2254話 神タイミング
釣竿のじいさんがアタイの十字架をフル活用して【包丁戦士】の守りを一瞬にして砕いていったが、そこからの攻撃が緩まるわけでもねぇのが釣竿のじいさんのスゲェところだ。
「これで止めとさせてもらおうかのぅ。
……釣竿一刀流【霧祓】!」
釣竿のじいさんはまるで霧のように見えるほどの素早さで剣戟を繰り広げていった。
アタイでも何とか斬撃の跡を追えるレベルだから一般人が見たらもはや何も動いてねぇように感じるレベルだぞ、ゴラァ!
……だから釣竿一刀流【霧祓】って名前なんだろうがよォ……
『確かに技のキレは【釣竿剣士】よりも段違いで上回ってるな!?
……だが、キレが違っても派生技ではあるんだろ?
生憎それはよく見せられてるからな、これで対処させてもらうぞ!
スキル発動!【魚尾砲撃】!』
【包丁戦士】のやつはレーザー攻撃で釣竿のじいさんを狙っていったが、放ったそばからレーザー攻撃が釣竿で切り刻まれていってやがる。
「これしきで儂を仕留められると思うたか?」
釣竿のじいさんは案の定全く意に介していねぇみたいだ。
あんなに至近距離で撃たれて強気なのはやべぇな。
……だが、それは【包丁戦士】のやつも同じようだ。
『うーん、これで【師匠】を仕留められたら楽だったんだがそうは上手くいかないか。
だが、【師匠】を倒すのが本目的じゃないんだよなぁ。
ほら見てみろよ、俺の立ち位置は【師匠】の間合いからいつの間にか外れているぞ~!』
【包丁戦士】のやつはレーザー攻撃を攻撃というより推進力として使いたかったみてぇだ。
相手の攻撃の間合いから外れてしまえばどれだけスゲェ斬撃だろうと当たらないっていう理論で動いたんだろうが、あの動きの迷いのなさからして【包丁戦士】のやつの常套手段の一つに違いねぇな。
断定してもいいが、ありゃ慣れてるやつの動きだっての。
「ケケッ、離れてくれたならおれの独壇場なんだぞ!
望遠鏡を設置して……
スキル発動!【封龍雷眼】なんだぞ!」
【包丁戦士】のやつが全員の間合いから離れたことを確認した【牛乳パフェ】の野郎がすかさず望遠鏡経由の超遠距離魔眼でアシストしていった。
普通のスキル射程距離じゃ届かなかったり、届いても効果が大幅に減衰するから本来ならこのタイミングで使えねぇんだが【牛乳パフェ】の野郎はチュートリアル武器が視覚支援出来るからその強みを活かしたんだろ。
【包丁戦士】のやつが着地したタイミングと合わせてんのが技巧派だ。
さっきまでサボりまくってたやつに言うのも癪だが、他のやつに合わせて戦わせんならこれ以上いねぇデバッファーに間違いねぇよ。
『ちっ、氷はさっきの【魚尾砲撃】で砕いたのに次は麻痺を付与してきたか……
ご丁寧に俺が回避できない着地の瞬間に合わせてきたのが嫌らしい!
可憐な乙女から目を離せなくなってるってわけだな!』
「ウゲゲッ、勘弁してほしい言いがかりなんだぞ……
【ケィキ=エペル】が聞いたら絶対怒るやつなんだぞ……」
【ケィキ=エペル】……望遠鏡次元のability【現界超技術】保有者か。
どっからどう見ても【牛乳パフェ】の野郎に惚れてやがるやつだったが、そりゃそんなやつが今のセリフを聞いたら怒るに違いねぇな。
……それはさておき、【包丁戦士】のやつが麻痺してんのなら今が攻めの好機か。
アタイのバフを今のうちに撒いておくのが得策ってもんだな、ゴラァ!
「聖女である私が神の加護を神民に授けます。
清らかな心で受け入れなさい!
神の祝福を受けた美しき私による救済です!
スキル発動!【神月信心】!」
【スキルミックス!】
【【天元顕現権限】【神月信心】】
【混合発動【神月聖域】】
【修練武器に概念混合されます】
【デメリットとして魔力が減少しました】
これは味方のチュートリアル武器に天子属性のバフを付与するスキルミックスだ、魔力をわざわざ使ってんだから無駄にすんなよ、ゴラァ!
敵が深淵種族の親玉みてぇな存在の【包丁戦士】だから天子属性付与は効果覿面って算段だ。
「ケケッ、おれの望遠鏡が輝きはじめたんだぞ……」
「ふむ、儂の釣竿も同じく。
【綺羅星天奈】嬢の補助スキルの影響であろう」
「神の加護を宿したチュートリアル武器は不浄を祓います。
この暗き地での支配者の【包丁戦士】へ効くことでしょう」
「ケケッ、助かるんだぞ!」
『いや、そういうの良くないと思うぞ!
急に俺へのメタ張ってくるなんて酷すぎるって!
……不利属性が多いからいつも結果的にメタを張られるのがテンプレートみたいなところはあるけどな!』
【包丁戦士】のやつが喚いているが、深淵種族になったオメェが悪りぃんだろ……
天奈、いい判断です!
このまま一気に行きましょう!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




