2220話 強欲の抑制破壊
【石動故智】が【石動ガンジ】と真っ正面からやりあっている最中に裏に回り込み【渡月伝心】による一撃を食らわせた俺だったが、ダメージを与えることが出来たとはいえこれだけでは全然致命傷にはならない。
片腕を失っているわけだし、そんなに無理は出来ないんだが……
「これで終わりか……?
勇んできたわりには拍子抜けだ。
某に明確なダメージを与えたのは見事だが、それではこの首はやれぬ」
けっ、改めて言われなくてもわかってるって!
俺だってこれだけで仕留められるなんて思っても無かったって!
だが、二の矢を用意してないなんて誰も言ってないぞ!
「今流れているのは懺悔の音源だ!
言うまでもなく俺のフォローは必須だフォローしなければ懺悔は届かない!
スキル発動!【掘削鉱山】!
大罪スキル発動!【金満課金】!」
まるでパチンコの演出のようなうるさい音楽が流れはじめたかと思うと、【石動ガンジ】の足元にある地面から現れた【タイガーアイ】がチュートリアル武器の壺から大量の金貨を吐き出しはじめ、それで【石動ガンジ】を押し出していった!
あの巨体を金貨で!?
確かに洪水のようにどんどん流れ出てきているが、そんなに攻撃力が高いのか!?
もしかして見た目以上に凄いスキルなのかもしれない。
「この大罪スキル【金満課金】は攻撃前にリアルマネーを支払うことで攻撃力を増す諸刃の剣。
課金単価がハイレート過ぎるがゆえにリアルマネー追加をする場合は使用回数を自ら縛らなければ破産してしまう、恐ろしいものだ……」
えぇ……
そんなスキルまで実装していたのかよ……
だが、そこまでハイレートなら頻発させることは出来ないだろうから、そこでバランスを取っているんだろうな。
……いや、取れているのか?
自分で言っていてよく分からなくなってきたぞ……
最高はどこまで威力が出て、どれくらい支払えば出せるんだ?
俺が聞くと特に隠すことなく【タイガーアイ】は教えてくれた。
……【ランゼルート】の一撃レベルを出せるのか!?
ただ、金額が俺の年収以上支払わないといけないというアホみたいな設定だったが……
誰が一回の攻撃でそんな金額支払えるんだよ、頭おかしいだろ!
【山伏権現】、本当にスキルの挙動の調査とか実験とかしたのか???
流石に狂ってるだろ……
「我が身なら支払えないこともないが、支払った金額分スキルのクールタイムが増えてしまうので連発は出来ない」
ちなみにだが、さっきの攻撃はどれくらい支払ったんだ?
俺は興味本位でさらに聞いてみた。
そりゃ、こんな話聞かされたら聞きたくなるだろ!
「隠すようなことでもない。
我が身が支払ったのは……」
そう言って何も躊躇わずに教えてくれた。
金持ちの余裕ってやつだな……
そして教えてもらった金額は俺の年収とほぼ同じくらいだった。
さっきの一撃がその金額かぁ……
確かに課金以外の要素で見たらお手軽強力だったが、俺には怖くて使えないぞ……
「この隙にさらに畳み掛けるよ。
大罪スキル発動っ、【強欲制覇】ぁっ!
スキル発動っっっ、【六角鉱鋭】!」
【石動故智】はピッケルに大罪のオーラを宿らせると、それで執拗に【石動ガンジ】のゴーレムボディを攻撃しはじめた。
そして、そのピッケルの動きに併せて尖った石が相手を押し込むように追随していっている。
それはいいんだが、これまでにない気迫だな!?
【石動故智】のセリフで「!」とかこれまでついた回数ってほとんど無かったはずだ。
そこまで高揚しているってことなんだろうが、この気配は俺も体感したことがある。
大罪による、VRに備わっている感情抑制機能の排除による影響だな!
俺も【暴食】に影響されて異常なほど高揚したことが度々あるが、【石動故智】も同様に【強欲】によって平常心を保てなくなったのだろう。
戦闘が激化したり、感情を揺さぶられるような出来事があるとあんな風になる。
「コッチがぁっ!
【石動ガンジ】様に勝ってっ!
存在を証明してみせるよぉっ!」
おおぅ……
ここまでの迫力とはな……
「我が身もあそこまで高揚した故智は初めて見た。
これまで【強欲】が発動していてもあそこまでの感情を見せていなかったのだが、不思議なものだ。
誰かが否定しても我が身だけはおまえを許してやる。
人は必ず過ちを犯す生き物だその罪を懺悔すれば幸福は訪れるだろう」
お前は本当にどの視点でそれを言っているんだ……?
寛容なのか、高圧的なのかも分からないし本当に謎すぎる存在だなぁ……
【強欲】だったり、【強欲】じゃなかったりする……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




