2300話 対象外の特異点
俺、【霧咲朱芽】は【株式会社幽刻修験堂】の本社へと足を運んでいた。
毎度毎度のことだが、特別枠での会社勤めという扱いになっているので普段は出勤せず自由に行動していればいいのだが、召集がかかれば強制的に来なければいけないのだ!
「やあやあ、今日もご苦労様。
この【山伏権現】の召集に応じてくれて嬉しいよ」
俺たちの前に現れたのはゲーム運営プロデューサーの【山伏権現】だ。
山伏のような姿とサラリーマンのような姿をまぜこぜにしたカオスな見た目のやつだ。
基本は山伏衣装なんだが、ネクタイをしていたり、キッチリメガネをキメて、髪は七三分の状態でワックスで固めている。
「まず、世界剣樹ダンジョンの下層攻略おめでとう。
あとは他の包丁次元のプレイヤーたち次第といったところだね」
出会い頭に俺へ称賛を送ってきた【山伏権現】。
「まぁ、【海溝剣アトラ】の影響力を取り除かないといけないからな……
今のところで俺が出来ることはやり終えたつもりだ」
俺がそう伝えると少し困った表情を浮かべて俺へ苦言を呈してきた。
「やり終えたというのは話が違うけどね。
あくまでこの【山伏権現】からの指示は影響力を取り除くところまで。
それはまだ達成されていないよ。
やれることはまだまだあるはずさ」
そう言われると反論は出来ないよな……
世界剣樹ダンジョンに自分自身が挑めなくても【ペグ忍者】は情報収集に動くことで貢献しようとしている事例があるからな!
「だが、今俺は世界剣樹ダンジョンの方じゃなくて【カニタマ】討伐の方向でアプローチしている。
サボっているわけじゃないぞ!」
「もちろんそれは承知しているとも。
今後の進捗も楽しみにさせてもらうよ。
それはそうと、【双真ナル】というプレイヤーは今何をしているのかな。
【海溝剣アトラ】と同じ様に観測から外れてしまうから他のプレイヤーの近くにいてくれないと認知出来ないんだよね。
困ったものだよ」
【双真ナル】自身も特殊な観測から逃れられているのか……!?
「そういえば【海溝剣アトラ】を割り込ませてきてから音沙汰がないな……
ここまで動きがないってことは、やるべきことが終わって動く必要がないのか、あるいは次の行動に向けて準備してるのかだよな。
でも、俺から接触する手段もないし、あいつの気配も辿りにくいからなぁ。
探れそうだったらやってみるが、これについてはあまり期待しないで欲しいぞ!」
俺がそう告げると【山伏権現】は考え込むようにして少し黙ってしまった。
そして次に口を開いた時には……
「【包丁戦士】君でも辿れないのは相当困ったものだよ。
この【山伏権現】の把握している範囲だと【釣竿剣士】の気配は辿れないとのことだったけれど、修行の成果でたどり着いた境地だからね。
それに対して【双真ナル】にはその様子がない。
ある意味天性のもの、素の状態から【包丁戦士】君の気配察知に引っ掛かっていないようだ。
この点からしても一般的なプレイヤーの範疇を逸しているよね」
【山伏権現】、そこまで俺のことを把握しているのか……(困惑)
もはやストーカーというレベルを超えたレベルで知られていて鳥肌が立ってしまったぞ!?
「【包丁戦士】君が何を考えているのかは想像がつくけれど、それはさておき【双真ナル】の目的は突き止めたいところだね。
包丁次元の海を変貌させたことが最終目的だとは、この【山伏権現】には思えなくてね。
どこに着地点を置いているのかさえ分かればまだ対処のしようはあるのだけれど、現時点では既に起きた事象への対処というアクションしか起こせていない。
この後手に回る動きは歴史的に考えても負けに繋がる可能性が非常に高いよ」
「それには俺も同感だな。
起きたことに対応してるだけだと対応出来ないことが起きたタイミングで俺たちの負けになるからな!」
……まぁ、【双真ナル】が姿を見せてくれないと突き止めようにも無理なんだけどな。
「誘き寄せられるような餌を用意するのも手かな。
幸いにも【双真ナル】は【包丁戦士】君に興味津々のようだからね。
変わったアクションを起こせば反応してくれる可能性はあるかもしれないね」
「餌……ねぇ……?
正直今の時点だと何も思いつかないが、確かにこれまでも勝手に【双真ナル】側から俺の前に顔を出して来ていたし【山伏権現】の考え方で正しいかもな。
……当事者じゃないのにそこまで判断できるの怖すぎなんだけど!」
「それがこの【山伏権現】の役割だからね。
いくら【包丁戦士】君が怖がろうとも変わらないよ。
それに見ているのは【包丁戦士】君だけではないからね。
そこを勘違いされても困るかな。
臨界点を迎えるためにはその実情を把握する必要があるんだよ」
???
まーたわけの分からないことを言っているな!?
いつか君にも理解できる時が訪れるかもね。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】
2300話到達しました!
みなさんありがとうございます!




