2250話 空襲と超感覚
「ケケッ、それで黒い蛇を倒したところで特に変化は起きなかったんだぞ。
ここからどうするつもりなんだぞ?」
【牛乳パフェ】の野郎は半分考えを放棄したかのようにアタイたちへ行動方針を再度聞いてきたな。
それくらい自分で考えやがれっての。
考えるのが苦手なやつならともかく、オメェは頭脳派プレイヤーだろ。
さっきから流石に手抜きが過ぎんだろ、ゴラァ!
……とはいえ、この頭ソフトクリーム野郎が方針に口を出さねぇならアタイの自由に動かしやすいか。
それなら自由にやらせてもらうっての!
「では、このまま探索を進めていきましょうか。
現状はモンスターが出てくるというだけで、他の危険は聖女である私の結界で防げていますからね。
神の加護に感謝して進みなさい」
「何か見つかると良いが、今のところ手がかりはない。
敵襲はある程度儂が面倒を見ておこう。
その代わりに【包丁戦士】嬢さんの位置やこの戦場のカラクリについて解き明かしてもらおうかのぅ……」
「ウゲゲッ、おれは……
望遠鏡で遠見しておくんだぞ!」
釣竿のじいさんは変に動き回らずにアタイらの護衛をしてくれるつもりのようだ。
めっちゃ、助かんなァ!
ここで自由行動されてたら埒が明かなかったっての。
釣竿のじいさんはたまにそういう風来坊みてぇなことをするからヒヤヒヤしてたんだが、今回はアタイに指揮を任せてくれるようだ。
そして、ソフトクリーム頭はやる気あんのか?
確かに遠見自体は大事だが、オメェはもっと他にやることあんだろ……
本格的に手札を隠したり、手抜きをしようとしてくるのをどうにかしねぇとな。
【包丁戦士】と組んで戦ってた時はそんなことしなかったんだがよォ?
「ウゲゲッ、次の敵襲が来たんだぞ!
今度は烏型のエネミーなんだぞ!
今回は……十体来たんだぞ!」
そんなことを考えながら進んでいたら再びモンスターが襲ってきやがった。
望遠鏡で辺りを見渡し続けてただけあって、【牛乳パフェ】の野郎が一番早く気づいて知らせてきた、これぐれぇはやってくれないと本当にコイツは何をやってんだってなるが……
さっきと違って空から攻めてきやがったわけだな。
攻め手を変えてくるなんて一々面倒クセェことしやがんなァ!
【包丁戦士】のやつ、何か企んでんのか?
「ふむ、地を這いずり回る敵では効果がないと見てきたか?」
「ウゲゲッ、あの烏たちがデバフサークルを生み出して来たんだぞ!
……あっ、そういえば今は【綺羅星天奈】の結界の中にいるからデバフの影響が全くないんだぞ!」
【牛乳パフェ】の野郎は一人で漫才でもやってんのか?
……いや、分かってることでも漏らさず共有しておこうっていう魂胆か。
自分の手札を見せるのは渋るが、情報共有漏れで窮地に陥って負けそうになるのは避けたいってのが本音かよ。
慎重なのか、臆病なのか分からねぇな、ゴラァ!
「聖女である私の聖域から出なければ影響はないでしょう。
ですが、ここから出ずにあの高さの烏を撃ち落とすのは骨が折れますよ」
アタイのスキルの射程範囲から微妙に外れてんだよなァ……
アタイ一人だけなら特攻しかけても構わねぇんだが、チームで動く以上突出した動きは褒められたもんじゃねぇしよ……
「ふむ。
であれば、さきほど宣言した通り儂が責任をもって撃ち落としてみせよう。
……釣竿一刀流【砂荒】!」
釣竿のじいさんは釣竿を地面に着けた状態からそのまま一周し、勢いよく空へ向かって釣竿を突き上げていった!
勢いの渦に砂が巻き込まれて、砂の台風みたいになってやがる……
釣竿一刀流【砂荒】の砂塵が目眩ましなったみたいで、デバフサークルも足元から消えていったのがありがてぇ。
だが、釣竿のじいさんは自分で烏を撃ち落とすって宣言してんだからアタイらの手出しは無用だろ。
むしろ、手出ししたら邪魔になんだろ。
「では、トドメといこう。
……釣竿一刀流【氷霰】」
釣竿のじいさんは釣竿を振り回して氷を生み出すと、それを上空へ送り出しそこから自由落下する氷霰で烏を地面に叩き落としていった。
しかも見事に十体全部だ。
本当に一々攻撃の規模がデケェわりに無駄がねぇな……
「褒められるのは悪い気がしないが、かのような伽藍堂を打破したほどでは手応えがないのぅ。
儂の世界にもいる能力者が、異能力で生み出した眷属を倒した時の感覚に近い故に元々この世界に息づいていた生命ではないのだろう」
釣竿のじいさんは独自の感覚で分析してるみてぇだな。
その辺はアタイには分からねぇし、そういう情報こそもらえるとありがてぇんだよなァ!
【牛乳パフェ】の野郎も見習ってくれっての。
……って言ってもその感覚を真似できそうなのは【包丁戦士】のやつくらいしか思いつかねぇが。
最も完成された人間である天奈であれば、きっと第六感も身につけられますよ!
応援してます!
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