230話 【菜刀天子】による聖獣結界解説
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は【菜刀天子】に聞きたいことがあるぞ。
「劣化天子から私に話しかけてくるのは珍しい気がしますね?
それで上位権限持ちの私に何を聞くというのですか?」
きょとんとした表情で次の発言を促してくる【菜刀天子】。
たしかに、俺から【菜刀天子】に積極的に話しかける機会って今までの230話を見返してもそんなにないからな……
基本的には【菜刀天子】から絡んでくるというのが定番だったし。
それはまあいいや。
とりあえず、俺が聞きたいのは【聖獣結界】についてだ。
実績照会にも出てきてたワードだし、ウプシロンも唐突に使ってきたやつだが俺を含めてこの次元で【聖獣結界】について知ってるやつってプレイヤーにはいないからな。
しかも、聖獣関係っていうならお前に聞くのが手っ取り早いからな。
「なるほど、そういうことですか……
たしかにウプシロンは【聖獣結界】を発動していましたね。
それならば、もう話しても問題ないでしょう」
やったぜ。
この言いぶりだと、もうあの棘亀が発動してなかったら教えてくれなかったっぽいから死に際に発動してくれて良かった。
「【聖獣結界】は聖獣の力の拠り所です。
プレイヤーが存在しない特別な次元から溢れ出る力を一定の場所に閉じ込めるための結界なので、その中では底辺種族でもスキルの制約をある程度無視できるようになるほどです。
ただ、いくら聖獣といってもそのような強大なものを意図的に発動することはできないのですよね」
えっ、あれって意図的じゃなかったのか?
ここから本気出すぞ!みたいな感じで使ってきた気がしたんだが……
「おそらく、その心情の推測は間違っていないです。
劣化天子にしては的を得ていますね」
一言余計だぞ!
油断するとすぐ上から目線での物言いをしてくるな、こいつは……
「実際、私の方が圧倒的に立場は上ですからね。
それで、【聖獣結界】の発動条件ですが、さっき劣化天子が言ったことと深く関係しています。
聖獣たちがその次元から力を引き出す際に、加減を間違えるほどの強い感情を表に出すと発動します。
なので、裏技のような方法で不意に倒してしまったりすると発動の機会が無くなってしまいますね」
この次元のプレイヤーの今後のことを考えるなら正々堂々倒せってことか。
だが、ミューンの聖獣結界は発動しなかったな?
あいつは正々堂々、正面から倒したと思うんだが……
「それが私とあの年増タコが対立する理由の一つです」
年増タコ……あっ、ルル様のことか!
「深淵種族に影響を受けた聖獣は不完全な形でしか聖獣結界を発動できなくなってしまいますからね。
聖なる力の中に不純物が混ざるからでしょうか……
それに、深淵種族は深淵種族で聖獣たちとは別の力の基になる特別な次元を持っているようですから、聖獣結界のように領域を拡大する力も持っているようです。
……あの忌々しい深淵奈落が悪い例です。
ともかく、そのような理由で聖獣結界μは不発してしまいました。
ミューンが【名称公開】と【真名解放】を使った時に異次元の風が流れ込んだと思いますが、あの時本来ならば蛇腹剣次元の【真名解放】ではなく聖獣の力の根源である次元から聖獣結界が発動するはずだったのですよ?
まあそうなったら底辺種族たちでは、もっと苦戦していたでしょうが」
……あの唐突な半弱体化みたいな白虎状態は不完全なやつだったのね。
そりゃ後半の方が楽に戦えたわけだ……今明かされる衝撃の真実ってやつか。
楽して勝った結果、聖獣結界が発動しない結末になったんだろうな……いや、あの戦闘全然楽じゃなかったけど!!
滅茶苦茶負けそうだったけど!!
それに、深淵奈落もルル様が作り上げた特別な場所ってことも分かった。
深淵種族の一ヶ所に留まるほど強くなる性能と、自分の力の拠り所を同じ場所に設定したらそりゃ強いわな……
前にルル様に聞いたが、深淵種族は搦め手が得意で正面からの純粋な戦闘力だと聖獣と相性が悪いらしいが、それでもルル様がウプシロンに圧倒的優位を保っていたのはそのカラクリもあったに違いない。
なんか今までの疑問が色々と氷解した気がする!
親身に教えてくれる時の【菜刀天子】と話すと、今までの謎仕様について分かることが多いから適度に話しかけるのを忘れないようにしないとな。
「いや、それよりも私に敬意を払ってくれませんかね?」
て、適度にな……?
俺は逃げるように【菜刀天子】のいる王宮から立ち去ったのだった……
……えっ、逃げるほどのことでしたか?
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