2219話 三者三様の立ち回り
「これはどうだ。
【金鉱ー翡翠の採】」
「負けないよ。
スキル発動、【翡翠発破】」
【石動ガンジ】が翡翠の弾丸を放ち、それを【石動故智】が翡翠色の発破で粉砕していく。
同じ色同士のぶつかり合いということもあってか、その輝きはより一層増しながらぶつかり合っていっている。
【石動】という名前を背負っているからか、普段よりも気迫の入った【石動故智】を見ると頼もしいな。
そんな様子を見ていた【タイガーアイ】は複雑そうな表情をしていた。
「故智は気合い充分というわけか。
勢いがいいのはいいことだが……
だが、気合いがありすぎるのも時には失敗の元になる。
必ずフォローをしておくのだ」
やはり俺と同じ感想を抱いていたか。
今の【石動故智】からは普段感じられないほどの気迫を感じる一方で、普段感じているような安心感が感じられなくなっている。
それほど前のめりになっているということだろうが、いつ負けてもおかしくないということの裏返しだ。
この場で【石動故智】にそれを説いても自力で直せるものでもないから、俺や【タイガーアイ】でフォローするしかないだろう。
「我が身は虎鉱人。
虎獣人と鉱人の複合種族だ。
それぞれの短所を長所で中和しているから特段弱点はないが、突出した長所も無くなってしまっている。
どのようにも動くことは出来るが、高いパフォーマンスは発揮できないぞ」
出た出た、複合種族!
プレイヤーで鉱人と別種族の複合になっているやつは初めて見たな……
だが、例に漏れず複合種族の器用貧乏っぷりが発揮されてしまっているか。
中途半端に恩恵を多く受けようとして尖った性能がなくなるのは俺も今現在通っているミチだからよく分かるぞ……っ!
「【包丁戦士】も我が身と同様に複合種族だったか。
訪れる富と幸福が何倍にもなると思って種族転生だったが、ボトムダウンオンラインではそう甘い話はないと改めて思わされたぞ。
……そんな複合種族二人で故智をどうやってサポートするか決めておくべきだと思うが」
そうだな……
真っ正面からの攻撃は【石動故智】が自力で対処できているからそこまで支援は要らないような気がするな。
むしろ、変に同じところに割り込むと邪魔になって被弾が増えたり、俺たちを庇おうとして【石動故智】のダメージだけが増えるかもしれない。
それだと邪魔しに行っただけになるから避けたいよな……
「となると、逆側から回り込んで攻撃するというのが得策であろうか?」
無難なのはそこだよなぁ。
やっぱり邪魔にならずに【石動ガンジ】の意表を突くためには必ず俺か【タイガーアイ】のどちらかがやるべきだろう。
だが、二人同時に逆側に回り込むというのも芸がない。
もう一つくらい案があれば今のうちに共有しておきたいが……
「それなら我が身にいい考えがある。
任せておくといい」
そう言いながら【タイガーアイ】は後ろに下がっていってしまった……
おいおい、まさか逃げるつもりじゃないだろうな?
【石動ガンジ】相手に恐怖でも感じたのか!?
「確かに【石動ガンジ】は強敵だが、恐怖を感じるほどではない。
我が身の【金満】があれば命の危険はかなり軽減されるからだ!
この大罪を送信してシェアすれば富だけではなく全てに恵まれる」
シェア!?
そんなことも出来るのか!?
「条件はあるがな。
だが、今はまだその時ではない。
まずは【包丁戦士】が【石動ガンジ】の後ろに回り込んで攻撃するところからだ」
なるほど、俺に先に行けと?
いい度胸じゃないか!
だが、面白い!
乗ってやろう!
俺はやけに強気な【タイガーアイ】の思惑に乗ることを決意して、そのまま最前線へと駆け出していった。
包丁を片手に突っ込んでいき、【石動ガンジ】の巨体の股下を通り抜けそのまま背後を取っていく。
「急に攻めてきたか!
某の背後を取ったのはいいが、その包丁が某に効かぬのは前回の戦いで思い知ったはず。
また前の二の舞を演じるつもりであろうか!」
そんなわけないだろ!
いくぞ!
スキル発動!【渡月伝心】!
俺は包丁を媒介にして銀色の円環粒子を放っていく。
すると、【石動ガンジ】を取り囲むようにしてその身体を切り裂きはじめた!
当然、頑丈な身体の【石動ガンジ】にクリティカルヒットまでは与えられなかったのだが、傷自体はつけることが出来た!
やはり、【黒杖魔導師】がバフを剥ぎ取ってくれたからか前に戦った時よりも攻撃の通りがいいなぁ……(しみじみ)
戻ったら頑張ったで賞をあげたいくらいだな。
よかったり、よくなかったりする……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




