2244話 あなひろげ
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は【キズマイナ】が草原エリアで穴を掘るのに指示を出したり、見守ったりしていたな。
結局ログアウトするまで草原エリアで待機していたんだが、それでも【キズマイナ】は地上に戻ってこなかったから仕方なく挨拶無しにログアウトして置いてきた。
あれ以上あの場所で俺が待っている必要性なんて全く分からなかったしな……
【キズマイナ】が怒りそうだなやむ無しだ!
というわけでやって来ました草原エリア!
来てみると多くのプレイヤーたちが【キズマイナ】が掘った穴に群がっていた。
おいおい、お前ら邪魔だぞ!
「げっ、【包丁戦士】が来た!」
「逆らうと殺されるぞ!?」
「退避!退避!」
そんな群がっていたモブプレイヤーたちも、俺を見たら次々に散り散りになっていき残ったプレイヤーはごく僅かになった。
これが俺の悪評と実績が為せる業だな!
残っているプレイヤー層は……【検証班】や【裏の人脈】、【包丁戦士狂教団】で見たことあるようなやつばかりなので他のモブプレイヤーたちよりは俺を恐れていないんだろうよ。
……と、穴を覗き込んで見たら下の方から地響きがしてきた。
「よ、ようやく掘り終わりましたよぉぉ……」
地面からモグラの如く【キズマイナ】が顔を出してきたのだ!
まさか、今の今まで掘り続けていたのか!?
「ふひひっ、そうですよぉぉ……
思っていたよりも時間がかかりましたねぇぇ……
鉱人種族以外の外部プレイヤーだけでこれを掘ろうとしたらとんでもないくらいの時間が必要でしたよぉぉ!」
まぁ、【キズマイナ】でこれだけ時間がかかったならそれは間違いないだろうな。
どう考えても鉱人種族が味方にいる前提みたいな仕様だ……
本来ならこの段階にたどり着く時には全種族のプレイヤーがそれなりに数が揃っていることが想定されていたんだろうよ。
「ただ、ここから先はあてぃしでは掘り進められないみたいですよぉぉ!
あてぃしみたいな存在が力を貸すことも考えられていたみたいで、外部プレイヤーしか掘り進められない仕様になっている地層にたどり着いてしまいましたぁぁ!
あとは任せましたよぉぉ!」
くっ、そこは対策されていたか……
【キズマイナ】だけで掘り切れたら楽だったのに……
「ここでボクの出番というわけですね。
世界剣樹の根元に穴が空いたという噂を聞きつけてみればお二人の仕業でしたか。
穴掘りの人員も用意している最中なので無駄になったかと思いましたが、集め始めていて正解でしたね」
俺が落胆していたところに現れたのは白衣の青年……【検証班長】だ!
ちょうどいいタイミングで来てくれたようだな!
「どうせ【包丁戦士】さんの差し金だと思って来てみたら案の定だったので、もはや安心しましたよ。
そして、先にボクに声をかけてくれていたら一緒に穴掘り開始から検証出来ていたのに……」
【検証班長】は人員募集が徒労で終わる可能性よりも、穴掘りで起きるであろう現象について見逃す可能性があったことに怒っているみたいだな。
……そこのピントのズレ具合も流石【検証班長】といったところだ。
熱量のかけ方が違うんだよなぁ……
「ここからはボクが集めたプレイヤーたちで掘り進めてもらいましょう。
流石に今日は来ていないですけど、予定の繰り上げで参加できる人から来てもらうことにします。
それまで【キズマイナ】さんは穴を広げたり、整備をしてプレイヤーたちが降りやすいようにしておいてもらえると助かります。
進めない範囲より前ならいくらでも掘れるのですよね?」
「ふひひっ、【検証班長】さんは目敏いですねぇぇ……
確かに手前ならまだ掘れますよぉぉ!」
俺が繋いだ縁が俺を置いて広がっていっている……!?
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




