2251話 諸悪の根元
釣竿のじいさんの感覚と経験で深淵種族似のモンスターは生み出されてきているってのが分かったが……
「ウゲゲッ、無尽蔵に生み出してきてるのか?
それだったら【包丁戦士】に逃げに徹されたら負けは確定なんだぞ……」
「そのような考え方もあるか。
であるが……」
「それはないでしょう。
レイドボスが生み出しているならばこの戦い中に尽きることはないでしょうが、1プレイヤーが生み出しているならバランス調整でモンスターを生み出すために何かしらの制限が課されているはずです。
聖女である私が受けた神託では、限られた使用リソースでやりくりするものです」
そこまで断言するには理由がある。
……が、説明すんのは面倒ってわけだ。
コイツらにそこまで説明すんのも時間の無駄だから簡潔に結論だけ伝えんのが一番効率的だろ。
アタイが出した結論なんだ、思考の過程はどうあれこれまでアタイと戦ってきたコイツらなら……
「ウゲゲッ、出た!
過程すっ飛ばしの結論なんだぞ!
考えるのに自信があるおれでもついていけないんだぞ……」
「ふむ、だが【綺羅星天奈】嬢の結論ならば信じるに値するか。
それが生産的人間というものだ。
神託というのもあながちまやかしの類いではないであろう故に……」
釣竿のじいさん、そんなところまで当たりをつけてんのかよ……
一々怖えぇやつだな、ゴラァ!
だが、実際どこまで想定されてんのか知らねぇが、あるのに使わねぇのは効率が悪すぎてやってらんねぇからなァ!
「というわけで、しばらくは【包丁戦士】のリソースを削るために見つけたモンスターは全て倒していきましょう。
悪しき者を浄化するのも聖女である私の使命……いい機会ですし、【包丁戦士】もろとも聖なる光で包み込んで浄化しておきましょう」
「ケケッ、【包丁戦士】いい気味なんだぞ!
MVPプレイヤー三人を同時に相手にしようとしたのを後悔させてやるんだぞ!」
「その意気は買わせてもらおう。
だが、お主はもう少し積極性を見せる行動でその意気込みを示すべきであろう。
人を動かすのは意気込みだけではなく行動も伴ってこそ……である故に」
「ウゲゲッ、耳が痛いんだぞ……
味方に後ろから刺された気分なんだぞ……」
ケッ、それは自業自得ってもんだ。
オメェが露骨にサボろうとしてんのが悪りぃんだっての。
さっきから何度もお灸を据えられてるってのに懲りねぇやつだ、ゴラァ!
いい加減真面目にやりやがれっての!
そして、その後もムカデや蜘蛛、狐や狸みてぇなモンスターが現れたりしたが全部蹴散らしてやった。
突発的な次元戦争なのにも変わらず随分と気前がいい種類の揃いっぷりじゃねぇか!
コイツらは全員深淵種族で元ネタがいんのか?
狐はアタイの次元で聖獣として見たことあんだが、深淵種族にもいんのか……?
元ネタが被ってるじゃねぇか、ゴラァ!
「ウゲゲッ、これだけ倒したのに【包丁戦士】の姿が見えないんだぞ……
本当に消耗戦を狙ってる可能性もあるんだぞ!」
「ふむ、先が見えぬ戦いほど冗長的なものもあるまい。
勝敗が分からぬものならともかく、倒すのが容易な相手ばかり相手するのも【憂鬱】な故にな」
確かに長げぇな……
だが、アタイの神託としてさっきも言ったようにリソースが決まってるはずだ。
アタイの予感が正しければそろそろ……
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
「ウゲゲッ、出たな【包丁戦士】!
ようやく会えたんだぞ!」
「だが、この出力……
このエリアの力を掌握しておるな……?」
「聖女である私が貴女を浄化します!」
出やがったな【包丁戦士】!
姿は……緑と黒のゴスロリか。
相変わらずのコスプレだが、あの姿は侮れねぇ……
それに釣竿のじいさんが【包丁戦士】の力の高まりを感じ取ってるみてぇだ。
カチコミ決めるくらいの覚悟で挑まねぇとなァ!
『MVPプレイヤー三人揃っているようで何よりだ。
お前たちには悪いが俺のリソース供給源になってもらうぞ!』
天奈、今度こそ包丁次元相手に勝ちましょう!
えぇ、きっと勝てます!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




