2313話 恋は盲目、狂気は正義
「では、俺たちはこれから迎撃の準備をしようか。
アンカー次元は海からの侵攻を食い止めてくれるようだから俺たちへの負担はかなり減るはずだけれど、それに甘えて警戒を怠らないようにしないとね。
油断でフェイちゃんを傷つけることになったら俺が許さないよ」
包丁次元メンバーに向けて【フランベルジェナイト】が早々に言い放っていった。
こいつはどの立場からこの発言をしているつもりなのか分からないが、まぁ、気を引き締めるように注意喚起しているとすればギリギリセーフか?
というか、フェイちゃんが誰を意図しているのか半分以上のプレイヤーには伝わっていないだろ、これ……
「それで警戒するのはいいんですけど?
これからどうするんです?」
モブプレイヤーの一人から質問があった。
確かに具体的に方針を知りたいやつがいるのも仕方ないか。
一応ガーデンバトルの戦場を作っている最中にいた連中にはあらかた話しておいたんだが……
戦いにしか参加しに来ないやつがいるのも想定の範囲内だ!
とりあえずここからは陸地の中央地まで撤退する!
水辺に近いと水流科のプレイヤーに襲われて不利な状態で戦わないといけなくなるからな!
当然そのための撤退地点も作ってある、心配無用ってやつだな!
「ホッとしました……
【包丁戦士】って狂人って言われてるからどんな変な作戦になるかビクビクしてたので」
おい、それは俺に直接言うことか……?
心の中で止めておけよな!
ガーデンバトル中なのにお前をキルしたくなるからだ!
「ヒィッ!?
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
……そんなに謝るくらいなら言うなよ。
まぁ、この対応は今に始まったことじゃないからいいけどな!
とりあえず、殿は【フランベルジェナイト】に任せて俺を先頭に撤退地点まで移動だ!
お前ら遅れるなよ?
「了解!」
「うーい」
「まぁ、多少はね?」
「いや、俺たちはここで離脱させてもらう」
「悪いが【包丁戦士】にはついて行けねぇよ」
「こんなところいられるか!
俺は自分の場所へ行かせてもらう!」
というわけで予定調和のように俺についてくるプレイヤーもいれば、このタイミングで別行動を始める集団もいた。
せっかく撤退地点を作ったのに……と思わなくもないが俺に従うことそのものが嫌っぽいから許容はしてやろう。
ここで無理に従わせる労力を考えるとメリットよりもデメリットの方が大きそうだからな!
だが、俺たちの動きの邪魔はするなよ?
いくら俺のことが嫌いでもそこは弁えてもらいたいところだ。
「狂人でもあるまいし、そんなことはしねーよ。
じゃ、あばよ!」
ということで離反組は離れていってしまった。
いやー、俺の陣営も随分とすっきりしたものだ。
風通しが良くなっていいね~!
「フェイちゃんの魅力が分からないなんて可愛そうなプレイヤーたちもいたものだね。
その愚かさが憎らしいよ。
だけれども、フェイちゃんに害をなすプレイヤーが自発的に離れていってくれたことはよかったかな。
無視をして排除する必要が無くなったのは手間が省けるよ。
粛清も1つの手段として考えていたからね」
お、おう……
俺のことを考えてくれているのはよーくわかったがかなり俺の考え方に傾倒して来ているよな!?
自分で言う分には特に違和感がないんだが、他のやつが俺のために同じ行動をするって聞くとまた別の印象に聞こえる。
もはやヤンデレの範疇だろ、これ……
「【包丁戦士】だけが狂人かと思ってたけど【フランベルジェナイト】も相当頭イカれてるわね。
でも、イケメンだから許すわ!」
「やっぱりイケメンの騎士ってそれだけで正義だよなぁ」
「うんうん、わかるわかる」
「なんというか、貫禄とか説得力が感じられるっていうか……」
おいおい、俺の時と随分と受け取られ方が違うじゃなか……(困惑)
そんなことある???
俺だって可憐な乙女だぞ!
「いや、だって普段の行動からして害悪行動だし」
「それでもMVPプレイヤーだから従ってるけど」
「【フランベルジェナイト】様は普段害悪プレイをされているわけではないわ!
そこの違いよ」
やっぱり日頃の行いってことか。
うーん、そうなったら俺ではどうしようもない。
イケメンは正義ってわけか……
「俺に正義なんてないさ。
だけど、もしあるとすればそれはフェイちゃんのことかな?
フェイちゃんだけが俺の正義の方向性を導いてくれるんだと思っているよ」
えぇ……俺を正義の基準にするなよ……!?
そう思ってもらうこと自体は正直かなり嬉しいんだが、【フランベルジェナイト】のためにはならないぞっ!?
劣化天子を正義の基準に!?
そんな気の狂ったことをするのは止めなさい!
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