2357話 魔法が解ける時間
「こんなに早く私の弱点を突いて攻略してくるなんて思いませんでした……
これまで攻略されたことはあっても、ここまで早く倒されそうになったことはありませんでした!
おじ様がこの力をあまり使わないようにと念押しされていたのも、今なら分かる気がします」
まぁ、そういう側面もあるだろうが、この方法で倒せる可能性があると分かった時点で他の意図にも俺は気づいたぞ。
まず、弱点がバレて広まったらその力の有用性がどんどん失われていくことだな。
かつて魔法だと思われていたようなことでも実際は科学で再現できるように、神秘を明かされてしまえば身体が灰になるという力が脅威で無くなってしまうからな。
初見殺しの状態を常に作りたいなら【ロイス=キャメル】の言うように普段使いしない方がいい。
せっかくの能力がただの弱点になりかねないからな!
あと、お前自身が力に溺れないようにするためだろう。
初見殺し感が強いとはいえ、それを踏まえてもかなり協力なabilityと【失伝秘具】の力だ。
現にはじめはタイマンで俺と戦うのは無理そうだったが、今ならタイマンでMVPプレイヤーの俺を圧倒していたのは事実だ。
それだけの力を制御しつつ、高揚しないで冷静な判断が出来るならともかく【ロイス=キャメル】はお前にまだそれは早いと判断したんだろうな。
実際、さっきもお前は高揚したり激しく動揺したりしてミス連発していたからな。
大いなる力には大いなる責任が伴うから、お前がその力を行使するのを【ロイス=キャメル】は好んでいないんだろうなぁ。
けっ、【ロイス=キャメル】があえて説明してなかっただろうことを思いつく限り言ってやった!
本当は【エラ=サンドレラ】本人に気づかせたかったんだろうが知ったことか!
こうやって説明してやれば……
「おじ様、そうだったのですね!?
私、てっきり……
いえ、そんなことは……!」
ほれみろ、涙を流しながら動揺してる。
おおよそ、自分が【ロイス=キャメル】の意図に気づけなかったことにショックを受けているんだろうな。
「時が遡れるなら私の行動を改めたいです……
あぁ、なんてこと……!」
時が遡れるなら、ねぇ?
そんなことが出来たら苦労は……
……いや、遡れるはともかく時の操作は可能ではあるか。
そしてシンデレラ……
なるほどね?
やってみる価値はあるか!
スキル発動!【深淵顕現権限Д】!
俺は深淵細胞を励起させ身体を作り替えていく。
いつもなら【深淵纏縛】にしているところだが、今回はそれほど大きなリソースを使うつもりがないし、成し遂げるのも時間を巻き戻すもり楽な仕事だ。
最低限の消耗でやらせてもらうための選択だな!
そして、この姿になったからは使うスキルも一つだ!
スキル発動!【刻犬舌針】!
俺は犬の針舌を生み出し、それを動きの鈍った【エラ=サンドレラ】へと叩きつけていく。
そして、普段なら針を逆回りさせてスキルを相手にぶつけたり巻き戻したりするのだが、今回は順回りで針を回していく。
すると、徐々に【エラ=サンドレラ】のお姫様衣装が徐々に灰のように消え去っていき、元の赤ずきん姿に戻っていってしまった。
まるで0時を迎えたシンデレラの魔法が解けていくかのように……な。
そして、そうなってしまえばもう俺の舞台だ!
俺の包丁の錆びになってくれっ!
そう叫びながら俺は【エラ=サンドレラ】の首を一閃していき、切り落としていった。
「お、お見事です……
灰自体の弱点だけではなく、シンデレラタイムのカラクリまで見破られてしまうなんて……
このabilityと【失伝秘具】は時の概念にめっぽう弱いのです。
戻るのも進むのも、どちらも魔法がかかっていない状態になるのに変わりありませんからね……
寓話の結末から性能や成り立ちがバレてしまうのは、童話礼装の弱点です!」
そう言い残して【エラ=サンドレラ】は死に戻りしていっていったようだ……
よしっ、勝利だ!
ざまーみろ!
勝ったときの台詞がチンピラのようですが……
全く、これだから劣化天子は……
品位を向上させなさい!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




