2354話 灰被りのお姫様
「私と根比べしてもらいます!
スキル発動!【蒼狼風咆】です!」
【エラ=サンドレラ】が放ってきたのは前にも【シャルル=ホルムズ】と一緒に連携してつかっているのを見たスキル【蒼狼風咆】だ。
風の衝撃波を放つ咆哮が俺に向かって放たれてきたわけだが、これを真っ正面から受けるわけにはいかない!
とはいえ、逃げたら逃げたで輪舞曲ガムの膜へダメージが直接いってしまう。
【槌鍛冶士】としてはそれでも別に構わないという前提で使ってくれているんだろうが、俺としてはせっかくの膜を破りたくはない。
数も有限だろうし、破られたら破られたで隙も生まれてしまうからな。
ガムによる膜が破られた直後からまた【ひみは】の矢が襲ってくることを考えれば、慎重になるのも無理はないんじゃないか?
というわけで、スキル発動!【塞百足壁】!
俺は深淵の黒い壁を生み出し風の咆哮を受け止めていく。
向こうが獣人に種族転生していてそのスペックを充分に発揮しているのに対して、俺は【深淵顕現権限】を使っているわけじゃないから出力では負ける……か?
俺の予想通り、深淵の黒い壁は風の咆哮によって破壊されてしまったのだが威力は充分に拡散させることが出来たみたいだな!
……昔ならそうはいかずに深淵の黒い壁が破壊されて威力も拡散しきれなかっただろうが、俺の深度が深まっていることもあって【深淵纏縛】や【深淵顕現権限】を使わずしてもそこそこのスペックを維持したまま深淵スキルを使えるようになったことが大きな要因だろうな。
普段はその恩恵を実感することはないんだが、こうやって相手がいて戦っているとようやく実感できるというものだな!
「あんなにお手軽に貼られた壁で私の【蒼狼風咆】が防がれました!?
主力の攻撃だったのですが!」
まぁ、お前からしてみるとそうだろうな。
俺だってMVPプレイヤーとしてずっと選出されてるわけだから、それ相応の力はあるってことだ!
大罪に特化した【ロイス=キャメル】ほど突き抜けてはいないが、それでも深淵系なら全次元含めても俺がトップの進捗だろうと言えるくらいには力を高めているからな!
悪いが、このまま戦っていても負けるつもりはないぞ?
「……ですね。
スキルの攻防だけでもそれがわかりました!
だからこそ、私はこの手札を切ります!
おじ様、隠しておけと仰った手札をここで切ることをお許しください!
ability発動!【一夕之夢】!
そして【失伝秘具(童話礼装)】ー【灰城の不解魔法ー硝子靴】!」
【エラ=サンドレラ】がability【一夕之夢】と【失伝秘具(童話礼装)】ー【灰城の不解魔法ー硝子靴】を発動させると、その身体が灰に包まれていき衣装を作り替えていく。
するとどうだろうか、灰が晴れた頃には【エラ=サンドレラ】は純白のドレスに身を包み、ガラスの靴を履いた……まるでシンデレラを思わせるような姿へと変化していたのだ!
さっきまで赤ずきんだったっていうのに、今度はシンデレラか。
「ability【一夕之夢】は私の成功への憧れを具現化して定着したものです!
この私の名前もそれを意識してつけてみました。
だからこそ、この【失伝秘具(童話礼装)】ー【灰城の不解魔法ー硝子靴】を手に入れた時にはabilityとの組み合わせで真の力を発揮できるとすぐに分かりました!」
シンデレラ姿になった【エラ=サンドレラ】はそういって大斧を振るうと、そこから灰が生み出され俺へと襲いかかってきた!
確かに細かい攻撃だが、この程度なら何とか避けられる!
そして、本領を発揮される前に本体の【エラ=サンドレラ】を潰してしまえば問題ない!
俺は灰攻撃を避けながら【エラ=サンドレラ】を包丁の間合いに入れ、そして袈裟斬りで一気に振り抜いていった!
これで【エラ=サンドレラ】は光の粒子となって消え、て、いく、はず、だった……んだがなぁ……っ!?
俺の予想を裏切って【エラ=サンドレラ】の身体は切り裂かれたのにも関わらず、再び元の形へと戻っていっている。
まるで空中に舞う灰を切り裂いたかのような手応えだったし、俺の斬撃が効いてないんだろう!
「ご明察です!
今の私の身体は灰も同然です!
どれだけ打撃や斬撃を放とうとも一切通用せず、すぐに魔法のように回復するのがこのabilityと【失伝秘具】の組み合わせですよ!」
なるほど、無敵状態で俺を足止めするってわけか。
これは控えめに言ってかなり厄介だし、正直今すぐ逃げ出したいところだ。
……とはいえ、こいつを放置して逃げ出したらもう手がつけられなくなってしまって、モブプレイヤーたちは全滅しかねない。
やはり俺が攻略方法を見つけて仕留めないとな!
難敵ですね。
しっかりしなさい、劣化天子!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




