2211話 節制の美徳2
美徳進化によって【樹木科ロングトレント】から【樹木科節制精密龍脈樹】という種族へ進化した【亞樹ツバタ】。
その見た目は異様な形へ変化しており、身体に現れていた。
「まるで、ドラゴンみたいだね。
大きめな木の龍かな」
【石動故智】がそう表現したように【亞樹ツバタ】の見た目はドラゴンのようになってしまったのだ!
しかもよく見るような見た目ではなく、幹が胴体枝が翼の骨部分や手足、翼が葉っぱ、根っ子が尻尾というように樹木であるという主張・特徴もそのまま残したような見た目なのだ!
木・龍属性……みたいな感じだろうか……?
はっ、いかんいかん!
こういう見た目のドラゴンは中々お目にかかれないので警戒よりも先に興味の方が勝って少し魅入られてしまった。
これじゃ【検証班長】のことを言えないな!?
「これが~吾の本気の姿だよ~
これまで通りに~戦えると思うのは誤り~」
そりゃそうだろうな。
地面に根を張っていたこれまでと違って、動き回ったり空を飛べるんだろうからな!
これまで戦ってきていた【亞樹ツバタ】とは丸々別のアバターと思った方がいい。
「ちなみに~時間稼ぎなんだけど~
美徳進化で~姿が変わるのと~大きくなるだけの違いがあるのって~
何でか知ってる~?」
時間稼ぎって自ら公言するのは新しいな!?
……だが、興味はかなりあるなっ!?
土遁科の【極楽ジゴク】もお前と同じようにアバターのタイプがガラリと変わってきていたが、他のセクションリーダーは美徳進化しても変化がほとんど大きくなるだけだったからな。
その違いについては正直かなり気になっていた。
……【石動故智】、申し訳ないが少しだけ聞いていってもいいか?
「それが【包丁戦士】の選択ならコッチは一緒に聞こうかな。
時間は稼がれちゃうけど、不利益になる情報じゃないからね」
……ということで教えてもらえるだろうか?
「吾としても~聞いてくれるなら好都合~
美徳進化は~進化の指向性もスキルツリーみたいに選んで伸ばせるよ~
アバターの持つ属性の力を強化しても~姿を変えて別の動きにしてもいいよ~
使わなかったリソースは~大きくなるのに使うのが主流~」
なるほど、底下箱庭側の大罪の力の貸与と違って天昇箱庭側の美徳進化は随分と融通が利くようだな。
まさか自ら設定して決められるとはなんと親切設計!
【山伏権現】にも見習ってもらいたいものだな……
「だから元々動きにくくて~待ちを主力にしてるプレイヤーは動きやすいアバターになれるように美徳進化を伸ばしてるよ~」
【極楽ジゴク】は元々アリジゴクで地面に埋まっていたし、【亞樹ツバタ】も地面に根を張っていたからな。
能動的に動けるようにアバターをスイッチする場面が多くあるからこそ、移動機動性を求めていくのだろう。
一方で元々動ける連中が動けない、動きにくいアバター方面へわざわざリソースを割くのはないだろうな。
わざわざ不自由になりにいくってことだし。
だからこそ、リソースが余りやすくて結果的に余ったリソースをアバターの巨大化方面に回しているから二極化するわけだ。
基本的に大きくなれば質量も増えるし、その分威力も増えるってことだから拘りが無ければそうしていくのがトレンドになるのは理にかなっているな!
これから戦う相手とかにこの情報を活かすことが出来るかもしれないし、聞いてみて無駄になったわけではない情報だったな!
……【亞樹ツバタ】の思惑に乗ったという点だけは癪だが。
あと、ついでにだが【亞樹ツバタ】の美徳の【節制】は俺に烙印されている大罪である【暴食】と対になるものだ。
いつかは出会うと思っていたがとうとう出会ってしまったな!
……ただ、対になる存在が出会ったら何か起こるんじゃないかと睨んでいたんだが特に変わり無くいつも通りの大罪アナウンスと美徳テキストが流れただけで終わったのは些か拍子抜けしたところもある。
てっきりさらに過剰反応を起こしたり、逆に対消滅したり……みたいなのが起こるんじゃないかと俺が勝手に妄想していたからな!
「【包丁戦士】もそういう妄想をしたりするんだね。
厨二病って言うんだっけ」
おいおいおい!
それを言われると泣けてくるんだが!?
こういうゲームやってたらどんな年齢だって展開とかギミックの妄想はしたりするだろ!?
「コッチは特にしないかな。
鉱石のことしか考えたりしないし」
「吾は~分かる~
考えるの~楽しいよ~」
味方に裏切られて、敵に賛同されたという何とも言えない状況になってしまったな……
これは俺が底下箱庭側を裏切ればいいのか???
「大歓迎~いつでもいいよ~」
「止めてよね。
【包丁戦士】なら本当にやりそうだから、冗談に聞こえないよ」
なんだかなぁ……
~味方に裏切られたプレイヤーキラー、寝返って快適ライフを送る~……ってか?
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




