2259話 多段式回転レーザー
『ちっ、俺と【荒れ狂う魚尾砲】の極太レーザーが丸々全部防がれたか……
せめて【師匠】に一撃でも食らわせられるかなと思っていたんだが当てが外れたな……
流石はMVPプレイヤー三人揃っているだけはある。
今さらではあるツッコミだが、特に【師匠】はおかしいだろ!
七本のレーザーを一人で防ぎやがって……
俺だって超絶強化されてるはずなんだぞ!?』
【包丁戦士】が怒りたくなる気持ちも……分かります。
【師匠】一人では全てのレーザーを捌き切れなかったとはいえ、その大半は一人で防げていますからね。
【師匠】を上回った【包丁戦士】の事前の立ち回りを褒めるべきか、強化された【包丁戦士】に匹敵する力を素で持ち得る【師匠】に驚くべきか悩むところです。
聖女である私もそこまで強化される方法は限られたものしかありませんから。
『だが、悪いな。
今の俺は特別製なんだ。
一人は食らわせてもらったぞ!』
「アァン?
それはどういうことだ、ゴラァ!
ちゃんと全員相殺していったはず……」
聖女である私が【包丁戦士】の言葉に疑問を感じている中で、【包丁戦士】はこちらの後ろ側を指差し……
『ほら見てみろよ、後ろでてんやわんやしてるぞ!
貴重な後衛プレイヤーの守りがおざなりじゃ駄目じゃないか!』
言われて聖女である私と【師匠】が後ろを振り向くと、そこには……
「ウゲゲッ、木の囲いの隙間からレーザーが侵入してきたんだぞ!
これはまずいんだぞ!?
ヴアァァァァァァアッッッ!!」
【牛乳パフェ】は多段式にカーブしてくるレーザーに貫かれてそのまま光の粒子となって消えていってしまいました……
あのレーザーは直線でしか進まないと思っていたのですが、予想外の軌道でしたね。
「アァン?
これまでずっと直線だったじゃねぇか、ゴラァ!
オメェ、急に曲げやがって!」
『あえてだよ、あえて!
直線しかないと思わせておけばお前らは勝手に安心するだろ?
実際、普段の俺なら無理だしな。
ボマードちゃんがやってたから今の俺なら出来るだろうと試してみたら案の定いけたってわけだ!
そこで油断したところに変化球を加えてやれば一瞬でコロリといってしまうわけだな!
鬱陶しくなることこの上ない【牛乳パフェ】をこの段階で落とせたのはタスカルタスカル……』
「ふむ、戦場の常を意識した戦い方だのぅ。
補給線を断ち、油断を誘う動きを混ぜるというのは意識しても出来ぬ者が多いというのに。
お主は儂らの世界でこそその才覚を十全に発揮できたものを……
生産的人間とは生きる場所に合わせた動きをすべきなのではあるが……」
【包丁戦士】、そのようなことを考えてあえて直線のみで戦っていたのですね。
これまでの戦いの先入観を利用されたわけですか……
全体的にスペックが上がっているだけではなく、スキルそのものの機能も増えているとなれば他のスキルも含めて警戒をより強めないといけないでしょうね。
これだけ複雑化されてしまうと閃きでは対処しきれないので、聖女である私の強みを一つ潰されてしまったと言ってもいいかもしれません。
「ちっ、警戒は解けねぇが攻める以外の選択肢も無いな。
とりあえずこれで様子見するしかねぇ!
大罪スキル発動!【虚飾神聖】!
さらにスキル発動!【神天宝飾】!」
【スキルミックス!】
【【虚飾神聖】【神天宝飾】】
【混合発動【虚飾宝飾】
【修練武器に概念混合されます】
【デメリットとしてナニカが減少しました】
聖女である私の十字架から生み出された、紫色の禍々しくも神秘的なオーラ纏った数々の宝石の弾丸が乱れ咲きます。
「ふむ、【綺羅星天奈】嬢がその攻撃を選んだのならば儂はそれに合わせるとしようか。
……釣竿一刀流【憂鬱壱ノ型ー憂イノ吹雪】!」
【師匠】は自らが手に持つ釣竿を凍りつかせて、そのまま釣竿を介して吹雪を発生させていきました。
聖女である私が放った宝石を吹雪で後押ししながら、物理的な攻撃と環境的攻撃の二面攻撃で仕掛ける形に合わせてきたわけですね。
やはり、臨機応変な対応が出来る【師匠】は戦場の戦闘ユニットとしてはオールマイティーな活躍を常に期待できます。
……あの【牛乳パフェ】の野郎に爪の垢を煎じて飲ませてやりてぇよ、マジで。
『まーた嫌らしいコンボを使ってきたな……!?
さっきから【綺羅星天奈】と【師匠】のコンボ技が多すぎて顔から目が飛び出そうなくらい驚いているぞ!?
お前らそんなに味方として組んだことあるわけじゃないだろ?
引き出しの多さはもはや脱帽ものだぞ……
勘弁してくれ~!』
誰が勘弁しますか。
不浄は滅するのみです!
天奈のスキルは素直ですからね。
皆がついていきやすいんだと思います!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




