2209話 地下決戦場
「見えたよ、あれが【亞樹ツバタ】の本体だね」
ようやく本体の御披露目ってわけだ!
そこには【石動故智】が言っていたようなトレント型のモンスターが根を張っている姿があった。
だが、気になるのは幹の至るところに太い線のようなものが走っており、それが脈動しているってことだ。
静脈や動脈に近いんだろうがそれよりも力強い感じがするな……
「ここが~こんなに簡単にバレるなんて予想外~
吾の~君たちに対する認識の誤りを直さないと~
普通は~最後までバレないことの方が多いのに~」
【亞樹ツバタ】の言うように、まぁ、普通ならこの場所まで辿り着くまで相当時間をかけて調べないといけないんだろうしな。
「だけど~ここに来てくれたから根っ子以外での攻撃も出来るようになったよ~
【樹木ー万葉の解】~」
攻め込まれた【亞樹ツバタ】だったが、これを逆に好機と捉えて新たな【生樹技能】である【樹木ー万葉の解】を使用してきた。
すると、【亞樹ツバタ】の上方に生えていた葉が攻撃へと変換されて俺たちの方へと飛んできたのだ!
謂わば葉っぱカッターだな!?
これだけの数全部を包丁で切り落とすのは流石に無理だ。
さっきの根っ子による攻撃とは違って手数が段違いだからな!?
というわけで手数を用意するか……
スキル発動!【天元顕現権限】!
さらにスキル発動!【花上楼閣】!
俺は天子の黄金色の左翼を生やして聖獣スキルの力を引き出せるようにした後、【花上楼閣】による花弁の弾丸をどんどんと飛ばしていくことで相殺を試みようとしたわけだ。
だが……
「手数は追いつかれたけど~出力が足りてないよ~
その選択は~誤り~」
そう、【亞樹ツバタ】の言うように手数が届いてもその全てで押されているので時間稼ぎにしかならなかったのだ!
やっぱりアバター自体のスペックの差がかなり響いてくるな……
同じような行動をしたらだいたい押し負けるのってかなり堪えるし……
「それならコッチが前に立つよ。
スキル発動、【隆起岩壁】」
【石動故智】は地面にピッケルを叩きつけると、そこから岩壁が盛り上がってきて葉っぱカッターたちを押し止めていた。
俺が事前に【花上楼閣】で勢いを減退させていたこともあってか、わりと余裕をもって守りに入れていたのもデカイな!
逆に言ってしまえば、MVPプレイヤー二人がかりで止めてこんな感じなので【亞樹ツバタ】の狙いは悪くなかったということだ。
俺一人でここにいたら片腕は少なくとも今の攻撃で消えていたな……
「壁で~防がれたよ~
でも~それなら吾にとっては好都合~」
【亞樹ツバタ】は攻撃が防がれたにも関わらず余裕そうな口ぶりをしているが、そりゃそうだろうな。
【亞樹ツバタ】にしてみれば俺たちの撃破は望ましいが、必ずしないといけないわけじゃない。
むしろ下手にリスクを負うくらいならこのまま持久戦を仕掛けて時間切れを狙うのが好都合とすら思っているんだろう。
時間切れになったら天昇箱庭側の勝利だからな。
「だったらコッチたちがリスクを負って【亞樹ツバタ】を倒しにいかないといけないよね。
……コッチがミチを切り拓くから【包丁戦士】は【亞樹ツバタ】に接近戦をするようにして欲しいよ」
【石動故智】が俺の進むミチを作ってくれるなら大助かりだ。
最前線でダメージを与えに行ってやろう!
「それなら、任せたよ。
スキル発動、【紅石鉱山】」
【石動故智】は地面にピッケルを打ちつけていくと、そこからルビーが前方に向かって生えてきて突き進んでいく。
……なるほど、【石動故智】の鉱人種族スキルの十八番といえばこれだったな!
俺はこのルビーの山の脇を進んでいき、一歩、また一歩と【亞樹ツバタ】との距離を詰めていっている。
当然接近を許したくない【亞樹ツバタ】は葉っぱカッターで俺を狙ってきているが、後方からピッケルを打ちつけている【石動故智】から放たれるルビーの山がその進路を妨害してくれているのでほぼ無傷で進み続けられているわけだ。
「来ないで~欲しいよ~
吾に攻撃するのは~誤り~」
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




