2213話 節制の美徳4
【亞樹ツバタ】の強弱を制御してくるブレスに押し負けている最中の俺と【石動故智】。
そして、とうとう【石動故智】のスキル【蛇目宝玉】の防御が割られてしまい、攻撃が直撃してしまった!
……くっ、ここまで最低限の被弾だけで済ませていたのにそれが一気に持っていかれたな!?
俺と【石動故智】の連携攻撃もいい感じにいなされてしまったので、かなり辛いところだ!
「あの精密さ相手に守りだけしてたらコッチたちが先に削り取られそうだね。
こうなったら一人が最低限守っている間にもう一人が攻めないと負けちゃうよ」
……それは俺も考えていたところだ。
やっぱりこの戦況を変えるためには無理をしてでも攻めに回らないといけないだろうし、そのためにはどちらかがある程度の犠牲を払わないといけないだろうな。
そして、ここにいる二人だとほぼ役割が決まってしまっているようなもので……
「やっぱりコッチが守り、【包丁戦士】が攻めだよね。
それ以外は勝てるイメージが湧かないよ」
だよなぁ。
【石動故智】が攻めに回るのは……【強欲】の大罪の権能が貸与されている今ならワンチャンはあるが、あれは攻撃を受ければ受けるほど効果を発揮するものだからな……
あとで役割を交代するにしてもはじめは防御役に徹してもらわないと効力を発揮してくれないからな!
「丸聞こえの~相談だね~
吾に伝わって~いいのかな~」
そりゃ良くないが……お前のブレスが煩すぎてこっちも声を張らないと【石動故智】にも聞こえないし、【石動故智】からも俺に聞こえないんだよ!
変なところまで妨害してきやがって……!
「コッチが一瞬だけミチを切り拓くよ。
本当は攻撃スキルなんだけど今は防御スキルとして使わせてもらうからね。
大罪スキル発動、【強欲乱打】。
さらに大罪スキル発動、【強欲打破】」
【石動故智】はこのタイミングで、これまであまり見せてこなかった大罪スキルを2つも使用して状況の打開をしようと試みたようだ。
ブレスに向かってピッケルを振り下ろすと、空中なのにも関わらず発破し始めてブレスの勢いと相殺されていっている。
これが大罪スキル【強欲打破】の効果だ。
ただ、発破自体は一瞬なので押し戻せるのも一瞬だ。
その一瞬を過ぎてしまえばまたこちらまでブレスが伸びてきてしまうというのは自明の理。
もちろん、防御側の【石動故智】はそれを予見していたようでその発破を連続できるようにもう1つの大罪スキルである【強欲乱打】を放っていたのだ!
これは……多分ピッケルを何回も振り下ろすためのスキルだな!
効果はよく分からないが、【強欲打破】の効果を何度も発動させていて発破が何回も起きるようになっているからそういうことなのだろうよ。
俺も味方だが他のMVPプレイヤーと比べると【石動故智】とは絡みが薄めだから基本戦術から外れた動きをされると、どのスキルがどんな効果を持っていてどんな挙動をするのか分からなくなるんだよなぁ……
これが次元分けのデメリットかもしれないが、きっと【山伏権現】が『面白い』と思って俺たちに試練を課しているに違いない!(決めつけ)
「それが~大罪の力なんだね~
前は見れなかったから~強烈に見えるよ~」
「それはコッチのセリフだよ。
木の龍の姿を隠しながら戦っていたなんて驚いたよ」
お互いに手の内を隠しながら前回まで戦っていたってことだもんな。
まぁ、俺も大罪の抱え落ちとかは何回もやったことあるし、他のスキルや変身形態だって毎回全部使っているわけじゃないから似たようなものか?
「【包丁戦士】が手札を変な方向に何本も伸ばし過ぎてるだけだと思うよ。
【包丁戦士】以外にそんなプレイヤー見たことないよね」
「へぇ~そうなんだ~」
ブレスとピッケルの応酬がある中でそんな呑気なやり取りをするな!
実際は激しい戦闘が繰り広げられているんだからな!?
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




