2208話 あなぽり
「ありがとう【包丁戦士】、了解だよ。
これで一気にイかせてもらうね。
スキル発動、【マイン】」
そう言うと、【石動故智】はチュートリアル武器のピッケルを思いっきり地面に叩きつけていった!
するとどうだろうか、地面に大きな穴があいていったのだ!
まだ【亞樹ツバタ】のいる地中まではこの一撃だけではたどり着けなかったが、【石動故智】という地形破壊が可能なプレイヤーが味方にいる以上は時間の問題だろうな!
いや~、本当に【石動故智】が味方にいて助かったな……
他に出来そうなプレイヤーっていえば【師匠】か【ランゼルート】くらいだろうが、その二人と組むことは包丁次元の順位からして釣り合いを考えた時に可能性が低いだろうし、実質【石動故智】しかほぼ実現しないってことだからな!
基本的に1位が包丁次元、2位が聖剣次元、3位が釣竿次元……みたいな順位付けが続いてきていたわけだし、それぞれのトップ同士で組ませると残りの次元同士のパワーバランスが崩れるっていうのは理解しているが【ランゼルート】とか【師匠】とかと組んで楽した過ぎるんだよなぁ……
こう考えると、俺と組むのって正直外れじゃん……
「大穴が~あいたよ~!?
その行動は~誤り~
止めて~ほしいよ~」
「止めないよ。
それどころかどんどんイクからね。
スキル発動、【マイン】
さらにスキル発動、【金剛玉体】」
【亞樹ツバタ】は必死に【石動故智】の行動を妨害するために【樹木ー乱舞の解】で強化した根っ子で薙ぎ倒そうとしているのだが、今度は俺がフリーになっているからな!
【石動故智】だけ守ればいいって考えるならスキルよりも……パリィだっ!
俺は十八番である包丁の腹を使った受け流しを連続して行っていき、【石動故智】に迫り来る脅威を払っていく。
……まぁ、俺の包丁だけだと向こう側の手数に負けているから全部防げるわけじゃないんだが漏れたものは【石動故智】自慢の耐久力で耐えているようだ。
さっき【金剛玉体】という初見のスキルも使っていたので何かしらの防御力アップをしているんだと俺は思っている。
流石にスキルの補助なしで【亞樹ツバタ】の【生樹技能】をこの程度のダメージで耐えているとは思えないしな!
おっと、危ない!
俺は届かない範囲に伸ばされてきた根っ子に向かって包丁に内蔵されたミューンの鞭を使って対処していく。
あまり出番は無いんだが、こういう時の選択肢として内蔵してあるのはやっぱり便利だよなぁ……(しみじみ)
ロープみたいな役割も出来るし、瞬間的にリーチを伸ばせるのがありがたい。
スキルという選択肢をあえて切らずに戦えるということは、その分後に手札を残せるってことだから助かるな!
本当に【槌鍛冶士】様々だ!
「さらにもう一回。
スキル発動、【マイン】」
【石動故智】は制止を呼びかける【亞樹ツバタ】を無視してさらに地面を掘り進めていく。
この遠慮なさは流石MVPプレイヤーって感じだ。
そこでビビって手を止めていたら二流もいいところだし。
「こうなったら~攻撃を変えるよ~
【樹木ー鋭根の解】~」
手を止めない【石動故智】に痺れを切らしたのか、【亞樹ツバタ】は新たな【生樹技能】で攻め手を変えることにしたようだ。
さっきまで鞭のようにしなっていた根っ子たちだが、その柔軟さを失い、代わりに剣のような鋭さを得て俺たちに襲いかかってきたのだ!
鞭のようになっていた時は叩きつけられるだけで良かったのだが、ここまで鋭くなられると身体を貫通させられてしまうだろう。
それは流石にまずい。
だが、ラッキーなことに鋭さを得た代わりに軌道が直線的になったのでどこに攻撃が来るのか読みやすくなったのと、重さを増したことでスピードが落ちたこともあって回避する容易さは増したと思うぞ!
その辺の配分は攻撃する側も悩みがちなポイントだから相手や戦況によって変える必要もあるのは分かるけど……今回は悪手だったかもな?
その証拠に、さっきまでよりも俺が包丁で受け流し出来る数が倍くらいまで増えてきた。
元々、直線的な攻撃を捌くのが得意な感じだったし、俺としては妥当な結果ではあるんだが攻撃する側である【亞樹ツバタ】としてはそんなこと知ったこっちゃないしな。
「【包丁戦士】、あと少し一人で防御しててね。
コッチがミチを拓くよ。
スキル発動、【マイン】」
そう言って【石動故智】は再びカタカナスキルの【マイン】の力を宿らせたピッケルで地面に叩きつけていく!
すると……
「見えたよ、あれが【亞樹ツバタ】の本体だね」
ようやく本体の御披露目ってわけだ!
防戦ばかりでしたが時間制限は大丈夫ですか?
急いでくださいね。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




