2215話 発破ダイバクハツ
「【亞樹ツバタ】を倒したのは良かったけど、この地下からどうやって登ろうかな。
階段でも掘りながら登るかな」
いやいや、それじゃ時間がかかりすぎる!
もっと速く登れる方法はないのかよ!
ただでさえ戦闘に時間がかかったのにさらにロスタイムを生み出すのはキツすぎるって!
多少強引でもいいからショートカット出来るやつがあればそれが一番いい。
「……強引でいいなら他の方法もあるよ。
ただ、先に念を押しておくけど本当に強引過ぎるから普段は使ってない方法だよ」
おっ、あるなら先に言ってくれよ~!
それで行こう、それで行こう!
【石動ガンジ】に使える時間が増えるならそれに越したことはないからな!
「……先に忠告はしたからね。
後から怒るのは無しだよ。
いくよ。
スキル発動、【翡翠発破】。
さらにスキル発動、【紅石発破】」
【石動故智】がスキルを発動させながらピッケルを地面に叩きつけると、そこから爆発が発生し俺たちを一気に吹き飛ばしていった!
うおっっっ!!!
壁にぶつかりながら上がってるから身体が削れるぅぅぅっっっ!?!?!?
若干ではあるが、ダメージを負いながら吹き飛ばされている俺と【石動故智】の姿は端から見たらコメディのような姿だろうな!
まぁ、当人としては最悪な気分なんだが……
「だから、言ったでしょ。
速さだけを追求した移動方法なんだよ。
それ以外は全て捨ててるから当然快適さなんてないよ」
くっ、俺が軽率だったか……
だが圧倒的時間の短縮は出来たからそこに文句は言えないよなぁ……
「だから先に言ったんだよ。
……あらかじめ念を押しておいて良かったよ、後から怒られたら理不尽だったからね」
【石動故智】はこうなるのを予見していたようだ。
……まぁ、過去に味方と使って似たような状況になったことがあるんだろうなぁ。
特に【石動故智】はアバター自体の防御力が他のプレイヤーよりも高まっている節があるため、壁に身体が接触していてもダメージは受けにくいのだろう。
「あと、鉱人種族なのもあるね。
発破の後の現象だから採掘扱いになってるのもあって、被ダメージがさらに減るんだよ。
戦闘には活かしにくい能力だけど、普段は重宝しているよ」
なるほどな。
自分一人で使うには特に問題がない手法だったってわけか。
ただ、複数人で使うとその辺りの条件を満たしていないプレイヤーもどんどん混ざってきてしまうので使いにくくなるってわけだ。
発想は面白いが改善の余地ありって感じだな!
「改善したとしても普段使いするかどうかは話が別だけどね。
発破の音がうるさいっていう意見もあるから、人が多いところだとあまり使わないようにしているよ」
騒音問題まで秘めていたか……
そう考えると改善余地がかなり残されているんだな……
何はともあれ、とりあえず通常の坑内に戻ってこれたわけだから探索を再開しようじゃないか!
近くに敵がいる気配もないし、まだまだ離れたところに【石動ガンジ】はいるはずだ。
お前の知識が頼りだ!
可能な限り最短ルートで進むように頼むぞ!
「了解だよ」
そうして【石動故智】としばらく歩いていく。
時折、左右に別れるミチが作られていたりするが、そこは【石動故智】の知識でより深くまで続いている方向を査定してもらってそちらに進み続けている。
流石の知識量ということもあり、一度も行き止まりにはたどり着いていない。
間違いのルートに進んでいた場合、どのくらい時間のロスをさせられていたのか分からないがここまで奥に進んできて【石動ガンジ】にまだ会えていないということは、下手するとこの疑似迷路のような鉱山の仕組みだけを使って時間切れで勝つのを真面目に検討して組み上げたエリアなのかもしれないな!
そう考えると、【石動故智】が今回味方で良かったな……
本当に俺だけだとエリアの仕組みだけに負けてたかもしれない……
「そう言ってもらえるとコッチも頑張りやすいよ。
中々次元戦争だと活かすことが少なかった知識だから、こうやってフル活用出来て嬉しいね。
コッチの力が必要とされている感覚って気持ちいいからね」
自己承認欲求の高まりってやつだな!
誰でもそういう欲求はあるが、【石動故智】はそういうのが希薄な方のプレイヤーだと思っていたぞ!
「コッチもそういう欲求が強いわけじゃないよ。
だからこそ、こういう時に嬉しくなるのかもね」
なるほどなぁ……
【強欲】だったり、【強欲】じゃなかったりする……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




