220話 料理評定
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
コラテラルダメージメンバーや、ポリンお嬢様とあれからも色々と食材探しをした結果、なんとかそれっぽいものを集めることができた。
……と、なれば俺がすべきことはただひとつ!
ミューン!
お前に俺の努力の結晶を食べさせてやるぞ!
ここ数日、ログイン時間を全て食材集めに使って、なんとか揃えた食材を使って作った料理だ!
俺はカートを押してミューンの前に食事を運び込んだ。
「……味道很好闻。
いいにおい……」
無表情チャイナ娘のミューンだが、目の奥は少し輝いているように見える。
出来立ての料理の香りを嗅いで期待しているのだろう。
というわけで、まずはじめはこれだ!
「……汤?
これ、すーぷ……」
そう、セリ、ふきのとう、菜の花、わらびなどオーソドックスな山菜を混ぜ込んだ山菜スープだ。
だが、普通の山菜スープと思ってもらっては困るぞ?
まあ、飲んでみればわかるが。
そう言って、ミューンに飲むのを促す。
おずおずと、スープを口に運ぶミューン。
だが、透明な液体が舌に触れた瞬間表情が変わった。
「……おもしろい!
はじめ、しょっぱい、さんさいとあう」
塩気と山菜の苦味が調和され、程よい刺激が舌に伝わるのだ。
この独特な刺激がクセになってくるってわけだ。
ミューンは一口、また一口とスープを口に運んでいる。
「……あと、あとであまくなる。
おなかが、みたされる。
……これ、なに?」
ふふふ、俺がこのスープに使ったレア度が高そうな素材がこの不可思議な味を実現させた。
そう水晶水だ!
水の良さを最大限に活かして行くならスープだよな!
俺はそう思う。
「……つぎは?」
こいつ……
俺が苦労して集めてきた食材だぞ?
もっと味わってくれてもいいのでは?
まあ、いいや。
次はこれだ。
ケムリダケの煙を活用した燻製アラカルトだ!
本来チップとかを使うんだが、今回はケムリダケの煙を逃がさないようにして燻していくことによって燻製に活用することに成功した。
チーズやベーコン、ソーセージにゆで卵!
あと、山菜をテキトーに選択してみた。
「……香味儿。
こうばしい、けむり……」
ケムリダケの薫りをこれでもかというくらい吸い込んだ燻製アラカルトたちは、匂いだけでも食欲をそそってくる。
だが、こいつらがいいのは匂いだけじゃないぞ?
そういって俺は食べるのを促す。
「……からだがあったまる。
しあわせなきもち……」
ケムリダケを燻すと、元々あった乾燥作用が体温を高める効果に変化したのだ。
なので、食べると不思議な高揚感に包まれるってわけだ。
「……おいしかった」
満足してもらえたのには嬉しいが、お前のために用意した特別なデザートがある。
最後にこいつを食べてもらおうか!
「……ぶどうのけーき?」
そう、俺と俺のクランメンバーたちで岩山エリアで採ってきたブドウだ。
これを採るために岩雪崩に巻き込まれたりして大変な目にあったが、なんとか手にいれることができた究極の逸品だ。
なんかどこかで見たことあるような気もするが、岩山エリアで見つけた黒光りするブドウはいかにもレアそうな食材だったので、ブドウケーキにしてみたぞ!
食後のデザートとして味わってくれ!
「……!!!!
ごうかく……!!!
!!!」
やったぜ!
やはり、この黒光りするブドウはレア度が高かったようだ。
だが、なんかミューンのテンションが高くないか?
旨いものを食べたからってあそこまでテンションが上がるのは見たことないが……
それにあのブドウ、やはり前に見たことが……
……。
「……ふらふら、して、きた!!!
たたかいたい……!!!!
からだが、たたかい、もとめてる!!!」
おいおいおい、物騒なこと言い始めたぞ!?
なんかミューンは身体をゆらゆらさせながら、戦闘本能を剥き出しにして臨戦態勢をとっている。
心なしか顔が赤い気がする。
流石は戦闘狂と呼ばれているだけあるな……
というか、ふらふらしてるのって酔っぱらってるってことだよな。
酩酊……ブドウ……レアモノ……
あっ!?
俺のなかで全ての糸が繋がった瞬間だった。
このブドウ、どこかで見たことあると思ったら96話で俺が闘技場イベント優勝のお祝いとして野菜屋のおっちゃんからもらったブドウと同じやつじゃん!
100話以上前だから、半分忘れかけてた……
おっちゃんから受けた説明だと、その粒1つ齧るだけでワインを飲んだかのような酩酊状態になるというっていうものだったはずだ。
俺はそれを一房丸々ケーキに使い込んでしまった。
ということは……
「う~、ひっく!
……うぃ~!!!」
なんか完全にミューンは出来上がってるな……
目は潤んでいて、とろんとした表情になっているので、見る人が見れば完全に恋に落ちてしまいそうな色っぽい雰囲気だ。
……手に鉤爪をつけて臨戦態勢をとっていなかったらな。
そして、鉤爪に紫色のオーラが集まり始めている。
やっべっ!
はやく退散しないと……
そう思って走り出したが、ゆらゆらした動きのまま高速で移動してきたミューンに行く手を阻まれてしまった。
こいつ……酔っていても本能だけで動けるのかよ。
流石は戦闘狂だ……
「……にがさない」
ヤンデレかな?
そう思った次の瞬間、チャイナ娘の顔のカットインが画面に流れた。
「……【兎月伝心】!
ひっく!うぃ!」
チャイナ娘が手に装着していた爪から紫色の光の円環を発していた。
俺は一瞬で千切りになって死に絶えた。
千切りになる直前に目にしたのは、天井に向けて掲げられた鉤爪が煌めき、そこから粒子が凝縮されたような紫色の円環が放たれ、俺を取り囲んだところまでだった。
……なんで、こうなった!?
俺は料理してただけだぞ!?
唐突に死んだり死ななかったりする……
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