2358話 試合に勝って勝負に負ける
さて、俺は【エラ=サンドレラ】を倒せたが、【槌鍛冶士】はどうなっているんだ……?
そう思い内側からガム風船のドームを包丁で慎重に切り裂いていく。
すぐには切り裂けないほど頑丈だが、何度か斬撃を放っていくことで俺が外に出られるくらいの穴が開けることが出来た。
そして、粘着しないように外に出るとそこには……
「ガハハ!!!
悪いな!!!
ワシは負けた!!!
だが、きっちり時間は稼いでおいたぞ!!!」
そこには【ひみは】の手に持っている鎌で貫かれた【槌鍛冶士】の姿があった。
……鎌!?
【ひみは】のチュートリアル武器は弓矢じゃなかったのか!?
「私は武器を選ばないよ~!
相手の命を刈り取るためなら、どんな武器でも使う!」
つまりウェポンマスター的な立ち回りをしているプレイヤーというわけだ。
チュートリアル武器という強みを捨ててまで武器を入れ替えながら戦うスタイルは、ボトムダウンオンラインではごく僅かしかいない。
だって基本的にメリットがないからな!
「でも、君には鎌だと戦いにくそ~!
だったらこれだね!」
そう言うと【ひみは】は手元の鎌を消すと、代わりに何もない空間から木刀を取り出し両手で構えていった。
「流石にMVPプレイヤー相手ならチュートリアル武器じゃないと耐えられなさそうだもん」
チュートリアル武器が強いからとかじゃなくて、あくまでも耐久度合いから判断して選んだって感じだな。
……それはいいんだが、あのワープゲートみたいなやつは何なんだ!?
アイテムボックスか!?
「これは秘密~!
教えないもんね!」
そう言って木刀で俺に切りかかってきた。
だが、いくら見た目が【釣竿剣士】をロリ化させたような見た目とはいえ、あんなに超人的な動きをしてくることはなく一般的なプレイヤーくらいの実力っぽいな。
動き方からして、色々な武器に手を出している弊害なのかまだ芯が通っていない印象を感じる。
武器をコロコロ切り替えながら戦えるのは便利だろうが、武器ごとの使用熟練度を上げにくくなるから絶対的な強さが上がりにくいのだろうよ。
……それでもモブプレイヤーたちに負けるようなレベルじゃないからよくやっている方だとは思うがな!
だからこそ、これで終わりにしてやろう。
【槌鍛冶士】にもそこそこ消耗させられているっぽいし、俺の一撃は避けられないだろ?
そう言い放って【ひみは】の胴を一閃していった。
きちんと致命的な部分を切り裂いておいたので、身体の構成が崩れていき光の粒子になるのが止まらなくなっていったぞ!
まぁ、俺にやらせてみればこんなものだろう。
「悔しい……!」
そう言い残して【ひみは】は消えていったようだ。
消え去るまで一応警戒していたのだが、大人しく消えてくれて良かったぞ……
……さて、俺の方へ寄ってきたプレイヤーはおおよそ片付いたな。
【槌鍛冶士】がやられてしまったのは手痛いが、一つの戦線を一人の犠牲で潰せたのは大した功績じゃないか?
自分ながらよくやった思っているぞ!
まぁ、ここには俺しか残ってないから誉めてくれるやつなんて誰もいないんだがな……
誉められるつもりでやっているわけじゃないんだが、せっかく勝ったなら誰かに称賛してもらいたい時もあるだろう。
【槌鍛冶士】、生き残ってくれていたらなぁ……
そんなことを考えていても埒が明かないし、そもそもまだ戦闘中だからな!
他の戦っていそうな戦場へ向かうとしよう。
……ここからだとまだ誰の気配も引っ掛かってないから、とりあえず歩いて見つけるしかない!
そう思っていたのだが、誰にも当たらないぞ!?
流石におかしいぞ!?
既に俺以外全滅しているのかってくらい、歩き回っても気配すら引っ掛からない。
まるで、俺が【エラ=サンドレラ】と戦っている間に他の戦場が一気に遠ざかったかのような……
いや、【ロイス=キャメル】ならやりかねないか!
俺のいる場所が分かったら隔離するくらいはやってきてもおかしくはない。
MVPプレイヤーを戦力にさせないならそれが一番だからな!
くそっ、やられたっ!?
戦いに勝ってたり、負けてたりする……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




