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2255話 包丁マリオネット

 アタイのスキルミックス【神月聖域】で【牛乳パフェ】の野郎と釣竿のじいさんのチュートリアル武器それぞれに天子属性を付与していった。

 アタイ以外の味方がいない時にはあまり使わねぇから久々に使った気がするぞ、ゴラァ!



 「では、【綺羅星天奈(きらぼしあまな)】嬢からの援護を受けたところで儂の元素爆発もお見せしよう。

 【包丁戦士】嬢さんには前に別のものを見せたであろうが、あれから複数の元素が儂の元へと再び戻ってきておってな。

 使える共鳴釣竿一刀流の技も戻ってきておるのだ。

 ……共鳴釣竿一刀流【影矢撃】!」



 釣竿のじいさんは飛び上がって羽の矢を大量に出し、矢とともに【包丁戦士】のやつの方へと突撃していった。

 釣竿のじいさんはこれまでアタイにも見せたことが無かった新たな釣竿一刀流を使って来やがったなァ!

 おいおい、ただでさえ多かったのにまだあんのかよォ!?

 


 『ここで新技かよ!

 しかも矢と【師匠】の同時攻撃ってえぐすぎるぞ!

 身体が【牛乳パフェ】のスキル【封龍雷眼】で麻痺して動けないし、逃げる手段は……

 これか!

 スキル発動!【衆合巣蜂】!

 蜂たちよ、矢の肉壁になってくれ』



 【包丁戦士】のやつは身体から小さい蜂を生み出して、迫り来る矢をそれぞれで受け止めさせていってるみてぇだな。

 それで防げんなら苦労はしねぇが……



 『うおっ、蜂に当たった矢が爆発した!?

 あんなの当たったら一瞬でお陀仏だぞ!?

 ……って、【師匠】もすぐ目の前か。

 こんなこと言ってる場合じゃなくて次の手を打たないとな。

 スキル発動!【儡蜘蛛糸】!』



 【包丁戦士】のやつは手のひらから蜘蛛糸を出して、釣竿のじいさんの方へと飛ばしていく。

 


 「そのような安直な手が儂に通用すると思うてか?

 【憂鬱】になるのぅ……」



 釣竿のじいさんが釣竿を一振すると、目の前にあった蜘蛛糸が爆発していった。



 「ウゲゲッ、あの釣竿一刀流【影矢撃】の効果中は釣竿本体も爆発機能が付与されるのか。

 凶器過ぎるんだぞ……」

 「【牛乳パフェ】に同意するのは気が進みませんが、聖女である私も同感です」



 【牛乳パフェ】の野郎が驚いてるみてぇに、周りの矢だけじゃなくて釣竿本体にも付与されてんのが対処を難しくさせてんな。

 あれをぶっつけ本番にやられたらアタイもその場で負けるかもしれねぇぞ、ゴラァ!



 『爆発好きすぎかよ!

 だが、俺は生き延びることにかけてはしぶといんだ。

 そう、こうやってな!』



 【包丁戦士】のやつは蜘蛛糸を自分にも回していたみてぇだ。

 麻痺している身体をマリオネットみてぇに操作して【師匠】の一撃を躱していった。

 

 あんなのアリかよ……

 自分自身を糸で操作するなんざ曲芸としか言いようがねぇぞ!?



 「ふむ、実に面妖な……

 まるで傀儡ではないか」

 「ウゲゲッ、気持ち悪い動きしてるんだぞ……

 身体の関節とかありえない方向に動いててプレイヤーじゃなくてエネミーにしか見えないんだぞ……」

 「これはやはり浄化を受けた方がいいのではないでしょうか。

 リアルで聖女である私による浄化をしてあげてもよいのですよ?」



 いや、本当に絵面がキメェんだよな。

 もはやホラー映画に出てきそうで、見るやつ次第では気絶してもおかしくねぇくれぇだ。



 

 本当にマリオネットみたい……いや、待てよ?

 ……アタイの頭に神が降りてきた!

 そう、この【包丁戦士】、本体なのかって疑問とその答えだ。


 釣竿のじいさんが感じたリソース量に対して、スキルの出力の上がり具合が低すぎる気がする。

 それに、人体を無視した動きしてんのが怪しすぎんぞ。



 「貴方、本当に【包丁戦士】本体ですか?

 先程の【儡蜘蛛糸】の操作は流石に怪しすぎます。

 そろそろ姿を見せてもらってもいいのでは?」

 「むぅ……?

 そういうことか」

 「ウゲゲッ、こいつは本体じゃないのか!

 そんなことがあり得るんだぞ?」



 アタイがそう突きつけると、【包丁戦士】のやつはニタリと笑って溶けるようにして地面に姿を消していった。

 そして、次の瞬間には全身から漆黒のオーラを放ち続ける黒いセーラー服姿の【包丁戦士】が現れたのだった!




 【Raid Battle!】


 【包丁戦士】


 【包丁を冠する君主】

 【深淵域の管理者】

 【『sin』暴食大罪を司る悪魔】


【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】

【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】

【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】



 【聖獣を担うが故に】


 【深淵へ誘い】


 【聖邪の境界を流転させる】


 【責務放棄により】


 【境界を見守り】


 【管理することを強いられる】


 【会うは別れの始め】


 【合わせ物は離れ物】


 【産声は死の始まり】


 【この世の栄誉は去ってゆく】


 【故に永遠なるものなど存在しない】


 【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】


 【ああ……この世は無情である】




 【ワールドアナウンス】


 【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】


 【レイドバトルを開始します】




 『これだけのリソース量があればスキル【堕幻深淵】で自分自身を再現して動かすっていうのも可能性かと思って試してみたが、完成度はボチボチだったな。

 リソースの伝達率が悪くてこのまま動かすのは燃費が悪かったし、正体を現すのはちょうどよかったかもしれない。

 【綺羅星天奈(きらぼしあまな)】にバレるようならまだまだ改善の余地ありってわけだ!』



 スキルで自分を複製してやがったのか。

 それに、アタイでも感じられる圧倒的リソース量……これが今回の本命かっての!



 「ふむ、これはこれは……

 ここからは【憂鬱】を感じずに済みそうだのぅ!

 ……血肉が沸き立つ!」





 【Raid Battle!】


 【牛乳パフェ】


 【鳴動する阻鴉眼】


 【白獣人】【深淵使徒】【プレイヤー】【転生開眼】



 【聖獣を担うが故に】


 【白濁する】


 【未だ埋まらぬ瞳は白いまま】


 【安楽竜の転生を】


 【留め、止め、トドメ】


 【いずれ白き瞳を埋める時】


 【画眼の魂は天昇するだろう】



 【ワールドアナウンス】


 【【牛乳パフェ】がレイドボスとして顕現しました】


 【レイドバトルを開始します】





 「ウゲゲッ、既に逃げたくなってきたんだぞ……

 勝手におれの身体が【深淵纏縛】を起動してアルベーの深淵細胞が励起されてるんだぞ……」



 そんな泣き言を言う軍服姿に変化した【牛乳パフェ】を横目で見ながら、次の動きを固唾を呑んで警戒していくしかねぇな……







 これは……【深淵域の管理者】としての力を十全に感じますね。

 天奈、気をつけてください!

 これはとても危険です!


 【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】

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