2207話 信頼の防御力と……敵の位置を教えろ!
「根っ子はコッチが引き受けるから【包丁戦士】は本体を見つけてほしいよ。
コッチよりは絶対得意でしょ」
【石動故智】は俺にそう提案してきたが……まぁ、俺以外のプレイヤーがいたとしても俺以上の適任者は中々いないだろうな。
いたとしても蛇腹剣次元の【インフォ】、ステッキ次元の【エラ=サンドレラ】、【シャルル=ホルムズ】くらいしか心当たりがない。
あいつらは索敵に適した五感?いや第六感?をそれぞれ保有しているからな。
嗅覚視覚複合?の【シャルル=ホルムズ】、嗅覚の【エラ=サンドレラ】、第六感の【インフォ】、そして触覚の俺だな!
俺の気配察知が触覚なのかは議論の余地があると思うが、俺自身は触覚の延長だと思っているぞ!
そしてあいつらはこの場にいないから俺がやるしかない!
「作戦会議してるところ悪いけど~思った通りに行くと思うのは誤り~
二人とも~ここで倒すよ~
【樹木ー乱舞の解】~」
【亞樹ツバタ】がこのタイミングで仕掛けてきたのは【生樹技能】の【樹木ー乱舞の解】というものだった。
それを使われた瞬間、これまで直線的に俺たちを狙ってきていた根っ子がまるで鞭のようにしなりはじめ、縦横無尽に乱れ打ちしてきたのだ!
これ全てに対応するのは中々困難だぞ!?
「こういうのはコッチに任せてよ。
スキル発動!【蒼石円陣】」
【亞樹ツバタ】の【生樹技能】に対抗すべく【石動故智】が使用したスキルは【蒼石円陣】。
聞き覚えの無いスキルだが、この状況をどう変えてくれるのか身構えていると……
「蒼色鉱石の~ドームだね~
どの角度から狙っても~守られちゃうよ~」
「コッチの守りを簡単に崩せると思わない方がいいよ。
防御力は底下箱庭でもトップクラスっていう自身があるからね」
【石動故智】がそう豪語するのを証明するかのように、【亞樹ツバタ】の根っ子があらゆる角度から襲ってきているのにこちらのドーム状に展開された蒼色鉱石のバリアは一切崩れていなかった。
底下箱庭よりも天昇箱庭側のプレイヤーの方がスペックが高いイコール攻撃力が自然と高いはずなのに、それでも防げているのは流石と言うしかないだろう。
流石は自分でタンクプレイヤーと言い張るだけはあるな!
ここまで防御力が高い味方がいると安心して背中を任せられるというものだな!
だが、これでは足で【亞樹ツバタ】の姿を見つけに行くっていうのは出来ないな……
「それはどうにかならないの。
【包丁戦士】なら何とかしてくれると思っているんだけど」
……【石動故智】にそこまで信頼されるようなことって俺やったか?
もしかしたらこれまでの次元戦争の中で敵対してきたことで厄介さから逆算しているところもあるかもしれないが……
だが、そこまで言われたら奥の手を使うしかないか。
そうして俺は目を閉じて気配を辿ることに集中していく。
戦場で、しかも敵が目の前にいて攻撃してきているのに目を閉じて棒立ちになっているなんて本来あり得ない迂闊さだが、【石動故智】の防御の固さを信じて気配を辿ることだけに全てを注いでいるわけだ。
まずは近くにある根っ子。
この根っ子は【亞樹ツバタ】の本体と繋がっているということもあって、これからも気配がする。
だから集中していない時は、本体を探るときに先に根っ子に気配が引っ張られてしまうのでノイズになってしまう。
だが、集中している今は違う。
繋がっているからこそその気配全体を捉えるための謂わば楔になってくれるわけだ!
根っ子から逆探知する形で本体が何処にいるのかを肌で感じ取っていく……
根っ子は地面に戻り、そこから脈動する気配を辿っていくと……っ!
見つけたっ!
こいつは地中に潜んでいるぞ!?
しかもご丁寧に出入り口も無さそうだ。
完全に【亞樹ツバタ】が潜みながら根っ子の遠隔攻撃だけで俺たちを倒すか、時間切れさせるための戦い方をするつもりのエリア構築だな!
流石に俺たちに対して悪辣すぎて苦笑してしまったぞ……
こんな場所にいるやつを倒しに行くのって普通に考えたら無理じゃないか!?
この【亞樹ツバタ】がリーダーの役割になっているかどうかは知らないが、こいつを倒さないと勝てないんだったら俺の力だけだと無理ゲーって感じだな。
俺だけならな!
おい、【石動故智】!
【亞樹ツバタ】の本体はこの真下……地中にいるぞ!
お前の力を見せてやれ!
「ありがとう【包丁戦士】、了解だよ。
これで一気にイかせてもらうね。
スキル発動、【マイン】」
そう言うと、【石動故智】はチュートリアル武器のピッケルを思いっきり地面に叩きつけていった!
もはや人外じみてますね。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】