本足カラスの飛び蹴りを腹で受けてしまった。
そして、攻撃を受けてしまったからか狐耳ロリ陰陽師の姿を保てなくなった式神は元の和紙へと戻ってしまった。
「ああっ!?
ワタクシはまた守りきれませんでしたわ」
バフが切れたポリンお嬢様は火の玉と三本足カラスの挟み撃ちによって木っ端微塵になり光の粒子となって死に戻りした。
となると、次の標的は……
俺だよな……
中途半端にしか回復していなかった俺は上空から火の玉を放ってくる【クシーリア=ドーヂィ】の熱量によって消し炭となり、死に戻りした……
くそっ、行けると思ったらすぐこれだよ……
予定調和ですね。
ですが、そろそろ糸口が見えてきたのはいい傾向です。
高みの見物といきますか。
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