2222話 にゃんにゃんにゃんにゃん
「故智に気を取られているところ申し訳ないが、我が身もいるのを忘れているか？
スキル発動！【猫虎肉球】！」
【石動故智】の【強欲】を目の当たりにして気を取られている【石動ガンジ】に対して【タイガーアイ】がスキルを放っていった。
肉球の形をした【伝播】の粒子がそのまま襲いかかっていく。
……よしっ、俺も便乗だ！
スキル発動！【狸真似月】！
俺は【ゼータンパ】の全体配布スキルである【狸真似月】を発動させていった。
このスキル、これまでまともに使ったこと無かったが今なら使えるからな！
効果としては種族由来スキルを一時的にコピーして使えるやつだ！
それによって【タイガーアイ】の使ったスキル【猫虎肉球】の効果を丸パクリして、同じ様に【伝播】の肉球を飛ばしていく。
これで、倍プッシュ……２倍だぁっ！
「ぬぅ……獣の力か。
圧迫は感じるが……【強欲】の力に比べれば温い！
破アァァァァ！」
「ぐうぅぅぅっ！？」
【石動ガンジ】にダメージこそ与えられたが、【タイガーアイ】がカウンターを喰らってしまったようだ。
【タイガーアイ】はさっきの泥の弾丸+アメジストの棘による直撃を受けていることもあって、ここにきてとうとう満身創痍になってしまった。
誰が見てもボロボロな姿は命が風前の灯火であると証明してしまっている。
「おそらく、次に放てる一撃が最後の一撃になる。
あとは、任せた、ぞ……」
そう言って残った力を次に注ぎ込むために集中しはじめた。
「スキル、発動……【猫目石弾】
スキル発動……【虎目石月】」
その２つのスキルが発動されるとスキルチェインのアナウンスが俺たちの脳裏に鳴り響き、月の形をした石弾丸が【石動ガンジ】に向かって飛んでいく。
虎と猫の紋様が浮かんでいる石弾丸が飛ぶ様は、まるで博物館を思わせるような綺麗さを描きながら【石動ガンジ】へと激突していった！
「これは、内部への振動攻撃も同時に行うものか！？
外殻だけならばダメージを抑えられたものを……」
おっ、案外効いているぞ！？
攻撃のチョイスが良かったのか、相性抜群だったみたいだな！
だが、無理をしてスキルチェインまでさせていった代償なのか【タイガーアイ】の身体が粒子となって崩れていってしまっている。
「どのみち時間の問題だったのだ。
希望を持てず疲弊し役に立たず生き延びるより、一撃でも多く被弾させる方が幸福だ。
ではお前たちに幸福が降り注ぐことを祈っているぞ！」
そう言って【タイガーアイ】は退場していってしまった……
何だかんだ役立ってくれたから、ここで退場してしまうのはかなり痛手かもしれないな！？
「これでまた一人脱落だ。
某の相手をするのに手数を失ってしまっては勝算が一気に落ちたのではないか？」
ぐっ、確かにそうだな……
個としての出力は大罪の権能を借りた二人のMVPプレイヤーがいたとしても【石動ガンジ】の方が高い。
これまではそれを手数の多さで誤魔化しながら戦ってきたのだが、そこで手落ちしてしまえば戦闘の均衡は向こう側に傾いてしまう可能性が高いな！
だが、【石動ガンジ】も何だかんだずっと戦闘を強いられているからかなりダメージが蓄積されてきているんじゃないか？
しかも【黒杖魔導師】によってバフも剥がされてしまっている状態だから、攻撃の通りもいいしな！
「あの黒ずくめの魔導師……本当に余計なことをしてくれたものだ。
あれさえなければ某がここまで追い詰められることもなかったというのに……」
【石動ガンジ】からしてみると俺たちが到着して早々にやられて退場していった【黒杖魔導師】が一番鬱陶しそうな感じだな……
あいつが俺たちの到着までどんな立ち回りをしていたのかは想像できないが、お陰様である程度互角に近い動きを出来ていたんだと思う。
……とはいえ、やはり今の段階で頼れないのはキツイ！
頑張って生き延びてくれていたらもっと楽だったぞ～！！
「さて、生き残ったのは【暴食】と【強欲】……か。
どちらも自らの力で相手のものを奪い取ろうとするような大罪だ。
某の美徳である【謙譲】とは逆の性質とも言えるが、真逆ではない。
この相性が吉と出るか、凶と出るか試させてもらうとしよう」
「いつまでも試しているなんて余裕だねっ！？
そうやって上から目線を続けていたらコッチに足元を掬われるよっ！」
「相手の気を引こうとするのもまた【強欲】さの一つだが、それ以上の価値がある原石かどうか……見極める必要があるな」
今、【石動故智】は本当に感情の揺れ幅が激しいな？
俺も【暴食】で抑えが利かない時はあんな感じなんだろうか……？
強欲だったり、嫉妬だったりする……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】
