2353話 VR感覚による泥沼戦争
【エラ=サンドレラ】も【ひみは】の連携により防戦一方の俺。
2対1ならこのままジリジリと俺の体力が削られてしまうのは火を見るよりも明らかだな。
……本当にこのまま2対1ならな!
おい、【槌鍛冶士】!
そろそろ出番だ、お前の生産アイテムの力を見せてもらうじゃないか!
「ガハハ!!!
いつ声がかかるのかと待ちわびていたぞ!!!
待ちくたびれて腰が痛くなるところだったな!!!」
【槌鍛冶士】が豪快に笑いながら取り出したのはガムのようなものだった。
それを噛み、口のなかで膨らませると膜が生み出され俺の周りを覆っていった。
これはなんだ!?
「ガハハ!!!
これはワシの開発した輪舞曲ガムだな!!!
膨張チクルという原料素材を使ったことで、伸びやすく頑丈なガムが出来たぞ!!!
これで【包丁戦士】とそこの赤ずきんの娘を一緒に囲んでしまえば、外からの矢はしばらくガムで受け止められるだろう!!!」
「男性の噛まれたガムが周りに広がっているのは嫌ですね……
性能云々の前に不快です!」
「矢が止められちゃう~!?」
【槌鍛冶士】が原材料からわざわざ説明してくれたが、これは一応料理系生産アイテムの扱いだ。
……とはいえ、【槌鍛冶士】の場合は工業生産による産出なので俺とはアプローチの仕方が違う。
だからこそ、俺では持ち得ない生産アイテムが【槌鍛冶士】から生まれてくるわけだな!
そして、この場で生産アイテムを用いた最適解として輪舞曲ガムという選択をしたからには、【槌鍛冶士】の中でも防御に自信があるってことだろう。
なら、俺は一緒に輪舞曲ガムの中に閉じ込められた【エラ=サンドレラ】の相手に集中すればいいわけだ。
たとえこの輪舞曲ガムの守りが破られたとしても何とかしてくれる、それだけの信頼が【槌鍛冶士】にはあるからな!
俺が唯一無二の相棒としているからにはそれ相応の理由がある。
それは、俺が望んでいることを望んでいる以上に応えてくれるという実績の積み重ねだ!
俺のことを深くまで理解していないと出来ないことだしな。
そして、俺のことを深く理解できるやつなんて一握りしかいない。
【槌鍛冶士】は情報の取り扱いに長けているのもあって、分かりにくい俺のこともこと細やかに感じ取って動いてくれているんだろうな。
「【包丁戦士】様と一対一……
おじ様から避けるように言われていた盤面になってしまいました!?
ですが、【包丁戦士】様を無視してガムの守りを破壊するのは無謀です!
……おじ様、すみません。
私はやはりここで命を賭けることになります!」
【エラ=サンドレラ】も腹を括ったようだな。
こいつは鼻がよく利くってことと、大斧を振り回すことしか正直知らないんだが【ロイス=キャメル】が単独で俺と戦うなと言ったからには客観的に見ても俺の方が優位なはずだ。
ってなわけで、俺は【エラ=サンドレラ】の後ろに回り込もうとして動いてみるが……
「そんなバレバレの臭いで私の後ろに回り込むのは無理です!
【包丁戦士】様の気配察知と同じ様に、私は臭いで相手の動きを読めるというのは前に説明しましたよ?」
ちっ、そうだったな……
嗅覚のVR感覚が鋭敏で、臭いとされている俺のことは読めるんだろう。
俺も目を閉じて相手の位置を探れるから、【エラ=サンドレラ】も同じ様に目を閉じていても……つまり視界に頼らずして俺の位置が分かるってことだ。
……ってこれ、堂々巡りにならないか!?
「間合いと隙を見つけあう戦いをするならそうなりますね!
どちらのVR感覚がより鋭いか、持久力の高さで競う形になりますよ!」
だろうな。
だが、それをやった場合は地力の差で俺が勝つ。
……【エラ=サンドレラ】にはな。
「やはりお気づきになられていますね!
おじ様が見込んだお相手というのも改めて実感しました。
そうです、私自身は【包丁戦士】様に勝つ必要がないです!
持久戦で【包丁戦士】様の時間をより奪うことが出来るなら、この戦いでの私の役割は果たせます」
だろうな。
俺が一つの戦場に留まれば留まるほど他で【ロイス=キャメル】が暴れまわり、その影響力を強めていくことが出来る。
【エラ=サンドレラ】はそのための捨て駒になるのを覚悟の上でここに来ているってわけだな!
「死兵の覚悟です!
おじ様はこれを私に教えた上であまり好んでおりませんでしたけど、おじ様のためなら何のそのです!
では【包丁戦士】様、戦争の終わりまで私にお付き合いください!」
そうして、俺と【エラ=サンドレラ】の泥沼の戦いが再び始まるのだった……
早く倒して包丁次元の冒険者たちを導きに行きなさい。
それが次元天子としての宿業でしょう。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




