2252話 違和感からの謎解き
『倒してきたのは……
蛇5、烏5、ムカデ1、蜘蛛2、狸3、狐3か。
中々のリザルトだな。
あいつら一体でもゲートキーパーより少し劣るくらいのスペックはあるはずなのに、それをここまで倒してくるのは流石MVPプレイヤー三人集まって行動していただけある。
特に【師匠】がいるのは正直痛手なんだよなぁ……
計算外というかなんというか……』
あん?
【師匠】は予想外ってのはどういうことだってんだ。
こっちの三人は【包丁戦士】のやつが指定したわけじゃねぇのか……?
それと、リザルトと称してアタイらが倒してきたモンスターの種類と数を確認してきてるってことは実際に見てたのか、それともシステム補助で倒してきたモンスターの種類と数を見れるようになってんのかだろ。
だが、その数を一々覚えてんのは妙だなァ!
ねちっこい【牛乳パフェ】の野郎なら覚えてんのも自然なんだが、【包丁戦士】のやつはそこまで細けぇとは思えねぇし気にしねぇ。
……つまり、何かしらのギミックが絡んでんだと思う。
「儂が計算外……か。
儂が引き寄せの縁や術に深く影響を受けてしまうが故に割り込んでしまったのであろう。
ボトムダウンオンライン……底下箱庭という場に儂がいるのもその性質によるものであるが故にな」
「ケケッ、【師匠】の弱点が聞けたんだぞ!
それだけで今回参加した価値があったかもしれないんだぞ!
……ただ、この情報を活かせる気がしないんだぞ……」
釣竿のじいさんが引き寄せの縁や術に影響を受けやすいのは初耳だ、ゴラァ!
なんでその情報を今さら開示したのか知らねぇが……
【包丁戦士】のやつが呼びたかったのはアタイや【牛乳パフェ】はともかく、【師匠】ではなかったってことだが誰を呼びたかったのか知りてぇな……判断材料になるかもしれねぇしよォ。
『【綺羅星天奈】は【師匠】じゃなくて他に誰を呼びたかったのか知りたそうな顔をしてるな?
お前にしては珍しく表情に出ていたから分かりやすかったぞ!
……別に教えても支障がないから教えてやろうか?
【ギアフリィ】だ、【牛乳パフェ】の次に俺にとって都合がいい性質を保有してるからな。
【綺羅星天奈】はその次点くらいの感じだな!』
「ウゲゲッ、おれは【包丁戦士】にとって都合が良かった!?
全然嬉しくないんだぞ……」
「ふむ……」
「聖女である私が一番ではないのは不敬に思えますよ。
神民である自覚はありますか?」
【牛乳パフェ】が都合が良かったのか……?
それで次に【ギアフリィ】、そして最後にアタイだろ?
意味がわかんねぇぞ、ゴラァ!
……閃いた。
「神託を授かりました。
【包丁戦士】と同じ種族の要素を保有するMVPプレイヤーを集めたかったわけですか。
【牛乳パフェ】と【ギアフリィ】は深淵種族の要素、聖女である私は天子としての要素ですね?
おそらく扱いやすいリソースが抽出できるからでしょうが……
それは貴女が負けた場合より搾り取られることになるのは承知してますか?」
アタイがそう突きつけると【包丁戦士】のやつは嫌そうな顔をしてこっちを見て来やがった。
『お前……その情報だけで当ててくるのかよ……(困惑)
頭が切れるっていうのはとっくの前から知ってたけど、改めて化物じみた考察力だよなぁ……
バレたところで戦いには影響がないからいいんだけど、相変わらず気味が悪いぞ!』
気味が悪りぃのはオメェの方なんだっての。
そもそもこの変な遺跡型の次元戦争を引き起こしてる時点でやべぇ。
【包丁戦士】のやつに自覚はねぇんだろうけどよォ!
「ケケッ、MVPプレイヤーはみんな気味が悪いんだぞ……
どの程度、どの方向性で気味が悪いのかはそれぞれ違うけど、間違いないんだぞ!」
「そうであろう。
底下箱庭計画の目的からすれば当然のことではあるが……
常軌を逸してこそ意識と身体が臨界点に到達しやすく、到達した時の影響力も大きかろう。
MVPプレイヤーの中でも既にそこに到達した者がいるとも聞いておる。
【山伏権現】めの計画が順調である証拠にもなるが、いささか性急だのぅ」
釣竿のじいさんが言ってやがるMVPプレイヤーってのはアタイのことだろうよ。
わざわざニュースにも出て入信勧誘も兼ねてアピールしてんだから隠す気なんて更々ねぇが、釣竿のじいさんは異世界にいるんだろ?
何で知ってんだよ……
天奈の頑張りが異世界にも届いているということでしょうか?
流石は人類の至宝ですよ!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




