227話 窓際族の狐
「計画……ですの?
話が飛びすぎていて詳しい説明が欲しいですわ!?」
「あっ、そこから説明しないとダメでおじゃった……」
だよな……急に妾の計画……とか言われてもこっちはポカーンとするしかないからな。
完全にこの狐耳ロリ陰陽師は気合いが空回りしているっぽい。
そこはかとなくボマードちゃんとかパジャマロリみたいな雰囲気を全身から醸し出している。
レイドボスがそんなんで大丈夫か?
……まあ、それは今さらか。
ともかく、計画とやらの説明をしてもらおうか。
「妾はこう見えて聖獣でおじゃる……じゃが、立場は末席。
東西南北のエリアにいる四体の聖獣には頭が上がらないのでおじゃる。
そんなとき、こやつが現れて妾に囁いたのでおじゃる。
『他の聖獣を倒して蹴落としてしまえ』という感じで」
狐で聖獣か。
四神……朱雀、玄武、青龍、白虎のことがファンタジーとかでよく知られていたりするが、それ以外にもまた、瑞獣の四霊というくくりで応竜、麒麟、霊亀、鳳凰というのもあったりする。
そして、四霊以外にも瑞獣はいて、鸞、獬豸、九尾の狐だ。
この中で当てはまりそうなのは九尾の狐か。
九尾の狐は中国の王室を守る神とされているが、その一方で徳のない君主の場合、革命を促すので凶獣でもあるとされていたりするのだ。
だから、【下克上の陰陽妖狐】ってレイドクエスト名なのか。
反抗心のある聖獣なら重役には置けないだろうし、疎まれるだろう。
そして、疎まれるとより反抗心が高まるという負のループにこいつはいるってわけだ。
で、この狐耳ロリ陰陽師はこやつ……とか言ったな。
俺たち以外に誰かいるのか?
「あっ、妾としたことが……
ほら、挨拶するでおじゃる」
狐耳ロリ陰陽師が胸元からお札のようなものを取り出して、それを宙へと投げた。
そして、そのお札から黒い霧が発生して何かの形を作り上げていく。
細長くて、うねうねと動く姿をしたそいつは……
ん?
なんか物凄く見覚えがあるんだが?
【Raid Battle!】
【荒れ狂う魚尾砲】
【レイドバトルを開始します】
「ヨォ、俺様の半身!
まさかここでも会うとはナァ!
イヤァ~、運命ってやつカァ?」
うねうねと動く黒い霧はうなぎのような姿を作って顕現した。
まあ、言わずもがなジェーライトだな。
なーんか、最近よく会うよな。
俺もなんか運命感じちゃうわ、流石一心同体リストに入ってるだけある。
で、なんで深淵種族のジェーライトと聖獣の狐耳ロリ陰陽師が一緒にいるんだ?
2体は敵対する種族だったんじゃないのか?
「もちろん、妾は聖獣の末席として深淵種族と戦っておったのでおじゃる。
じゃが、こやつと戦う最中にさっきの言葉を言われて気づいたのでおじゃる。
妾、下克上を起こさねばと!」
それはわかったが(いや、本当はよくわかってない。)が、なんでジェーが一緒にいるのかは聞いてないぞ?
「ワタクシとしては、レイドボスが急に現れたことの方が気になりますわ!」
「まって欲しいのでおじゃる!
順番に説明するでおじゃるよ。
まず、この札で行使したのはスキル【邪深封印】というものでおじゃる。
陰陽術スキルの最上位に位置するもので、深淵種族の力の一部を封印できるのでおじゃる。
妾はこんな感じの補助スキルしか使えないから、聖獣の中でも低い立場でいいように使われているのでおじゃる。
底辺種族たちに教えている回復スキルも補助スキルでおじゃるよ」
あっ、なるほどな。
直接的な戦闘力が低いレイドボスならヒエラルキーも低くなるわな……
それこそ二体同時に現れないと……
あっ、ジェーが手を貸しているのってそういう……?
「マァ、そんなところだナァ……
こいつが他の聖獣に喧嘩を売るのを助けてやろうと思ってナァ!
俺様の使命……侵略と合致してるから問題ないダロォ?
けど、封印の影響で二割以下の力しか発揮できないがナァ!
前の復刻版の身体よりも、さらに、圧倒的に弱いゾォ……
元々八分割している力の1つで、聖獣の力の影響を受けていたらそうなるのは当然だがナァ!」
八分割……
前、頭が8本になったりしてたからなんとなく思っていたが、ジェーってヤマタノオロチが元ネタなんだろうな。
ただ、寄生したり力を分割したりよく分からない能力になってるから元ネタは見た目だけ反映したんだろう。
いや、実はヒュドラが元ネタだったりするのか?
あと一本の頭は常に何処かに潜んでいるってのもありそうだ。
「というわけでおじゃる。
この裏側には妾の陰陽術と、こやつの深淵の力を使った結界を貼っておって、深淵種族の力を持つ者だけ入れるようにしているのでおじゃる」
なんでそんなしち面倒くさいことを……
「もちろん、他の聖獣たちに気づかれないように協力者を増やすためでおじゃる!
深淵種族の力を持つ者であれば、聖獣を優先的に討伐するでおじゃるからな!
他の深淵種族にもそう言われている可能性が高いからのう。
表側では本来の役割を果たして、裏側で暗躍する……名案でおじゃろう?」
まあ、間違ってはない。
実際俺はルル様からそうしてくれって言われてる。
ジェーにも前に何回か言われてたな、ボマードちゃんの身体経由で。
「おおっ!
妾の目に狂いは無かったでおじゃる!
お主は分かっているでおじゃるな!」
狐耳ロリ陰陽師は目をキラキラと輝かせて俺に迫り寄ってきた。
……なんか、懐かれたみたいだな?
何処からか不穏な気配がしますね……
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